スズキブログ主催 クラシック音楽 英語サイト賞(東京・首都圏) | おまけ・・・英語ページ作成時の注意点

翻訳歴10年超、ヨーロッパ個人音楽旅も楽しむスズキは、国内クラシック音楽施設等の英語版ウェブサイトを勝手に審査して、勝手に表彰することにしました。

ノミネートされたのは、以前ブログ記事で作成した施設・オーケストラ等の一覧に含まれる各サイトです。

www.music-szk.com

 

審査ポイント

  • コンサート情報の読みやすさ 見やすさ

英語で情報(日時・曲目・演奏者)が提供されているか。誤解なく伝わるか。

  • 信用性

サイト内の英語の情報が正確か。信用できるか。最新の情報か。必要に応じて更新・訂正しているか。

  • 英語でチケットを購入できるか(オンラインまたはE-mail)

日本語が分からないクラシック音楽ファンが、前売りチケットを買いたいと思うか。

  • 魅力が伝わるか

ただし、上記3点が達成されないままコンサートの魅力だけを英語で伝えるサイトは低評価とする。

 

完璧な英語でなくても良いのです。でも、あまりにも間違いや違和感が多いと、適当に作ったサイトと思われてしまい、内容を信用してもらえません。クレジットカード等の個人情報を提供するのも不安になってしまうかもしれません。

また、わたし(スズキ)が英語でチケットを買いたいと思えるかどうかを評価に反映しているので、公平で厳密な審査による賞というよりは、わたし個人が選ぶ個人的な賞であるということをご理解ください。

さあ、選ばれたのはどのサイトでしょう!?

いよいよ発表します。

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受賞サイトの発表

 

クラシック音楽 英語サイト賞(東京・首都圏)

2サイトあります。

  • 新国立劇場

www.nntt.jac.go.jp

ヨーロッパの音楽施設のサイトと比べても劣らない、魅力あるページだと思います。

英語でのオンラインチケット購入は、「チケットぴあ」が提供するシステムによる新国立劇場専用のサイトです。他のいくつかの音楽施設でも同じシステムが使われていますが、新国立劇場による販売手順の説明が1番分かりやすいです。説明が長すぎるとは思いますが、それは長い説明を要するシステム側の問題かと・・・ 新国立劇場では、チケット購入を考えている人が疑問に思う部分を、きちんと取り上げて説明していると思います。

実は新国立劇場の英語サイトについて、思い出したことがあります。

詳細は忘れてしまったので曖昧な書き方で申し訳ないのですが、数年前に新国立劇場は英語サイトを一度終了してしまいました(あるいは終了予定という発表だったかな?)。英語サイトの必要性を訴える人々の声がツイッターで流れていました。新国立劇場は、ツイッターでの反応に応え、人々の意見に感謝し、英語での情報発信にも力を入れるという旨をツイートした・・・と記憶しています。その後どうなったのか把握していなかったのですが、今回の調査で立派なサイトが運営されていることを知って、感動しました。

残念なのは、そもそも日本のチケット購入システムはヨーロッパの劇場のものと比べると不便な点ですね。それはシステム上の問題なのです。日本の英語オンラインチケット販売では座席指定ができません。また、チケットはボックスオフィスに受け取りにいかなければいけません。その辺については後述します。

 

  • 東京フィルハーモニー交響楽団 

tpo.or.jp

英語のチケット販売サイトから座席指定が出来るというのが個人的に高く評価できる点です。今回の調査で初めて知ったのですが、国内の音楽施設の英語オンラインチケット販売では、ほとんど座席指定ができません。座席は自動的に決められてしまいます。でも、S席の中でも真ん中の席に座りたい人もいれば、通路側の方が落ち着くと言う人もいるはずです。オンラインで座席指定が可能だと嬉しいです。

東京・首都圏の他のオーケストラや音楽施設が実現できていない英語でのオンライン座席指定を、東京フィルが既に提供しているということに驚きました。素晴らしいです。

東京フィルの英語サイトは、新国立劇場サイトのような視覚的にアピールできるサイトではありませんが、情報は十分提供されていると思います。

 

勝手に審査して勝手に選ばせていただきましたが、新国立劇場東京フィルハーモニー交響楽団の英語サイト作成に関わった皆さん、おめでとうございます!!

 

 

審査員スズキからのコメントと感想

細かいことばかり言うと面倒なオバサンと思われてしまいそうですが、どうして日本人は英文作成のルールを軽視するのでしょう。すべての英語サイトで何かしらの間違いが見られました。中学や高校で徹底的に指導して欲しいです。

  • 半角スペース!

