クラシック音楽を聴くと頭が良い子になるか? なりません!! だけど・・・

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クラシック音楽鑑賞歴10年超のスズキは、クラシック音楽を子どもに聴かせるだけで頭が良い子になるかどうかという質問に対しては、「いいえ、なりません」と回答する。

せいぜい脳がリラックスしてストレスを取り除き、勉強等に集中できるとか、その程度のことである。それを「頭が良くなる」と表現するのは大袈裟だと思う。英語の音声を聴き続けるだけで英語ペラペラになるというのと似たような胡散臭い話に思えてしまう。

 

一方で、クラシック音楽を聴き流すだけでなく、その曲に惹かれ、さらにもし曲の詳細、内容、背景に関心を持つようになったら、その子は幅広い教養のある知的な人間になるかもしれない。好奇心こそ知性を育てる最大の要素。

せっかくクラシック音楽を聴かせるなら、子どもたちをそういう方向に導いていけるようにしたい。おそらく、子どもが本格的に興味を持つのは10年後、20年後。そのときのため、様々な願いを込め、ただのBGMではなく、何かもっと意味のある音楽をプレゼントしよう。

 

クラシック音楽に興味を持てば、頭が良くなるかもしれない・・・それは何故か?

 

クラシック音楽が西洋の複雑な歴史文化と関わりの強いものだから

神話や宗教に関する曲、文学や哲学に影響を受けた作曲家。好きな音楽についてもっと知りたいと思ったわたしは突然挫折。ヨーロッパの歴史や文化は複雑で、本を数冊読めばOKという生易しいものではない。神話、宗教、文学、哲学、思想、政治、社会、民族、芸術・・・様々なものが絡み合って成り立っている。

遠く離れた日本のわたしたちにとっては完全に違う世界の話であり、自力で理解しようとするなら気の遠くなりそうな学習となる。

そのような世界に、比較的早いうちに興味を持ち、読める本から少しずつ読み始めていくのは良いこと。クラシック音楽はそのきっかけの1つ。

 

異文化理解、多民族共生を考える

欧米化が進んだと言っても、ヨーロッパ文化は今でも日本にとって異文化である。ヨーロッパの文化であるクラシック音楽の内容や背景を知ろうとする行為は、日本とは違う価値観や考え方を知ろうとする行為と同じと言える。違う文化を知ろうと努力することにより、自分の文化を客観的に見ることもできるようになる。

また、日本でも近年外国人が増えてきたが、ヨーロッパは多民族社会の先輩である。古くから民族同士が争い合い、多くの犠牲者を出してきた過去があり、多くの芸術家も巻き込まれて命を落とした。ヨーロッパは今も様々な問題を抱えている。ですから、良い例として見習うという意味ではなく、過去の悲劇を知り、同じことを繰り返さないようにする。それでも、辛い経験を乗り越えてきたヨーロッパには良い面も沢山あるので、そこはもちろん参考にすべき。

 

外国語に興味を持つ

何でも日本語で情報を得られることは幸運である。世界の小国の中には母国語での資料が限られている場合が多い。

それでも、クラシック音楽関連の情報を探していくと、いずれ情報の行き詰まりを感じる。こうして外国語の情報を読みたくなる。まずは英語で。それでも物足りなくなったらGoogle翻訳でさらに多言語を解読。

また、歌曲やオペラを鑑賞するようになると、イタリア語やドイツ語などのオリジナルの言語を知りたいし、原語で歌えるようになりたいと思う。こうなるとGoogle翻訳では対応できない。自ら学習しなければならない。

いずれにしろ、ヨーロッパの歴史文化と同じく、言語を学ぶというのも非常に根気の要る学習であり、クラシック音楽はそのモチベーションの1つ。

 

社会に興味を持つ

作曲家は、リラックスやエンタメのために作曲していたのではない。そういうタイプの曲ももちろんあるのだが、作曲家はもっと社会的な使命感をもってシリアスに作曲していた。世の中の悲しい出来事に心を痛めたり、激昂したり、悪くなっていく政治を間接的に批判する作品を作ったり。「気軽に聴きに来てください!」とコンサートチラシによく書かれているが、作曲家は気軽にではなく真剣に聴いて欲しいはず。

一時期、一部の国で表現の自由が大幅に制限されていたとき、作曲家は苦しい立場に陥った。本当にやりたいことをやらせてもらえず、自分の意志に反して政府に利用されることも。亡命した作曲家もいた。それだけ作曲家は社会と繋がりが強かった。

クラシック音楽は、そんな作曲家の想いに心を寄せながら当時のヨーロッパを知ると同時に、現代の社会(ヨーロッパ、日本に限らず、世界全体)にも関心を持つきっかけとなる。

 

生き方、人間を知る

作曲家のドラマチックな人生を調べるのもおもしろい。演奏家の人生も興味深い。作曲家や演奏家と違い、わたしは天才でも何でもないが、彼らを人生の先輩のように思っている。天才も凡人も同じように悩みを抱えながら生きている。

シリアスな話ばかりではない。時には作曲家や演奏家のユニークで個性的な人生を知りニヤリとする。

 

 

