ピアニスト エリソ・ヴィルサラーゼ ジョージア(グルジア)はピアニストの宝庫 (ごめん、かなり脱線して国と地域を語る)

Elisso Wirssaladze / Eliso Virsaladze 
1942年、ジョージア(グルジア)のトビリシに生まれる 

 


Roque d'Antheron 2004 - Virsaladze

2004年ラ・ロックダンテロンでの演奏。ルネ・マルタン氏がプロデュースする南仏のピアノ音楽祭にヴィルサラーゼさんも出ていたのか。知らなかった。シューマン作曲「クライスレリアーナ」の一部。

 

そして、プロコフィエフのピアノソナタ第2番の第2楽章はこちら。


Elisso Virsaladze a L'Atlàntida

霧島の音楽祭では、このレベルの勢いのまま終楽章まで演奏した。このレベルの勢いというか、終わりに向けてますます熱を増す(でも切れ味の鋭さと冷静さも失わない)演奏だった。カッコイイとしか言いようがない。

 

わたしが最初に聴いたのはブラームスのピアノ五重奏曲のCDだった。好きな曲だが、これしか録音を持っていないのでわたしの中ではこの演奏がデフォルトになっている。この演奏が魅力的だったからこそ、この曲が好きになったのだろう。弦楽四重奏曲も心地良く何度も聴いた。

ブラームス ピアノ五重奏曲&弦楽四重奏曲
ボロディン弦楽四重奏団&ヴィルサラーゼ

CD(画像をクリック)

 

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ヴィルサラーゼさんを知った頃、彼女はあまり来日していないピアニストだった。でも、2014年に11年ぶりの東京でのソロリサイタルがあり、それから毎年のように東京に来ている。毎回評判も良いし、客席もよく埋まる。夏には鹿児島県の霧島国際音楽祭で講師や演奏をしている。一旦「売れる」と分かると、毎年同じ人を呼び続けるのが日本の音楽業界の残念なところ。もちろん気に入っている演奏家が来てくれるのは嬉しいのだが、他の演奏家を知る機会が限られてしまう。

彼女の演奏はプロコフィエフとシューマンがすばらしいと思う。モーツァルトも良かった。

音楽に対する彼女の考えについては、台湾の音楽ライター、チャオさんによるインタビュー本「ピアニストが語る!」が網羅している。ざっと読み直してみたが、現代のピアニストや音楽業界には強い危機感を持っていることを語っている。音楽に徹底した情熱を注いできたピアニスト。そういう本音は、たとえば彼女が審査員を務めるコンクールなどでは言えないのだろう。

ピアニストが語る!第1巻(画像をクリック)

 

ジョージア(グルジア)という国、コーカサスという地域について

コーカサスの地図

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ヴィルサラーゼさんの出身国は中央アジアで旧ソ連の一部だった「ジョージア」という国。最近、日本での呼び名を変えた国なのだがわたしは今でも旧名「グルジア」と呼びたい。あのクルクルの文字を見ると、どうしてもジョージアではなくグルジアという国名がしっくり来る。

საქართველო(グルジア文字で「グルジア」)

 

グルジアの人口は400万人にも満たないが、ここ出身のピアニストが何人もいる。

  • アナスタシア・ヴィルサラーゼ(ヴィルサラーゼの祖母)
  • ドミトリー・バシキーロフ(1931- ロシア系)
  • アリザ・ケゼラーゼ(1937-1996 旧ユーゴ生まれのピアニスト、イーヴォ・ポゴレリチの師であり妻)
  • エリザベート・レオンスカヤ(1945- ポーランド/ユダヤ系)
  • アレクサンドル・トラーゼ(1952- )
  • カティア・ブニアティシヴィリ(1987- 人気者だけどノーコメント・・・)

ピアニストではないが、ヴァイオリニストのリサ・バティアシュヴィリ(1979- )もグルジア出身。

グルジア出身でモスクワで勉強したピアニストたちが、革命やその他の事情でモスクワを離れて故郷でピアノを教えたという話を、台湾のチャオさんのインタビュー本で知った。

 

先日、気に入っているオランダの放送局のクラシック音楽YouTubeサイトでグルジア出身の若手ピアニストを知った。

グルジアの苗字は「ーゼ dze」または「シヴィリ shvili」で終わるので、分かりやすい。すぐ気付いた。前者は「息子」、後者は「子供」という意味なので英語で言うなら「○○ソン」ゲルマン語系なら「○○セン」東欧の言葉なら「○○ヴィチ」などと同じ。

