クラシック音楽旅 in 日本 2012 - 2017

音楽好きのスズキが旅したのはヨーロッパだけではない。

 

最初の旅は失業中だった2012年夏。時間はあるがカネは無い状況だったのでJRの「青春18切符」(JRの普通列車が1日乗り放題になる5回分のチケット)で旅を計画した。行き先は草津温泉の音楽祭、そして長野のサイトウ・キネン松本。

 

その前に、同切符を利用して東京から日帰りで静岡の浜松に行き、鰻を食べるついでに楽器博物館に行くという企画も実行した。

 

海外旅を自粛した2014年も「青春18切符」を買った。行き先は長野の木曽音楽祭、それから草津温泉の音楽祭も再訪。

 

2016年4月にはラ・フォル・ジュルネ新潟に行った。憧れのピアニストが出る公演が東京より新潟の方が多かったので、急遽旅を計画。この年は、夏に木曽音楽祭も一夜だけ鑑賞。

 

2017年7月にはJALの「どこかにマイル」(少ないマイルで往復航空券ゲット、ただし行き先は選べない)で、東京・鹿児島の往復チケットを入手したので霧島国際音楽祭へ。

 

それぞれ簡単に旅を振り返る。

 

クラシック音楽ファンにオススメの日本音楽旅

 

浜松市楽器博物館

2012年8月

 

 

言っておくが、東京駅から鈍行列車で浜松駅を目指すと片道4時間半、往復9時間超もかかる。さすがに、これだけ長時間電車に乗り続けるのは辛い。東海道線エリアはそれなりに人が住んでいるので車内で常に座れるとは限らない。それを覚悟で行くしかない。

 

この楽器博物館は見応えある。この少し前にパリの楽器博物館にも行ったのだが、パリに続く連続の訪問となっても少しも飽きない。国産の古いピアノやアジアの楽器も揃っている。珍しいピアノを使用したミニコンサートもあり、充実の見学だった。

 

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ちなみにケチくさい話だが、どれだけ得したか計算してみよう。

青春18切符1回分(1日乗り放題)は当時2,300円(2018年現在は2,370円)

 

新幹線で東京と浜松を往復の場合:

15,120円

 

普通乗車券で東京と浜松を往復の場合:

8,620円

 

ご覧の通りかなりお得だが、もう一度言う。

往復9時間も電車の中だから覚悟して行くしかない。

 

 

草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァル

2012年8月

2014年8月

 

草津温泉(群馬県)は東京からアクセスしやすい立地なのだが、わたしは音楽祭がきっかけで初訪問。青春18切符で行くなら長野原草津口駅で下車してバスに乗る。草津温泉は東京より少し涼しいのが嬉しい。珍しい曲を含むプログラムに東京のクラオタが食い付く。

 

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印象に残っているのは2012年に聴いたフルート奏者ヴォルフガング・シュルツ。ドビュッシー生誕150年だったので無伴奏フルート曲「シランクス」も演奏された。客席のアカデミー生徒たちも元気いっぱいシュルツ先生に手を振っていた。半年後にシュルツ氏が突然67歳で亡くなるなんてショックだった。

 

それから2014年のドヴォルザーク弦楽五重奏曲第3番。演奏者がノリノリで楽しすぎる。パノハ弦楽四重奏団とヴィオラ奏者オクセンホファーの5人組。若々しい笑顔で、どっぷり自分たちの音楽に酔いしれる超カッコイイおじいさん集団だった。

 

 

サイトウ・キネン・フェスティバル松本(現セイジ・オザワ松本フェスティバル)

2012年8月

 

 

 

小澤征爾指揮ではなかった。この年は山田和樹が指揮するオネゲル作曲の劇的オラトリオ「火刑台上のジャンヌ・ダルク」が演奏された。この作品に、さっそく夢中になってしまった。

 

リブレット(台本)作家は外交官として戦前の日本や中国にも滞在したフランスの詩人、ポール・クローデル。

ポールの姉は彫刻家のカミーユ・クローデル。カミーユは作曲家ドビュッシーの友人でもある。同年、東京のブリヂストン美術館のドビュッシー展で、ドビュッシーが所有していたカミーユ・クローデル作の彫刻「ワルツ」を観た。よろこびと絶望を同時に感じるような彫刻で、いまも忘れられない。

