2018年10月9日 コリヤ・ブラッハー ヴァイオリン・リサイタル

トッパンホール  Toppan Hall

ベートーヴェン
 ヴァイオリン・ソナタ 第3番 変ホ長調 Op.12-3

ショスタコーヴィチ
 ヴァイオリン・ソナタ Op.134

フランク
 ヴァイオリン・ソナタ イ長調

ワイル(フレンケル編)
 舞台音楽「三文オペラ」より

ガーシュウィン(ハイフェッツ編)
 歌劇「ポーギーとベス」より
 「なんでもそうとは限らない」
 「べス、お前は俺のものだ」

 

ヴァイオリン
コリヤ・ブラッハー  Kolja Blacher

ピアノ
オズガー・アイディン  Özgür Aydin 

 

ヴァイオリニストのコリヤ・ブラッハーは、旧ブログ時代に読んでいた超お気に入りブログで知った奏者。わたしは好きなヴァイオリニストがいない状態が長かった。今ならブラッハーさんの名前を挙げる。でも、結局のところあまりヴァイオリニストを知らないわたしが彼の名を好きなヴァイオリニストとして出していいのだろうか・・・なんて少し思う。

 

今回のわたしの目当てはショスタコーヴィチ!2016年のリサイタルでサインをもらったCDに入っている曲。

クルト・ワイルとガーシュインまで入っているプログラムは珍しい。しかし、なぜベートーヴェンとセザール・フランクが入っているのかは謎。

 

ベートーヴェンの3番はあまり好きな曲ではなかったが、生演奏で聴くと急に良い曲のように思えてきた。わたしはやはり生演奏に影響される人間だ。ただ、それでも、今回のプログラムにベートーヴェンは本当に必要だったのだろうかと思ってしまう。

 

そして、メインのショスタコーヴィチ!!

出だしのピアノからショスタコ色が薫る。ショスタコーヴィチが好きだと認識してから数年。いまだに交響曲はほとんど聴いていない。ショスタコと言えば、室内楽、ソロ、デュオこそ魅力的だと思う。そして、ショスタコーヴィチをブラッハーさんのヴァイオリンで、生演奏で聴けるなんて、これはかなり幸運だ。

わたしは狂ったような演奏は求めていない。でも、「やりすぎ」のギリギリ手前のスリリングな演奏を聴きたい。「やりすぎ」のラインは人それぞれ違うのだろう。わたしにとっては、ブラッハーさんの演奏が理想的なスリリングさなのだ。ああ、チケット購入が遅かったせいで、今回は後方の席だったのだが、この曲は、本当は最前列で聴きたかったなぁ。

全3楽章すべて凄かったのだが、ヴァイオリンもピアノも第2楽章が最高に洗練されていたと思う。それから、第3楽章のヴァイオリンのソロ部分。メインの音の陰に一貫して乱れの無い波打つ音がサラサラ聴こえる。

程よく脚を開いて踏ん張って立ちながら演奏するブラッハーさんの姿と、しなやかな右手首をうっとりしながら眺めてしまった。

来て良かった。メインが終わってしまった。ふぅ。

 

後半プログラム最初のセザール・フランク。これがプログラムに入っているのは謎。もちろん名曲で、名演奏だったのだが、それ以上でもそれ以下でもなく。本当に素晴らしい演奏だったのだけど。感動的な名曲で感動させるのは意外と難しいのだろうと思った。

しかし、続くクルト・ワイルの「三文オペラ」の曲が微妙な空気を一気に吹き飛ばした!ヨーロッパかどこかの居酒屋で聴く音楽だ。クレズマー音楽(ユダヤ)かロマ音楽(ジプシー)のような感じ。新しいテーマや新しい変奏に入るたびに、誰にでもはっきり分かるぐらいガラリと音色を変えたブラッハーさんが素敵。うまい。高音は口笛の達人が口笛を吹いているような、やけに澄んだ不思議な音。

この曲はブラッハーの父、作曲家のボリス・ブラッハーの作品がメインのCDに入っていて、実はけっこう気に入って聴き込んでいた。

ドイツ生まれの作曲家クルト・ワイルはナチスドイツを逃れてアメリカに移り住んだ。

最後はガーシュインの「ポーギーとベス」から、短い曲を2曲。終わりの曲など、絶対ブラッハーさん楽しんでノリノリで弾いていたと思う。顔の表情は変わらないけど、音の鳴らし方と動きから伝わる。こんな曲で軽快にサラっとプログラムを締め括ったことは、意外だが、なかなかカッコイイ終わり方だった。