その若手ピアニストはマリアム・バツァシヴィリ Mariam Batsashvili というのだけど、良かったら少し聴いてみてください。(ヴィルサラーゼさん主役の記事で脱線して申し訳ないけど・・・)


Bach/Marcello: Concerto in D minor BWV 974 - Mariam Batsashvili - Live concert HD

どうですか!? 気になるピアニスト。インドネシア演奏ツアーの動画もおもしろかったので興味あれば探してみてください。(これ以上脱線しないように、この辺で彼女についてはストップ)

 

グルジアの名産品といえばワイン。わたしもヴィルサラーゼさんの最初のリサイタル鑑賞の頃にグルジアワインを注文した。なんで!?いや、異文化研究は食べ物と飲み物から始まるのだ。(え?!音楽じゃないの!?)

 

グルジアのお隣の国、アルメニアも実はワインの産地なのだが、旧ソ連時代の分業体制ではアルメニアはブランデー担当だったのでワインは家庭用しか作られていなかったという。分業体制とは勿体無いなぁ・・・ いまではアルメニアもワインを輸出している。

ところで、このアルメニアという国もまた面白い。グルジア語とは別の古い言語で別の(これまた独特な!)文字を持つ。ご覧ください。

Հայաստանի Հանրապետություն (アルメニア語で「アルメニア共和国」)

 

アルメニア人の苗字は「リアン」で終わる。わたしたちクラシック音楽ファンにとって一番馴染みの名前はハチャトリアンだ。作曲家アラム・ハチャトリアンはアルメニア出身。「剣の舞」やフィギュアスケートの浅田真央選手が演技で使用した「仮面舞踏会」が有名。アルメニア出身の演奏家もヨーロッパなどでたくさん活躍している。

 

コーカサスという広い地域への興味のきっかけの1つとなったのが、去年霧島音楽祭で聴いたプロコフィエフの弦楽四重奏曲第2番ヘ長調だった。プロコフィエフは、第2次世界大戦中にコーカサス地域に疎開した。北オセチアのカバルダ・バルカル共和国で知った地元の音楽をベースに作曲した曲がこの弦楽四重奏曲だった。

そういう背景なら、ぜひとも地元の音楽を知りたい。そう思って検索して見つけた独特の踊りや音楽に夢中になってしまった。ご覧ください。静々歩く女性たちと、斜め上を見上げる男たち。


Caucasus Circassian dance freedom for Circassia Kabardinka

女性たちが被った高い冠みたいな帽子? 男性たちの物騒な格好(胸に銃弾、腰に銃?)こんなの初めて観た。

わたしは、文化と文化が混じる地域が好きで、コーカサスという地域はちょうど東と西が混じる地域なのだ。ゾクゾクするのも当然。旅したくなってきた。

このカバルダ・バルカル共和国は独立国家ではなく、今もロシアの一部なので、国名好きのわたしでも知らない名前だった。この共和国の出身者の1人が指揮者のユーリ・テミルカーノフ。今年、生い立ちを語った本を少し立ち読みしたが、悲痛な話だった。

 

わたしが憧れるコーカサス地域は、今もむかしも悲劇が立て続けに起こっている地域だ。むかしの戦争前後の悲劇とソ連崩壊後の民族間の紛争。皮肉なことに、ソ連体制だったときが一番平和だったのかもしれない。強力な体制に抑圧されて自由がなかったからこその平和。なんだかなぁ。

わたしが学生時代だったころからよく国際ニュースに名前が出てきたチェチェン共和国もこのエリア。

モスクワ生まれの指揮者ヴァレリー・ゲルギエフの両親もこの地域の共和国の1つ北オセチア出身で、ゲルギエフも子ども時代に住んでいたという。十年以上前に小学校で事件があり、多くの子どもたちを含む数百人が犠牲になったのを覚えている。

数多くの音楽家を輩出しながらも、悲しい歴史が渦巻く土地。写真でみるととても美しい地域なのに、なぜこうなってしまったのか。文化と文化が混じる場所にわたしは憧れるが、それこそが悲劇の元なんて、悲しすぎる。

 

話をグルジアに戻して、もう1つグルジア関係のものを紹介したい。

「グルジアンポリフォニー」を知っているだろうか?いかにも山岳地帯らしい発声で歌い上げる男声合唱がカッコイイと騒いでいたら、友人がそれはグルジアンポリフォニーというと教えてくれた。それ以来、よくYouTubeで検索している。痺れるカッコよさ。


A coro. Polifonías de georgia

 

ヴィルサラーゼさんの出身地グルジアから多くのピアニストが誕生したのはモスクワで学んだ優秀な音楽家が故郷グルジアで教えたからのなだろうけど、豊かな文化に囲まれて育ったからとも言えるのでは?