英語の句読点(カンマとピリオド)の後には半角スペースを入れます。カッコ( )前後の半角スペースの入れ方にも注意しましょう。

悪い例

Woodwinds,brass,percussion,and strings(violin,viola,cello and double bass)

良い例

Woodwinds, brass, percussion, and strings (violin, viola, cello and double bass)

普段から英文を読みなれていれば、スペースが正しくないことに気が付くはずです。また、Wordで英文を作成すれば、色つきの下線で間違いを指摘してくれます。

  • 記号は世界共通ではない!

記号は言語や文化により意味が違います。読み手が混乱するので、できるだけ避けたほうが良い場合もあります。

驚くかもしれませんが、座席の残数でよく使われる ○ △ × という記号も日本独特のものです。

  • 全角文字を使用しない!

コンピュータで使用される文字には全角文字と半角文字があります。英語は半角文字だけで入力します。むかしは半角の文章に全角の文字を混ぜると、文字化けしていました。いまは文字化けにはなりませんが、不自然に見えます。

全角 12345

半角 12345

~ 【 】< > ※ のような全角記号も英語では使用しません。どうすれば良いのでしょう?半角 ~ [ ] < > * に変更すれば良いのでしょうか? 答えは、基本的にはノーです。前述の通り、記号の使い方は世界共通ではありません。英語の場合はどう表記すれば良いのか、下に示したのは参考例です。

 

1833年~1897年  を英語で 1833-1897

 

【ニュース】や<プログラム> を英語で

News  (太字、色変更、下線など)

Program | (縦棒や横棒で前後の単語と区切る)

NEWS  (大文字で表示する)

半角記号を使った [News] <Program> のような表記は日本人が作成した英語サイトや英語の資料に非常によく見られます。誤解や不快感を与えるものではありませんが、英語では通常そのような表記はしないので違和感があります。

 

「※」で始まる文章を英語にするときは、どうするのか?

むずかしいです。記号を削除して該当する文を最初から最後まで太字、下線付きにするか、別の色に変更したり、フォントサイズ大きくしたり・・・ あるいは、「 • 」などに置き換えて通常の箇条書きとして表示するとか。

「※」は、日本語では「この点に注意」「ここは大事」という意味で使われます。日本人は「※」の代替として、よく半角のアスタリスク * を英文で使いますが、アスタリスクは英語では脚注など、本文の外に説明を加えるときに、本文内と説明部分に同時に付けるマークであり、「※」の代わりとして使うのは間違っています。(ただし、[ ] < > と同様に、* は日本の英語サイトや英語資料では非常によく使われています。)

 

  • 必要以上に省略しない!

曜日や月のMon. Tue. Dec. Apr. や楽器のVn. Pf. など、省略しなくてもよい単語をわざわざ省略しないようにしましょう。スペースが限られている表の中に記載しなければいけない場合や、同じ単語を表やリストで繰り返し記載する場合、文章内ではなくデザインとして表記するときなど、特別な事情があるときだけ省略しましょう。それ以外のときは、スペルアウト(省略せずに最後まで綴る)するのが基本です。また、文章内では通常はすべてスペルアウトします。

 

以上は、すべて別に守らなくても特に困ることはないのですが、あまりに目に付くと、いかにも適当に作ったサイトのように見えてしまったり、基礎的な英語ライティング知識がない人が作成したように見えてしまったりということがあります。せっかく頑張って作ったサイトなのに、もったいないと思います。

とは言え、あまり英語に親しんでいない人にとっては何がOKで何がNGなのか判断しにくい部分も多いので、完璧に仕上げるのは難しいです。あまり神経質になる必要はありませんが、少し気をつけるだけで簡単に避けられるものは避けるに越したことはありません。

 

では、英語表記以外の部分についてコメントをしましょう。

小ホール施設では、コンサート情報が日本語のみというサイトが多く見受けられました。また、日時、曲目、演奏者は英語で紹介しているけど、チケット購入方法の記載がないサイトもありました。東京の小ホールは魅力的な公演が多いのに、英語での情報が限られていて残念です。

 

一方、大ホールを擁する施設やオーケストラ団体では、多くのサイトで、英語でチケット購入方法が説明されていました。それなのに、いざ購入ページをクリックしてみると、日本語オンリーの購入画面が出てきてしまい、ガッカリしてしまいました。購入画面の表示がすべて日本語では、チケットを買うのを諦めてしまうでしょう。別のページで英語解説があっても、それだけでは心許ないです。

