ピアニスト ルイス・フェルナンド・ペレス 銀髪・眼鏡の熱いスペイン男

Luis Fernando Pérez 
1977年、スペインのマドリードに生まれる 

長身、銀髪、眼鏡・・・それと、蝶ネクタイ。

「いや、蝶ネクタイはクラシック音楽では普通でしょ」と、あまりコンサートに行かない人は思うかもしれない。いや、きちんと蝶ネクタイまで付けているピアニストはむしろ少数派ではと思う。わたしが行くコンサートでは黒スーツ、白シャツ、ノータイ姿で演奏するピアニストが多い。ネクタイ姿のピアニストもいる。詰襟ジャケットを着てネクタイ要らずな格好の人も。だから、ほぼ常に蝶ネクタイで演奏するピアニストは、やはり珍しい。

ちなみに、ペレスさんの蝶ネクタイは時にちょっとカワイイ。水玉模様とか。

蝶ネクタイ、眼鏡、きっちり整えたシルバーヘア(まだ若いのだが)の長身細身のピアニストがステージに出てきたときは、スペインのミュージシャンというより、社交パーティーに出席するドイツかどこかのビジネスマンのようだった。

ちなみに、きっちり整えたシルバーヘアは演奏中にとっても乱れる。


ISAAC ALBÉNIZ- ASTURIAS Luis Fernando Pérez, piano

あと、手首に注目!忘れてはならないのが、腕にたくさん付けたミサンガ!(なぜだ!?)

とにかく、これがペレスさんのスタイルである。

 

2013年のラ・フォル・ジュルネ音楽祭でイベリア組曲全曲を聴いた後、最初に買ったのがスペインの作曲家エンリケ・グラナドスのCDだった。なかなか洒落たメイキング映像がYouTubeにあるのでご覧いただきたい。


Granados by Luis Fernando Perez 1/2

グラナドス
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音楽祭のマスタークラスで彼が指導したのは、このCDにも入っている「ゴイェスカス」の「嘆き、またはマハと夜鳴きうぐいす」を弾く生徒だった。この曲を選んでくれたことが嬉しいらしく、ニコニコしながらその作品の背景やその後のグラナドスの運命(船が攻撃されて溺死)などを語り、語り、語りまくる。

 

グラナドスと言えば、CDには入っていないが、スペイン舞曲集の中に「オリエンタル」という曲がある。ペレスさんファンの方に教えてもらったこの動画が好き過ぎて、アホみたいに何度も繰り返し聴いた。さあ、あなたも聴いてみよう!


Luis Fernando Pérez, piano Enrique Granados - Danza Española nº2 "Oriental"

はぁ、いろんなことを思い出させる音色だ・・・

 

クラシック音楽界において、スペイン音楽の取り扱いは軽い。ペレスさんは、スペインの音楽を演奏するときと、スペインの音楽を語るときに、本領を発揮する。これこそ自分の使命だと言わんばかり。だから、イベリア組曲全曲を弾くときなどは、凄まじい気合いと集中力を注ぎ込んだと思われる。(サッカー選手が国対抗の大事なゲームに挑むような?上手く演奏できたときは、勝負に勝ったときみたいに喜びが溢れる!)

 

わたしはペレスさんがきっかけでスペインのピアノ曲をいくつも知った。楽譜を買ったこともある。スペインの作曲家による作品は、タンゴ風だったり、南国を感じる雰囲気だったり、独特な部分もあるが、それでも正統なクラシック音楽だ。もっと重視されていいはず。(がんばれペレスさん、スズキはずっとアナタを応援する)

 

翌年の音楽祭で絶対にペレスさんにサインをもらうんだ。そう決めていたのに、音楽祭の常連だったはずの彼は、翌年は来日しなかった(涙)

翌々年の音楽祭で「去年も待っていたのに・・・」と本人に訴えたら「音楽祭の事務局にそう伝えてよ!ボクだって来たかったんだから!」とのこと。晴れてCDにサインをもらった。写真をお願いしたら、わざわざ席を立って隣に来てくれる。ファンからの依頼に喜んで対応してくれる気さくな人でもある。念願が叶った。わたしは感無量で会場から出て、ふらふらっと1人でグラスワインを飲みにいったなぁ。真昼間に。

そのときに買ったCDはマヌエル・デ・ファリャの作品だった。「ベティカ幻想曲」という曲が特に気に入った。細かいギターのような音も多用されている。それなりに聴き応えのある曲ではあるが、ペレスさんが弾くと、ただカッコイイだけの曲ではなく、神経が隅々まで届いている演奏で、繊細さも感じる。ただ情熱的なだけではない、センチメンタルな気分にも浸れるところが、スペイン音楽の魅力だと思う。 「ベティカ」はアンダルシア地方のこと。