ピアニストのオズガー・アイディンさんも楽しそうだった。演奏後、拍手の中、ブラッハーと何やら喋っている様子だが、何を言っているかは分からない。アイディンさんはトルコ生まれでアメリカに行ったのかと思ったら、そうではなく、トルコ出身の両親のもとアメリカに生まれて、音楽の勉強でトルコ、イギリス、ドイツに行ったそうだ。ドイツではケマーリングに師事。ケマーリングの弟子は多い。あのピアニストも、あのピアニストも・・・

 

アンコールはベートーヴェンの「春」から第3楽章。この短くて軽快な楽章は、ガーシュインの後に聴いても違和感なく楽しめる。

 

プログラムにベートーヴェンとフランクが入っていることに疑問を感じたのはわたしだけだろうか?気にするべきではないのかもしれない。でも、何となく主催者からの指示で入れた曲のような気がしてしまう。プログラムは演奏者が自由に決めたのだろうか?それとも?そういえば、2016年のプログラムも、有名な人気曲リヒャルト・シュトラウスのヴァイオリン・ソナタと、それからベートーヴェンの中から1曲が含まれていた。

今回のプログラムは直前に韓国と台湾でも演奏したもよう。

リサイタルに限らず、オーケストラのプログラムでも、いったい誰がプログラムを決定したのか、どういう条件が与えられたのか、いつも気になるところ。相談することで、より良いプログラムになることもあるのだろうけど、独自の魅力的なプログラムを用意できる演奏者には自由にプログラムを決めていただきたい。

いずれにしても、どうやってプログラムが決定したのか、なかなか知る方法がないのが残念だ。サイン会で直接ご本人さまに訊ねてみるしかないのだから。

 

今回のプログラムなら、たとえばベートーヴェンとフランクの代わりに、もう1曲ショスタコーヴィチ、それからヴァインベルクとか、どうだろう。あるいはバルトークとか。ボリス・ブラッハーの曲もありかも。余計なお世話だろうか・・・? ショスタコ、クルト・ワイル、ガーシュインが面白い組合せだからこそ、他の曲もその流れに合わせると、より濃いプログラムになったのではと思うのだが・・・

 

最近ブラッハーさんが世界各地でどのようなプログラムのリサイタルを演奏しているか、調べてみたのだが、ブラッハーさんはリサイタルよりオーケストラと一緒に協奏曲を演奏することが多いようで、あまり情報は見当たらない。

唯一見つけたのはソロではなく室内楽のプログラムなのだが、面白そうだった。

ドイツのエルプフィルハーモニー(ハンブルク)での2018年6月の演奏。

Kolja Blacher Violine

Özgür Aydin Klavier

Jens Peter Maintz Violoncello

Raymond Curfs Schlagwerk

Claudio Estay Schlagwerk

Mark Haeldermans Schlagwerk

 

Sergej Prokofjew

Sonate Nr. 1 f-Moll op. 80 für Violine und Klavier

Dmitri Schostakowitsch

Suite für Varieté-Orchester / Bearbeitung: Oriol Cruixent

Dmitri Schostakowitsch

Sinfonie Nr. 15 A-Dur op. 141 / Bearbeitung: Viktor Derevianko

 

プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタの他はショスタコーヴィチのオーケストラ曲(ジャズ組曲、交響曲第15番)の室内楽版。開演前には革命期の芸術文化に関するトークショーがあったらしい。おそらくホール側の意向によるプログラム?でも、面白そう。知識や興味範囲を広げてくれる企画。いいなぁ。音楽だけを聴きたい人は、トークショーの時間はロビーで寛いでいればいい。それに、今日のショスタコーヴィチの演奏から判断するに、ブラッハーもアイディンも、このエルプフィルでの演奏も凄かったのだろうなと想像してしまう。いいなぁ。

 

旧スズキブログ名物のコンサート感想速報、復活か?

気が向いたときだけ書こうと思う。

 


BERNSTEIN "Serenade" // Blacher // Württembergisches Kammerorchester Heilbronn (CD Trailer)

 

ブラッハー ショスタコーヴィチ&ヴァインベルク
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ボリス・ブラッハー、クルト・ワイル他 作曲作品
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