ハイドン作曲 スコットランド歌曲集 英語?ドイツ語? 歌 ヴェルナー・ギュラ(テノール)

2016年夏に北ドイツのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭で鑑賞した曲です。滅多に出会えない作品との出会いに感謝したいです。鑑賞前にCDで予習しました。

 

歌曲の伴奏と言えばピアノ・・・

だけど、この歌曲集では少し違います。ピアノ、ヴァイオリン、チェロが伴奏をします。そこにヴォーカルが入って、バンドのような雰囲気です。

 

ドイツ語で歌っていると思っていたら、英語でした。

でも、よく聴いてみると、やはりドイツ語のようにも聴こえます。

何だ、これは・・・?!

どうやらスコットランド語らしい。いや、一応英語なのだけど、歌手がスコットランド語を意識して、発音を変えて歌っていると言うのが正しい説明か?

例えば、この歌曲集で歌手は、light やnightをわざと「リヒト」「ニヒト」とドイツ語のように発音しています。一瞬、歌手が間違えて発音しているのかと思ったのですが、こんな初歩的な英単語の発音を間違えるとは思えませんからね・・・ わざとです。

わたしは専門家ではないので中途半端な説明しかできないのですが、スコットランド語は英語とかなり近いです。でも、古い時代の英語(古英語)がスコットランド語には残っていて、その古英語というのは、ゲルマン語、つまりドイツ語とも共通の部分があります。確か、ドイツ語の中でも低地ドイツ語(北ドイツ)は、スコットランドの言葉と近い関係・・・だったはず。

 

CD冊子の歌詞は、英語の横にフランス語訳、そしてドイツ語訳なのですが、英語が1番難しいのかもしれません。意味の無い言葉遊びなのか、地域の風習や伝説なのか。もしかしたらフランス語やドイツ語の方が分かりやすいのかもしれませんが、結局のところ語学力が足りないのでわたしには分かりません。解説を頼りに少しだけ内容を理解できるという状況です。

その解説ですが、わたしは仏ハルモニアムンディ(CDレーベル)の解説の英訳をご担当されているC. J. 氏の英語がいつも苦手でして・・・ わたしに背景の知識がないから分かりにくいと感じるのかもしれません。この歌曲集CDでは解説のフランス語も英語訳もC. J. 氏が執筆しています。

 

オーストリアの作曲家フランツ・ヨーゼフ・ハイドン (1732 – 1809) は、60歳近くまで、長い間ハンガリーの貴族エステルハージ家の楽団の楽長として活躍しました。管理職サラリーマンのように地道に働きました。

ここからがわたしの好きな話です。その後、ハイドンは60歳ぐらいで生まれて初めて遠くに旅行したのです。行き先はイギリスです。当時のイギリスは大陸ヨーロッパより先に進んでいました。イギリスには市民階級が生まれ、市民がチケットを買ってコンサートを楽しんでいたのです。ハイドンはイギリスで大歓迎されて感激しました。そして再訪しました。

彼は、スコットランドには行っていませんが、イギリス訪問がきっかけで依頼を受けて、スコットランドの歌の編曲を手掛けるようになりました。計375曲あります。このCDに収録されているのは、そのうちエジンバラのアマチュア音楽家ジョージ・トムソンが編曲を依頼した208曲の一部です。

ハイドンと依頼主のトムソンは対面したことはなく、文書のやり取りで取引したのですが、英語でもドイツ語でもなく、イタリア語でコミュニケーションを図っていたと解説に書いてあります。(もう少し昔の時代だったらラテン語だったはず。)

当時のイギリスの人々はコンサートに行くだけでなく、演奏も楽しんでいたようです。そんな一般の音楽ファンを意識して出版されたスコットランド歌曲集の楽譜です。馴染みのメロディーに詩をつけて歌曲にして、有名作曲家ハイドンが編曲したものです。

 

テノール歌手のヴェルナー・ギュラ Werner Güra は1964年ミュンヘン生まれです。歌曲の他には、バッハのカンタータ等、宗教曲のソロもよく歌っています。何かやってくれそうな独特の雰囲気に、実は少々惚れ込んでおります、わたくし。