ファリャCD(画像をクリック)

 

新作モンポウを見つけた。これは気になる・・・ ラ・フォル・ジュルネでも弾いていた曲だ。

モンポウ

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いずれ買おうと思いながらまだ買っていないのがスペインのバロック作曲家アントニオ・ソレールの鍵盤楽器ソナタのCD。

ソレール

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そんなわけで、わたしにとってペレスさんと言えば、圧倒的にスペイン音楽なのだ。彼は他の曲も弾いているし、わたしも何度か聴いたことがあるが、それでもやはり彼はスペイン音楽の超スペシャリストとしてわたしの記憶に刻み込まれている。

 

ペレスさんは本国スペインの音楽院で勉強した後、ドイツのケルンでフランスのピアニスト、ピエール=ローラン・エマールに師事した。ある年、2人とも同時に日本のラ・フォル・ジュルネに参加していた。師弟ツーショット写真が音楽祭のSNSに出ていた。わたしはエマールについて詳しくはないのだが、いったいどんな指導をしたのだろうか、まったく想像がつかない。エマールさんはバロック音楽と現代音楽、ペレスさんはスペイン物とその他はロマン派かな?それぞれの得意分野はだいぶ違う。

 

面白かったのは、2017年のラ・フォル・ジュルネでの演奏。残念なことにピアノの調子が悪くて、中央の目立つ音が狂っていた(わたしでも分かるぐらい)。それでも、ペレスさんは熱心に演奏を続け、アンコールの前に一言だけピアノの愚痴を言った。普通のピアニストは言わないのだろうけど、彼は言った。それでも、また時間オーバーの中、上機嫌で2曲もアンコールを弾いた。(客席の熱烈な求めに応じてくれた。いや、ペレスさんだってアンコール好きなのだから、いいのですよ。彼だって弾きたかったはず。)

 

拍手に応えて再びステージに出て来たペレスさん。

 

ニッコリ笑って客席に「ありがとう」と手を合わせた後、なんと手をピストルの形にしてピアノに向かって「バーン!」

 

なんだそれ!?(笑) カワイイわね!

 

そのときの本プログラムで弾いた物凄くオドロオドロしい「火祭りの踊り」を忘れてしまいそうな瞬間だった。黒魔女による危ない儀式のようなカッコイイ演奏だったのに(苦笑)

凄く真面目でストイックなところもあるのに、お茶目なところや、ストレートなところもあるピアニストだ。

それから、なぜか毎年のようにペレスさんは鼻風邪を弾いている。やや体調不良ながらも(体調悪いんだと嘆きながらも)、ピアノ演奏とファンとの交流を楽しんでいる。

でも、ペレスさんというピアニストの存在を知らない人も多いのだろう。ラ・フォル・ジュルネ会場に限って有名な人気者かもしれない。何しろ、音楽祭で演奏と人柄に一瞬で惚れ込んでしまった人が続出だから。

 

今のところペレスさんの演奏を日本で聴けるのはほとんどラ・フォル・ジュルネだけ。どこかのホールか音楽事務所に彼のソロリサイタルを企画していただきたい。ペレスさんファンとして、何としても、やらせてあげたい。1時間ではなく2時間の通常のリサイタルを。

ラ・フォル・ジュルネでは演奏時間は1時間弱。しかし、彼は本当は2時間分のプログラムを弾きたいはず。彼が音楽祭のために用意する2つの異なるソロ・プログラムは、連動しているらしい。本当は両方聴いてもらいたいのだろうし、休憩を挟んで連続して弾きたいはず。

可能性としては、日本のオーケストラがソリストとしてペレスさんを呼んで、それに便乗してどこかのホールでソロリサイタルを弾いてもらうというのが有り得るだろう。依頼があれば彼は喜んで応じるはず。

オーケストラとの協演はファリャの「スペインの庭の夜」、またはスクリャービンのピアノ協奏曲かな? あるいは、わたしがまだ聴いたこともない、存在も知らない、スペインの作曲家によるピアノ協奏曲。それで、ソロリサイタルはもちろんスペイン物で。

 

そんな機会があるのなら、スズキが張り切って宣伝隊長を引き受けるのに。(集客の責任は負えないけど・・・)

 

来日情報

たぶん、また来年のラ・フォル・ジュルネ(東京)

 

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