カミーユは彫刻家オーギュスト・ロダンの愛人だったが、結局、彼に捨てられて精神を病んでしまった。彼女の彫刻「ワルツ」の美しさ、弟ポール・クローデルの人生と文学作品、クローデル姉弟に想いを馳せる。なんともやるせない気持ちになってしまう。もしかして「ジャンヌ」は姉カミーユなのだろうか。

 

予習ではジャンヌ・ダルクのセリフ(フランス語)を声に出して真似てみた。フランス語学習の成果だ。みんなに責められて処刑される、かわいそうなジャンヌ。皮肉風のイジメ(ブタさん、ロバさん、ヒツジさん、王様のカードゲームとか)。マルグリットとカトリーヌによる天の声は妖艶でなんだか妖しげ。オンドマルトノという近代以降のクラシック音楽で使われる電子楽器の響きは少女の叫び声にも聴こえて不気味。「火刑台上のジャンヌ・ダルク」はとても刺激的な作品だと思う。

 

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写真左下のワイン蔵ですか?

ええ、長野県の音楽祭の帰りは青春18切符で電車に乗って、山梨の勝沼ぶどう郷駅で降りて「ぶどうの丘」に立ち寄るのがわたしの定番。そこで山梨ワインを試飲する。 

 

木曽音楽祭

2014年8月

2016年8月

 

「木曾路はすべて山の中である・・・」

 

初訪問の前に島崎藤村の小説「夜明け前」を読破した。江戸と京を結ぶルートは主に2つ。海岸に近いところを旅する東海道、そして山の中を通る中山道(なかせんどう)。険しい山道、中山道を選んだ旅人は、事情により目立たないように旅したい人々。田舎でありながら、世の中の変化を敏感に感じながら生きてきた中山道の宿場町の住人たち。ほら、おもしろいでしょ!?

長野県の木曽エリアは中山道の宿場町があった地域。このエリアで毎年夏に室内楽の音楽祭が開催されている。

 

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オーケストラより室内楽が好き。少数の演奏者が個性を発揮しながらアンサンブルを盛り上げる。人数が少ない分、誰がどの音を出しているのかはっきり分かるし、曲の構造もオーケストラよりは理解しやすい。少しアタマは悪いのに曲を分析したいなんていうスズキのような人間に、室内楽は合っているのかもしれない。

 

わたしは夏が嫌い。暑い東京から逃れて涼しい地域で室内楽を楽しむというのは最高のリフレッシュ。しかも、長野の木曽であれば例の青春18切符でも行ける。

 

室内楽、涼しさ、それからもう1つ注目すべき点は、プログラムに珍しい曲が多く入っていること。鑑賞したコンサートの中から例を挙げると、シュポアの八重奏曲、Rシュトラウスの弦楽四重奏曲、ラインベルガーの九重奏曲、ニーノ・ロータの九重奏曲、ブルッフのピアノ五重奏曲など。演奏者は国内外で活躍中の実力派が揃っている。

 

もし、他所からお客さんを呼び込みたいなら、上手い演奏家による珍しいプログラムが良いと思う。そういう意味で木曽音楽祭は良い例だと思う。

 

この音楽祭が少し特別な点は他にもある。お客さん同士の交流が自然に発生する。関東や関西、名古屋方面など各地から単独で木曽入りする人も多い。常に必ず交流があるというわけではないが、国内の他のコンサートと比べると、そのようなチャンスが多いと感じる。クラシック音楽ファンで、室内楽が好きという共通点があると、初対面でも話が弾む。

 

ここは音楽以外でも魅力あるエリアだ。都会の日常を忘れて自然と歴史を感じる。これまでに御嶽山(おんたけさん)や馬籠宿、奈良井宿などを旅した。今度は開田高原のお馬さんに会いに行きたい。

 

一方、少し困ってしまう点もある。この地域の公共交通機関は本数が少なく、非常に不便である。拠点駅になる木曽福島駅を通る電車は1時間に1本程度はあるのだが、その1本が有料特急だったりするので、青春18切符を利用する場合、電車は2時間に1本だと想定したほうがよい。バスの本数も少なく、ルートによっては1日にほんの数本だったりする。スケジュールの組み方に頭を使う。

 

2018年現在、音楽祭にはまだ独立したウェブサイトがない。情報は木曽町の行政サイト内で見られるが、いかにも一昔前の旧式ホームページという雰囲気・・・ 音楽祭の詳細を調べてみようと思って木曽町のウェブサイトを訪問した人はガッカリするかもしれないが、本当は前述の通り楽しめるなかなか良い音楽祭であるということを伝えたい。

