ピアニスト エリック・ル・サージュ わたしの「三大ピアニスト」の1人

Éric Le Sage 
1964年、南フランスのエクス=アン=プロヴァンスに生まれる 

 

旧ブログで書いたシューマンCDに関する記事には少々反響があった。ページへのアクセスも多く、ツイートしてくださった人もいた。

 

○○全集というCDを制作する演奏家は多いが、シューマンのピアノ曲をすべて録音する人はそう滅多にいないだろう。難易度も高そうだし、体力だけでなく気力というか精神力も要するだろう。それを、ル・サージュは飄々としながら熱心にやり遂げた。偉業を成し遂げたという驕りはまったく見られないが、きっと達成感はあるのだろう。

 

シューマン好きのピアノ弾きにとっても演奏や選曲の参考になると思う。一般によく知られたシューマンの名曲以外にも多くの曲に惹かれる。室内楽曲CDには連弾曲も含まれている。こちらもなかなかイイ感じ。いつか挑戦したい曲もある。

 

ピアノ弾きにとってシューマンと言えば、ピアノ独奏曲なのだろうけど、実は室内楽もとても魅力的。ピアノ三重奏曲、ピアノ四重奏曲、ピアノ五重奏曲。それから、チェロと一緒に演奏する5つの民謡風小曲集も好き。

 

シューマン ピアノソナタ第3番第3楽章クララ・ヴィークのテーマによる変奏曲アンダンティーノ
動画では、シューマンの未来の妻でピアニストのクララ・ヴィーク作曲の原曲に続いて、シューマン作曲クララ・ヴィークのテーマによる変奏曲を演奏している。

 

シューマン ピアノ四重奏曲

シューマン ピアノソロ曲全集

CDボックス (画像をクリック)

 

MP3ダウンロード(画像をクリック)

 

シューマン ダヴィッド同盟他 
CD ばら売り(画像をクリック)

 

MP3ダウンロード (画像をクリック)

 

シューマン ピアノ室内楽全曲

MP3ダウンロード(画像をクリック)

フランスのマイナーレーベルAlphaのCDジャケットは美しい。美術館で飾られている絵画が多く使われている。1つ1つ揃えたかったが、少々値段が高い。簡易デザインのお得なボックスセットが発売されたので、バラ売りで買ったのは結局2作のみ。上に載せたのは、最初に買ったダヴィッド同盟舞曲集を含むピアノソロ曲のCD(1枚)。

 

ダヴィッド同盟舞曲集は楽譜を買って1年半も弾き続けたほど、のめり込んだ。

ダヴィッド同盟舞曲集 楽譜(画像をクリック)

ところで、わたしのダヴィッド同盟舞曲集の楽譜は超スペシャルだ。

ちょうど弾き始めの頃にル・サージュのソロリサイタルがあったので、楽譜を持ち込んでサインをもらった。アンコールで弾いたダヴィッド同盟舞曲集の第2部5番にもサイン用の銀ペンで丸を付けてくれた。さらに、翌年にまたル・サージュのソロリサイタルがあったので、また楽譜にサインをもらった。

自分としては「学習開始」のサインと「学習終了」のサインをもらったと思っている。こうして世にも珍しい、同じ人のサインが2つも入っている上に、アンコールで弾いた曲に銀ペンの丸が付いている、世界で1つだけの楽譜ができた。(スズキはイジワルなのでサインは非公開。)

 

f:id:music-szk:20180805173716j:plain


ル・サージュは長身で写真の通り手も大きい。あの大きな手で細かい繊細な音を奏でる。それにしても、親指と人差し指の間をあれほど大きく広げられるものなのか。ピアニストは指が柔軟ということか。よし、スズキもどれぐらい動くか試してみよう。(この挑戦を旧ブログに載せていた。)

 

写真をご覧いただきたい。一見、ル・サージュさんのように大きく指を広げたようにも見えるが、わたしの場合は親指が手前に向かっている。ル・サージュの場合は、親指は真横に向かっている。それは、やはりわたしには無理だ。

 

ル・サージュといえば、フルートのエマニュエル・パユをはじめとする管楽器奏者の演奏仲間としてよく知られている。

「我が偏愛の・・・」で触れたブラームスCDはクラリネット奏者ポール・メイエと一緒に録音したCDだった。たまたまCDの後半はル・サージュのソロによるブラームスのピアノソナタ第3番へ短調が入っていた。これがわたしのツボにはまった。(この若干ふざけたギザギザのジャケットデザイン「何だ、これ」と最初は思ったけど・・・) 