結局のところ、英語で前売りチケットを買えるのは電話とボックスオフィス等の対面窓口のみというサイトが多いです。電話でチケットを購入するのは躊躇してしまいます。自分の名前の綴りを伝えるのは面倒です。英語が苦手な人もいます。海外在住の人は、チケットのために国際電話をかけなければいけないとなると、購入を諦めてしまうでしょう。

 

英語でのチケット購入はオンラインでも電話でもなく、Faxのみ受け付けるというサイトもありました。ネットで調べたのにFaxで申し込む外国人がいるのでしょうか? せめてE-mailで買えると良いと思います。わたしなら購入を諦めます。

 

わたし自身が日本語がわからないクラシック音楽ファンであると仮定して、チケットを購入するとしたら、オンラインかE-mailに限ります。窓口で当日券を買う可能性もありますが、できるだけ事前に買っておきたいです。今回の調査では、オンラインかE-mailでチケットを買えるサイトを高く評価しました。でも、前売りチケットは買いにくいけど、プログラム解説など、コンサートに関する英語説明が充実しているサイトは他にもありました。そのようなサイトは、英語でオンラインチケットが購入できるようになれば、国内外から新たなお客さんが増えるかもしれません。

 

面白かったのは、自動翻訳を導入したサイトでした。コンサート情報の部分は思った以上に、なかなかよく訳されていました(笑) 下手な翻訳者にやらせるよりは、はるかに良いように思いました。ただし、チケット購入方法の部分は、かなり読みにくく、意味不明な箇所が多かったです。

 

細かい説明はないけど、シンプルで必要最低限の情報が提供されている英語サイトも好印象でした。行きたいコンサートがあれば問題なくチケットを購入するでしょう。日本語に対応させてすべてを英訳する必要はないのです。

 

ところで、今回調査した多くのサイトで、英語で購入したチケットの受け取り方法は基本的に “will call” とのことでしたが、お恥ずかしいことに、わたしはこの英語を初めて知りました。 会場のチケット窓口でチケットを受け取るという意味だそうです。

アメリカでよく使われている言葉らしいのですが、わたしは知りません。アメリカのコンサートホールのサイトでチケットを買ったこともあるのに知りません。Pick up at Box Office の方が間違いなく誰にでも伝わると思うのです・・・

 

チケット購入が面倒なガラパゴス日本

ヨーロッパの主要なクラシック音楽ホールやオペラハウスのサイトではもっと簡単です。

  • 海外からも個人で簡単に手配
  • 座席指定も可
  • チケットは自分で印刷するだけ

各ホールやオペラのサイトに英語ページがあります。そこで座席を指定してクレジットカードで支払い、メールに添付されたEチケットを自分で印刷するだけです。EチケットにバーコードやQRコードが入っています。スマホなどの電子デバイスで表示するだけでOKの場合もあります。

また、説明をわざわざ読まなくても、「直感的」に購入手続きを進められます。ヨーロッパはもともと国外からの旅行客が多いので、チケット購入や送付の手順が外国人にとっても便利で分かりやすいシンプルなものになったのでしょう。ヨーロッパでは鉄道のチケットも同様の手順で日本からでも購入することが可能で、自分でプリントしたEチケットだけで乗車できます。

それと比べると、日本でのチケット手配は原始的です。観光先進国で多文化なヨーロッパと比べても仕方ないのですけどね。

わたしがアジアのどこかに住むクラシック音楽ファンだとしたら、東京はとても魅力的な音楽の街です。もし、スムーズに音楽旅を計画できるなら、何度でも遊びに行きたいと思うでしょう。今の状況だと、日本は諦めてヨーロッパを目指して貯金する道を選ぶでしょう。本当は日本の方が旅費は少なくて済むし、コンサートはたくさんあるのに。

 

英語サイト作成のコツ

おまけです。

  • 具体的な目的、ターゲットユーザー

「既存の日本語サイトの英語版を作る」ということだけを最終ゴールにしてしまうと、ただの鏡写しで、内容が想定ユーザーのニーズに合わないイマイチなサイトになってしまいます。

「ターゲットは外国人」では曖昧すぎます。ユーザーを分析し、どんな情報を求めているか、想像力を使って把握して、より良いサイト作りを目指しましょう。

  • 相応しい担当者を選ぶ

翻訳者スズキの経験上、翻訳者とやりとりするのは社会人なりたての新人や事務や庶務に従事する社員であることが多いです。担当者は、自分の仕事は「翻訳さん」に「お願いします」と「ありがとうございました」を言うことだと思っています。それは甘いです。目的を翻訳者と共有し、的確に指示を出し、出来上がったものを評価して会社が決めた目的に合うようにフィードバックするのが担当者の仕事です。