Werner Güra


Schubert - Mass No. 6 in E flat major - Bertrand de Billy

最初の動画では、最後の方で何だか人柄が出ていますね。次の動画はわたしの好きな曲、シューベルトのミサ曲第6番です。ギュラさんがソロを歌う宗教曲を生で聴きたいです。ますます惚れ込みそうです。目が離せません。(落ち着けスズキ・・・)

CDから感じる声質は非常に明るいです。さわやかに、じんわり、上の方に突き抜ける感じがします。

北ドイツの音楽祭でCDと同じ曲を含むプログラムを聴いたとき、ギュラさんは役者のようでした。ハイデという小さな町の教会で行われた小規模なリサイタルでした。

この珍しい曲のプログラムをわざわざ予習したのは、会場内で、たぶんスズキだけだったでしょう。スコットランド語のような英語の歌詞で、内容はローカル話すぎて分かりにくい曲ばかりなのに、ギュラさんの表現豊かな歌い方に引き込まれたドイツのお客さんたちが楽しそうに聴いていました。わざとらしい演技ではなく、嫌味のない、自然でいい感じの雰囲気を、余裕で作り上げていく。そんな歌手です。

 ハイドン スコットランド歌曲集

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好きな曲を2つ紹介します。

Twas at the hour of dark midnight (Barbara Allan)

ハイドン編曲の歌曲の詩では、戦場で勇敢に戦ってきた男がついに敵の攻撃を受けて倒れる悲劇のストーリーです。原曲はBarbara Allan というスコットランドの伝統的なメロディーです。

YouTubeで調べるとよく似た名前の別の歌もたくさん出てきます。「アラン」ではなく、「アレン」(バーバラ・アン)とか「ボニー・バーバラ・アラン」とか。それらはハイドン編曲とはメロディーも違います。まったく別物?のようです。

でも、2つだけ、このハイドン編曲と同じメロディーの歌を見つけました。1つはスコットランド生まれ、カナダで活躍する歌手による歌でした。 もう1つは日本で活動する古楽グループによる歌と演奏でした。その2つの詩はハイドン編曲とは違います。旋律だけが共通です。

 

ハイドン編曲で使われている詩の作者はSir Gilbert Elliot of Mintoとなっています。詩の主人公で実在した軍人ジェームズ・ガーディナー Colonel James Gardinerを追悼して作られた詩です。ガーディナーは、スコットランド生まれのイギリス軍大佐です。1745年の反乱で敵方であるジャコバイト勢力に討たれて死にます。

詩を正確に読み解くことはわたしには難しいのですが、家にいる娘が真夜中に戦場にいる父の死を察して(予知夢?)ショックに陥る場面だと、わたしは理解しています。

メロディーは短調で暗く悲劇的です。ヴァイオリンとチェロの音色が切ないです。あの雰囲気は、弦楽器が作ってくれるのです。ピアノだけでは出せません。

 

Jenny's Bawbee

音楽旅のブログ記事でも触れましたが、楽しい歌です。タイトルでYouTube検索すると、バグパイプの演奏が出てきます。詩の内容は・・・ごめんなさい。分かりません。詩テキスト内の脚注も多いのだけど、それでも分かりません。これが一番スコットランド語に近い詩なのかもしれません。ドイツ語の方が分かりそうです。(でもやっぱり無理)

ただ、とにかくギュラさんの歌い方が面白すぎるのです。女の子の喋り方を真似たような歌いっぷり。上手い。上手すぎる・・・

この曲を音楽祭で歌う前に、ギュラさんは聴衆に話しかけました。そして詩のドイツ語訳を読み上げました。読み方がまた上手いのです。舞台役者のようです。才能豊かな人です。お客さんも大うけ。(ああ、でもわたしはドイツ語があまり分からなくて悲しかった・・・)

 

またあの歌声を聴く機会がありますように!

ギュラさん、来日お待ちしています! 

 

 北ドイツの音楽祭の記事

www.music-szk.com

 

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