ブラームスCD(画像をクリック)

他の楽章も堂々たる演奏で好きだったが難しい楽章は自分のレベルでは弾けない。第3楽章なら弾けるかもしれないと思ってピアノ再開の最初の曲として選んだ。(ただし、これは普通の人から見ると風変わりな選曲である。)

 

他のピアニストによる演奏を聴いてみると、みんな第3楽章は勢い良く、あっという間に終わらせることで、他の楽章とコントラストをつけ、他の楽章が際立つように演奏していた。他のピアニストにとって、第3楽章はオマケみたいなものだったのだろう。ル・サージュだけが、第3楽章を単独でも魅力ある曲として表現している。CDを聴いたわたしにとって、ル・サージュが弾く第3楽章は、他の楽章と同じぐらい強く印象に残った。だからこそ、弾いてみようと思った。ピアノ復帰後、記念すべき最初のピアノ発表会で弾こうと思った。もし、他のピアニストの演奏でこの曲を知ったら、この選曲はなかっただろう。

 

このピアニストが好きだと気付いたら、生演奏で聴きたい。最初に訪れた機会はラヴェルのピアノ協奏曲ト長調の演奏だった。紀尾井ホールという、オーケストラ演奏を聴くにはやや小ぶりなホールもまた最適だった。アンコールでドビュッシーの「映像」より「水に映る影」を弾いた後、多くの客がCD売場に直行していたのを思い出す。あのときにル・サージュを知った人も多かったのだろう。

 

その様子をホールの関係者が見ていたのだろうか?その後、2013年にこのホールでル・サージュのソロリサイタルが開催された。わたしにとっては念願のソロリサイタル鑑賞だった。

 

そのソロリサイタルより前に、ル・サージュは東京で再びラヴェルのピアノ協奏曲ト長調を弾いた。ドイツのシュトゥットガルト放送交響楽団との協演だった。フランスのピアニストの定番曲とは言え、すでにわたしはラヴェルを聴いたのだから、別の曲にしてもらいたかった。行くかどうか迷ったが、行ってみたら、思いがけないことが起こった。

 

アンコールになぜかモーツァルトのピアノソナタの第2楽章を弾いたのである。今でこそ、有り得る選曲だと思うが、当時はル・サージュさんがモーツァルトを弾くとは全く想定していなかった。これは、どこかで聴いたことがある。KV330の第2楽章がこんなに美しい曲だったなんて。ショッキングな出来事だった。中毒にかかったように、わたしは翌日からピアノレッスン曲を放り出してKV330第2楽章を弾き続けた。

 

旧ブログで書いたこのコンサートの記事では、アンコールを弾いたル・サージュが、わたしが変なショックを受けていることなど少しも気にかけず、飄々と立ち去ったことに対する、わたしの「声にならない叫び」云々などが書き綴られている。まったく罪な男ですね・・・

 

飄々といえば、この場面も思い出す。前述のパユ、メイエを含む管楽器奏者5人とル・サージュで「レ・ヴァン・フランセ」というユニットを組んでいるのだが、演奏を終えて興奮しまくりの5人の横で(特に興奮はげしい赤ら顔のパユさんの隣で!)、飄々と涼しげな表情で座ってサインを書くル・サージュさん。何と言えばいいのか。(素敵です・・・)

 

ル・サージュさんは、客席にご挨拶するときはサっとメガネを外してニコッと。(メガネ女スズキもいつか真似してみようか?)客席の一部はそれでクラッと(笑)

 

生演奏で、ル・サージュは曲の終盤、突っ走っていると感じることがある。そう感じているのはわたしだけかもしれない。部分的に突っ走っていてもいい。それでもいいのだ。好きだから聴くのだ。

 

面白かった出来事がもう1つ。東京都交響楽団とモーツァルトのピアノ協奏曲第24番で協演したとき、終演後ロビーに出たら「本日演奏したのはフォーレ作のカデンツァでした」というお知らせが貼り出されていた。

 

いや、普通はカデンツァの情報などわざわざ貼り出さない。

 

