ヴォルフ作曲「スペイン歌曲集」 男は恨み節 女は生き生き歌う

絶望して叫ぶ男の恨み節と、男を横目に見ながら相変わらず妖艶で魅力的な女の歌が交互に楽しめるのが愉快です!!

テンポ良く進みます。各曲は独立しているので、話が繋がっているわけではありませんが、流れを感じます。

男は大袈裟に声を荒げて嘆きます。かわいそうです。次に続く女の歌が強気に気取っているように感じて、男はきっとイラっとしているはずです。ふふふ。楽しいですよ!(スズキさんは性格悪い女ですって?!失礼ですね。)

 

作曲したフーゴ・ヴォルフ Hugo Wolf (1860-1903) は、スペイン人ではなく、オーストリアに生まれたスロヴェニア系です。

スペイン歌曲集 の詩は、16~17世紀のスペイン語の詩をドイツの文豪エマニュエル・ガイベル Emanu Geibel (1815-1884) とパウル・ハイゼ Paul Heyse (1830-1914) がドイツ語に訳したものです。彼らが自ら創作した詩も紛れていると言われています。

いわゆる「ドイツ歌曲」の1つなのですが、そこに反映されているのはドイツ辺りの人々がイメージするエキゾチックな遠くの異国スペインです。

どのような順番で歌うかというのは演奏者が決めるようです。

わたしの愛聴CDでは、タンバリンを鳴らす女が最初に登場します。Klinge, klinge, mein Pandero です。居酒屋で踊るロマ(ジプシー)の女なのかしら? そんな雰囲気を感じます。

歌い出しは「あたしのパンデーロ、いい音を鳴らしてちょうだい!」

「パンデーロ」はスペイン、ポルトガル、南米で使われるタンバリンのような楽器です。

客は踊る女をうっとり眺めているのでしょうけど、女の心はどこか遠くにあるようです。胸の内は怒りや悲しみが渦巻いているらしいのです。それでも彼女は踊るのです。相棒のパンデーロと共に。

 

次の曲が唐突で刺激的です。男が歌います。Seltsam ist Juanas Weise です。「ファナ(女性の名前)のやり方は変だ!」という感じでしょうか。オレ様はアイツをこんなに愛してるのに、アイツは冷たい・・・と、いつまでもダラダラ男が大声で嘆いている歌です。

詩の内容の抜粋はこのような感じです。(スズキによる、ざっくり和訳、意訳)

俺がため息付いて(悲しげに)「今日」といえば、

おまえは(全然心配さえせず)軽く「あした」という。

俺が泣いていると、おまえは勝ち誇って嬉しそうだ。

俺が「おまえは神のように素晴らしい」といえば、

おまえは「あなたなんか悪魔よ」という。

俺が「天国に行きたい」といえば、

おまえは「あなたなんか地獄に落ちれば」という。

 

ぷぷぷ! ファナさん、冷たいわよ! スズキより冷たいわよ!

この曲における男性歌手の歌いっぷりが「恨み節」なのです。演技が入っています。でも、嫌な感じはしません。ストレスも感じません。むしろ心地良い歌いっぷりです。まるで演歌を聴いているみたいです。

同様の男の「恨み節」の歌は Herz, verzage night geschwind でも聴けます。

weil die Weiber Weiber sind「どうせ女ってヤツは女なんだ」と、かなり激しくお怒りです。ヴァイル ディー ヴァイバー ヴァーーーーーーーイバー ズィント(怒)♪

 

「恨み節」以外の男歌としては、ウブな乙女心・・・じゃなかった、男心を歌ったかわいらしい曲も入っています。繊細なのですね。ふふふ。

Wenn du zu den Blumen gehst では、美しい恋人に夢中の男が歌っています。

「君がお花畑に行って、一番美しい花を手に取ろうとするなら、君自身を摘むしかないだろうね。」(ノーコメント 笑)

Wer sein holdes Lieb verloren では、せっかく女の子がお花畑で愛を告白してくれたのに、何も言ってあげられなくて、彼女はお花畑で悲しくて沈み込んでしまい、「俺なんかサイテーだ!生まれてこなければ良かった。」と自分を責める男の歌です。まったくもう。おバカさんですね!

 

一方、女歌の方は無邪気でかわいい曲、元気な曲が印象的です。基本的に前向きだったり、内に情熱を込めつつ、冷静に状況を飲み込もうとするオトナだったり。男性の歌とは対極にあるように感じます。内容はよく分からないけどリズム良く楽しげだったり、「不思議ちゃん」なところも気になる異国の女という感じなのでしょう。

Köpfchen, Köpfchen, nicht gewimmert という歌では「頭、頭、あたしのアタマちゃん、痛まないで・・・勇気を持って、がんばれ!」と、頭に呼びかけます。

Sagt, seid Ihr es, feiner Herr という歌では、たぶん、別れた男がカッコ良くなって他の女とダンスなんか踊っているので、悔しくって「昔のアナタはあんなにダメ男だったのに」なんて言いながら1人で喚いている歌でしょう。男歌の重い恨み節とは違って、軽快で楽しい感じです。この女性は自分に自信があるのでしょう。

 

ここまでは庶民の恋愛を描いた歌で、それから宗教歌が始まります。

宗教歌でわたしが気に入っているのは、Nun wandre, Maria です。ヨゼフが身重の妻マリアを連れてベツレヘムへ向かっている場面です。ヨゼフは、きっと自身も不安で仕方ないはずですが、それを隠しながら妻を励ましている感じがします。

 

ヴォルフ「スペイン歌曲集」「イタリア歌曲集」 

CD(画像をクリック)

 

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解説は英語、歌詞はドイツ語に英語訳が付いてます。3枚組CDで「スペイン歌曲集」2枚に続き、3枚目には「イタリア歌曲集」が収録されています。

しかし、わたしはまだ「イタリア歌曲集」は聴いていません。

東京で「スペイン歌曲集」のコンサートを聴く前の予習のために買ったCDでした。曲に惚れ込んで、凄く楽しみにしていたのに、女性歌手が病気のため出演をキャンセルしたので、プログラムがすべて変更になりました。わたしは泣く泣くチケットを払い戻したのでした。2014年のことです。ああ、思い出しても悲しいです。CDとは違う歌手ですが、オーストリアのシューベルティアーデ音楽祭の常連の歌手とピアニストによる演奏の予定だったのに(涙)

 

ところで、見事な歌いっぷりをCDで披露してくれたヴォルフガング・ホルツマイヤーWolfgang Holzmair (オーストリア1952 -  ) というバリトン歌手も気になります。2014年で歌手活動から引退すると宣言をしているのだけど、その後も少しだけ歌っているらしいです。

久し振りにCDを聴いてみたら、急にソプラノ歌手を知っているような気がしました。改めて調べてみたら、何と彼女は忘れもしない2015年のシューベルティアーデで、キャンセルした歌手の代役で大活躍した歌手でした!

ビルギット・シュタインベルガー Birgid Steinberger というドイツ生まれの歌手です。稀に見る面白い歌曲リサイタルだったのですよ!

www.music-szk.com

 

 

あのう、ヴォルフのスペイン歌曲集、どなたか歌ってくださいませんか?

生演奏で聴きたいです。全曲おねがいします。予習し直して聴きに行きます。

 

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