特に社会人なりたての若い担当者は、最終目的が上司のOK(合格)をもらうことだと認識している場合があり、本来の最終的なユーザーを意識できていません。そのうえ、その上司が英語苦手で国際感覚に欠けるという場合はさらに問題です。(こうして日本国内の英語サイトや英語の資料のレベルはなかなか向上しない・・・)

翻訳の良し悪しを判断できる優秀な社員を担当者にしましょう。あるいは、担当者のアドバイザー役にしましょう。そのような人材がいない場合は、優秀なコンサルタントを雇うことを検討してみてください。

  • 翻訳前の日本語原文が良い文章か

日本人向けの日本語のサイトをそのまま英語にしても、そんな読みにくいサイトはほとんど読んでもらえません。内容を全体的に見直して、翻訳する部分、翻訳しなくていい部分、追加で翻訳しなければいけない部分を整理しましょう。本当は日本語ベースにするより、ゼロから新しい英語サイトを作るほうが良いです。ところで、そもそも、その日本語のサイトは魅力的ですか?便利ですか?改善の必要性はありませんか?

  • ネイティブチェックを疑う

チェックしてもらえるのは文法やスペルです。違和感や不自然な部分があっても、翻訳において当然起こり得ることなので、仕方ないとして、特に指摘はないでしょう。なぜなら、修正するとしたら全体的にやり直すしかないので、面倒ですから。

せっかく雇うなら、文法やスペルのチェックのためではなく、全体的なサイト作りのアドバイスする能力を有する人を雇いましょう。

言うまでもありませんが、英語ネイティブ以外のユーザーも多いことを忘れてはいけません。外国語として英語を使っている人にとっても分かりやすいサイトにするべきです。

 

ところで、文法やスペルが正しければ、だいたいの内容が通じると思っていませんか?

それは間違っています。文法やスペルが正しくても意味が通じないケースは沢山あります。(日本的な挨拶「お疲れ様です」を言葉通りに英訳しても相手が首を傾げるのと同じです。) 逆に、相応しい単語を選び、タイミングと状況に合わせて言葉を伝えれば、文法やスペルが不正確であっても通じることが多いです。(もちろん、できるだけ正確な文章を書けるようにするべきですけれど。)

  • 留学、帰国子女、TOEIC、有名大学を疑う

英語でまともな文章を書ける人は、日本には少ないです。英会話は得意、オンラインチャットは得意、四択のマークシートは得意・・・という人はたくさんいるかもしれません。

  • 翻訳会社を疑う

翻訳会社は、原文の日本語に忠実に英訳してくれます。つまり、原文の日本語が不明瞭で過不足だらけの場合は、そのマイナス面もそのまま忠実に英語に表れてしまいます。また、翻訳会社では、わたしが先ほど指摘した日本独特の記号を残したまま英訳することが多いと思います。どこまでも原文に忠実な英訳です。

 

翻訳の仕事

間違えてこのページに来てしまった翻訳者を目指す皆さんへのメッセージです。

翻訳者を目指すなんて、やめておいたほうがいいですよ。

勤務先では翻訳マシーンとして扱われます。

勤務先では社内の人材を大事にしています。社内の結束を強化しています。翻訳者はもともと一般の人たちとは感覚が違う上、数少ない余所者なので居心地が悪いです。

それから、以前と比べて翻訳者が安定を求めることは困難になってしまいました。

無期雇用ルールや派遣法改正のせいで、企業は翻訳者を長期に渡って使用することはできなくなりました。企業が翻訳者を無期雇用すると思いますか?企業は、いずれ翻訳作業はAIに取って代わると思っているので翻訳者を無期雇用化することは避けたがります。

翻訳者を解雇しても企業は困りません。

いまや翻訳は誰にでも出来る簡単な仕事だと思われています。ベテラン翻訳者に代わって翻訳を担うのは、オンラインで仕事を請け負う自称英語が得意な人々です。安く気軽に雇えるので企業からも人気です。

こうして日本は町の中もネット上も、ますます変な英語が広がっていきます。

情報を求めている人がいるのに、伝わらない情報ばかり。

情報を伝えたい人がいるのに、伝わらない情報ばかり。

悲しいですね。

わたしは翻訳者をやめたいです。

 

 

超ネガティブ期に突入している翻訳機スズキですが、今回、個人的に調査したクラシック音楽関係の英語サイトは、絶望するほど酷いものではありませんでした。少し安心しました。

より快適で魅力的なサイトが増えていくことを願っています。

 

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