カデンツァというのは、協奏曲でソリストが即興で独奏する部分。聴かせ所の1つ。ただし、本当に即興で弾くことはあまりなく、作曲者自身が作ったカデンツァまたは他の作曲者や演奏者が作ったカデンツァを弾くことが多い。演奏者自身がオリジナル版を作ることもある。わたしはカデンツァに関してまったく素人なのだが、詳しい人は、その協奏曲のカデンツァにはどういうものが存在するのか把握していたりする。

 

何はともあれ、普通はどのカデンツァを弾いたかということはわざわざ知らせない。事情はよく分からないが、フォーレの室内楽曲を録音しているル・サージュとしては、今日のカデンツァはフォーレ作ということを何が何でも言いたかったのだろうか。確かに、聴いたことない流麗なカデンツァだから珍しいのだろうとは思ったのだが。フォーレ作のカデンツァを弾けて、しかもそれをお客さんにも知らせることができて、ル・サージュ氏はさぞかしご満悦だったはず。(一緒に赤ワインで乾杯したいです。byスズキ)

 

その流れに合わせてフォーレの曲をアンコールで弾いてくれても良かったのに、この日のアンコールはシューマン「ダヴィッド同盟舞曲集」から第2部の第5番だった。わたしにとって、この曲をアンコールで聴くのは3度目。そんなに好きなのね。違う曲を聴いてみたかったのだが、そういう願いには気付いてもらえない・・・

 

 

ル・サージュはシューマン弾きであると同時にプーランク弾きでもある。フランスの作曲家フランシス・プーランクの曲は軽快で洒落ていて聴き易い部分と、それとは正反対の宗教的な重苦しさを感じる部分がある。まさにプーランクの人柄そのもの。「プーランクを探して」という本では「修道僧と悪童」と書かれていたが上手い表現だ。作曲家プーランクについてはいずれ別途語りたい。

 

ル・サージュのプーランクCDはシューマンCDと同じぐらいオススメ。

まずはこれ。

プーランク ピアノ協奏曲 

CD(画像をクリック)  

 

MP3ダウンロード(画像をクリック)

プーランクの2台ピアノのための協奏曲を最初に知ったときは興奮した。その勢い、そのリズム、東洋的な響き。鋭いキレッキレのピアノのカッコ良さ。見事に弾ききっているのはル・サージュとフランク・ブラレイ。指揮のステファヌ・ドゥヌーヴと共に日本でもこの曲を演奏したらしいが、そのとき、わたしはクラシック音楽と出会っていなかったので聴けなかった。再演熱烈希望!!

 

プーランク ピアノソロ曲

CD(画像をクリック)

ピアノソロ曲CDも好きでよく聴く。洒落ているが軽くない。皮肉っぽいけど、捻くれていない。素で弾ききるル・サージュさんがカッコイイ。

 

プーランク室内楽

CD(画像をクリック)

ピアノ六重奏曲も含め、各曲それぞれ素晴らしい。言うまでもないが、最強の仲間に恵まれている。1つ取り上げてコメントしたい。

ヴァイオリン・ソナタの鋭い切れ味がクセになる。ヴァイオリンを弾いているのはコリヤ・ブラッハーというわたしのお気に入りのヴァイオリニスト。ル・サージュとの共演はこのCDのみと思われる。

この曲には「ガルシア・ロルカの思い出」という副題が付いている。ガルシア・ロルカはスペインの詩人なのだが、スペイン内戦で1936年に38歳で銃殺された。プーランクと直接面識は無かったようだが、同時代に生きた文化人でどちらも同性愛者であり、意識していたのだろう。

とにかく演奏が凄いので、ロルカの最期の場面が目に浮かぶ。想像してしまう。銃というよりは鋭い刃物でシャキーンと・・・

 

こちらはショスタコーヴィッチの曲。わたしのお気に入りの動画。一時期、視聴不可だったのだが最近また視聴できるようになっていて嬉しい。(みんな若かったときね。)


Dmitri Chostakovitch | Valse

 

わたしには夢がある。いつか、ル・サージュがパユやメイエと主催する南フランスの夏の音楽祭に行きたい。場所はサロン=ド=プロヴァンスという町。ブラレイや、レ・ヴァン・フランセのメンバーも常連。


SALON

演奏者が半分ヴァカンス気分で過ごしているのが良い感じ。

 

 

来日情報

 

2019年5月、9月、11月 王子ホール 

 

記事「我が偏愛の・・・」に戻る

www.music-szk.com

 

Copyright © Ongakuzukino Suzuki 2018. All rights reserved.