 

治安も気になるコーカサス地域の中で、グルジアとアルメニアは比較的おちついているようだが、それでも慎重な旅人スズキが旅するのはまだ先なのだろう。長い歴史と独自の豊かな文化、食べ物や飲み物にも興味津々なのだが。

 

かなり脱線してしまったが、ヴィルサラーゼさんがいなかったら、ここまでグルジアに興味を持つことはなかったと思う。なので、やはり、ヴィルサラーゼさんありがとうと言いたい。

 

去年2017年は夏に霧島国際音楽祭でヴィルサラーゼさんのソロを聴いたので、秋の紀尾井ホールでの室内楽コンサートは遠慮する予定だったが、行って良かった。大好きなショスタコーヴィチのピアノ五重奏曲を生演奏で聴くのは3回目だったが、ようやく自分好みのピアノによる生演奏と出会えた。ショスタコーヴィチの音楽も彼女の音楽センスに合っている。

ヴィルサラーゼさんのCDは入手困難なものばかり。ショスタコーヴィチのピアノ曲が入っているCDは図書館で借りた。拍手が入っているからライブ録音ということだ。すごい集中力の演奏だ。

リスト&ショスタコーヴィチ
CD(画像をクリック) 

 

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モーツァルト、プロコフィエフCDは買った。最初のモーツァルトの曲は隅々までキラキラしている。東京でのリサイタルでも聴いた。キラキラし過ぎているような気もするが、この曲はそれで良いのだろう。次の短調のモーツァルト曲もドラマチックな演奏で好き。

モーツァルト&プロコフィエフ
CD(画像をクリック)

 

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霧島の音楽祭ではCDコーナーを担当したショップが一生懸命CDを掻き集めたと言っていた。わたしはナタリー・グートマン(チェロ)とのデュオCDを買ってヴィルサラーゼさんのサインをもらうことができた。ヴィルサラーゼさんのサインをもらえる日が来るなんて、奇跡かもしれない。「あなたの音楽への情熱が好き」と直接伝えることができて、うれしかった。凄まじい猛暑の鹿児島での思い出。

ヴィルサラーゼ&グートマン
ベートーヴェン、メンデルスゾーン
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ちょいワル風なサングラス姿の昔のヴィルサラーゼさんも少し見てみない・・・?

 

来日情報

今夏もヴィルサラーゼさんは鹿児島の霧島国際音楽祭に参加していた。秋には再び来日。

大ホールか・・・小ホールで聴きたいのに。どうしようか。録音も限られているし、YouTubeにもそれほど多くはない。せっかく連続して来日してくれているのだがら、また生演奏を聴きに行くか・・・?

 

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2018年11月27日(火)19:00

すみだトリフォニーホール 大ホール

エリソ・ヴィルサラーゼ ピアノ・リサイタル

 シューマン

  6つの間奏曲 作品4

  ダヴィッド同盟舞曲集 作品6

 ショパン

  バラード 第2番 ヘ長調 作品38

  ワルツ第3番 イ短調 作品34-2「華麗なる円舞曲」

  ノクターン第4番 ヘ長調 作品15-1

  ワルツ第4番 ヘ長調 作品34-3「華麗なる円舞曲」

  ワルツ第9番「告別」 変イ長調 作品69-1

  ワルツ第8番 変イ長調 作品64-3

  ワルツ第7番 嬰ハ短調 作品64-2

  ノクターン第7番 嬰ハ短調 作品27-1

  ノクターン第8番 変ニ長調 作品27-2

  バラード第3番 変イ長調 作品47

  ワルツ第2番 変イ長調 作品34-1「華麗なる円舞曲」

個人的にはシューマン「ダヴィッド同盟舞曲集」に期待大。

 

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