 

木曽音楽祭 2018年の記事

www.music-szk.com

 

 

ラ・フォル・ジュルネ新潟

2016年4月

 

ラ・フォル・ジュルネという音楽祭については別途記事を書くが、手短に説明すると、フランス発の音楽祭で2005年に日本上陸。毎年ゴールデンウィークの頃に国内各地で開催されていたが、2018年現在は東京のみで開催されている。

 

2016年のプログラムが発表されて驚いた。わたしの憧れのフランスのピアニストが久し振りに音楽祭に参加する。しかも東京より新潟での演奏が多い。よし。新潟に行こう。

 

ここで、音楽だけでなく旅も好きなスズキが顔を出す。せっかく新潟まで行くのだから、おもしろい旅にしてしまえ。新潟でのコンサートのついでに訪れたのは佐渡島。高速船で新潟市から約1時間。路線バスで島を半周したが、ここも木曽と同様でバスの本数が少なく、公共の交通機関を使う一人旅の自由度は低い。

 

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ピアニスト、フランク・ブラレイが弾くグリーグのピアノ協奏曲を前から2列目で鑑賞したのは物凄く刺激的な体験だった。ブラレイはグリーグの曲のCDを録音していないので、どのような演奏になるかは未知数だった。

 

他にもホール施設内の能楽堂で聴いたカウンターテノール歌手、彌勒忠史によるルネサンス歌曲もおもしろかった。能楽堂+カウンターテノール(女声音域を歌う男性歌手)+ルネサンス音楽という組み合せは滅多にない!

 

夜に1人で入った居酒屋で地元食材の料理と地酒も堪能した。もう興奮状態で眠れやしない。

 

 

霧島国際音楽祭

2017年7月

 

http://www.kirishima-imf.jp/

 

JALのキャンペーンで、国内の往復航空券を、通常より少ない6,000マイルで入手できる「どこかにマイル」というのがある。何度も言うがスズキは暑い夏がキライ。目指すは涼しいところ。北海道がいい。候補地4つが画面に表示され、申し込むかどうか決める。女満別(北海道)、青森、三沢(青森)、鹿児島の4つの候補地が表示されたとき、「今だ!」と意気込んで申し込んだのだが、数日後に届いた「行き先」は予感通り「鹿児島」だった。やれやれ、涼しい夏休みよ、さらば。

 

何となく鹿児島になるかもしれないと思っていたので、最初から霧島音楽祭に注目し、目当てのコンサートがある日を選んで「どこかにマイル」を申し込んだのだった。わたしの好きなピアニストの1人であるグルジア出身のエリソ・ヴィルサラーゼが演奏することも知っていた。

 

涼しい夏休みを過ごしたかったのに、鹿児島市内は凄まじい暑さだった。地面から滲み出る熱風に耐えられない。ヴィルサラーゼの演奏は素晴らしかった。前半の終わり、プロコフィエフのピアノソナタ第2番でわたしの興奮は絶頂に。グラスワインをいただきたかったが、鹿児島市のホールにはジュースやお茶の自動販売機しかない。ああ、ガッカリ。でも良いコンサートだった。CDにサインももらった。 

 

www.music-szk.com

 

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翌日はバスで霧島のホールに行ったのだが、山の中だから涼しいかと思いきや、ホール付近は普通に暑い。県内在住の叔母夫婦を誘ってダン・タイ・ソンのソロと室内楽、それから多数の演奏者が出演して盛り上げるガラコンサートを楽しんだ。ヴェトナム出身の大ピアニスト、ダン・タイ・ソンのことは当然以前から知っていたが、演奏を聴くのは初めて。ソロのプロコフィエフ「束の間の幻影」も絶妙で素晴らしいし、室内楽での演奏もまた良かった。ガラコンサートは最後に登場したソプラノ歌手のアンドレア・ロストが圧巻。小ホールなのにヨーロッパの名オペラハウスでの演奏のような歌いっぷり。

 

それにしても、キビナゴは旨いね(笑)

 

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そして2018年5月・・・

 

スズキは、びわ湖ホールにいた。

 

10年間、毎年ゴールデンウィークに通った東京のラ・フォル・ジュルネを蹴って、新しい音楽祭「近江の春 びわ湖クラシック音楽祭」へ。このストーリーは、またの機会に語ろう。

 

全国の皆さん、スズキはもしかしたらアナタの町にも現れるかもしれませんよ。

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