あなたはクラシック音楽をBGMとしか思っていないのかもしれないが、ご覧の通り、本来クラシック音楽はBGMや癒し音楽などではない。音楽の背後に重い巨大な物がある。人間の生き様、それから社会と歴史。わたし自身、クラシック音楽を通して興味を広げてきた。学校の教科書には何も書かれていない、ヨーロッパの本当の歴史や文化に数歩だけ近付くことができた。

 

CDの選択 子どもにクラシック音楽に興味を持ってもらうためには

焦ってはいけない。いくら何でも、3歳とか5歳の子どもが家で聴いた音楽がきっかけで突然「宗教改革」の本が読みたいとか「ショーペンハウアー」(哲学者)の本が読みたいとか言い始めることはない。それはあくまで10年後か20年後の話。

 

「頭の良くなる・・・」「リラックス・・・」「はじめてクラシック・・・」「子ども向け・・・」など、寄せ集めの曲を収録したCDは避ける

1番手っ取り早いCDは1番避けるべき(笑)絶対にオススメしない!

このようなCDは無難な定番曲をランダムに並べただけであり、何度聴いても、曲に興味を持つことなく、永遠にBGMとして楽しむだけで終わってしまう。

交響曲第1番というのは、第1楽章、第2楽章、第3楽章、第4楽章すべて合わせて1曲なのに、寄せ集めCDでは第2楽章だけ、あるいは第1楽章だけなど、抜粋でしか聴けない。それは芸術の一部を切り取って継ぎ接ぎするようなもので、残念な聴き方である。

また、通常CDは1枚を通して同じ演奏者が演奏する。寄せ集めCDでは1曲ごとに演奏者が違う。それでは演奏者に惚れ込むということは、あまり起こらないと思われる。演奏者に興味を持つことは、クラシック音楽そのものに興味を持つことの大きなきっかけの1つとなり得るのに、もったいない。

 

CDジャケット、ダウンロード画像など、視覚に訴えるものを利用する

ステキなピアニスト、威厳ある指揮者、ヨーロッパの見たことも無い景色など、視覚に訴えるものは子どもの想像力を刺激する。いまは一般的にはダウンロードが主流ではあるが、曲名と演奏者名のテキストだけでは印象に残らないだろう。スマホ画面の小さなダウンロード画像も物足りない。イメージが広がる画像を見せてあげたい。子どもは音楽と画像や写真を一緒に記憶するはず。CDではなくDVDや演奏動画なども良いと思う。

 

具体的に・・・

クラシック音楽は何千何万も曲がある。皆さんが思っている以上に膨大な世界である。10年聴き続けているわたしがまだ知らない曲がたくさんある。そういう世界だ。

個人的には、子どもに聴かせてはいけない曲などないと思う。子ども一人ひとり好みが違う。シューベルトの歌曲「魔王」を聴いて、「こわいようー」と泣いてしまう子もいれば、「カッコイイ」と思う子もいる。好みに合う曲を周りの大人が見つけてあげることができれば、その子がクラシック音楽の世界に興味を持つ可能性も高くなる。

曲について、誰かが子どもに簡単に解説できれば良いのだが、そうでなくとも、「今日は○○○のピアノソナタを聴こうね」など、作曲家と曲名だけでも認識できるようにしてあげると良い。「クラシック音楽聴こうね」「頭が良くなる音楽聴こうね」では、興味を持つきっかけにならない。

スズキさんのオススメはどのCDか。オススメはない。選択肢は無数ある。一人ひとりに合った選択が一番。それはご自身でがんばって探していただくしかない。まずは幅広く、様子を見て絞ってみる。それからまた少し広げてみる。

以下はオススメではなく、ただのわたしの個人的な好みに合うCDをいくつか挙げる。ご参考までに。

 

ボザール・トリオ

ドヴォルザーク ピアノ三重奏曲

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諸事情でチェコの歴史を調べているのだが、吐き気がするほど残酷な場面が何度もあった。チェコの街は美しい。しかし、すべての芸術に、それが存在するに至った背景がある。つまり、暗黒の時代が美しい街を作った。そんな皮肉な事実を改めて想う。

美しい街で「インスタ映え」を喜ぶだけの無邪気な観光客には何となく近寄りたくないと思った。

チェコ出身の作曲家ドヴォルザークの作品。チェコの歴史はいろいろあったが、これはステキな音楽。民族音楽的な雰囲気もたっぷり。

歴史は後で知ればいい。まずはチェコという国があることを知り、興味を持つだけで。

ボザール・トリオは長年の活動を終えて2008年に解散したが、ピアニスト、メナヘム・プレスラーは94歳の今も現役ピアニストとして活動している。彼はドイツに生まれたユダヤ系で、ナチスドイツを逃れてイスラエルに行き、アメリカをはじめ世界各地で演奏。以前読んだプレスラーの伝記的内容の本も興味深い。移住に関するセンシティブな話も。

今月の来日は健康上の理由でキャンセルになっている。心配だ。無理させないでいただきたい。

 

ヴェルディ オペラ「椿姫」

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娼婦の話ではあるが、そんなことは子どもは知らなくていい。後で知ればいい。ただ、音楽は魅力的だからきっと印象に残る。闘牛士の踊りとか、パーティーの場面も好き。

いつか大人になったとき、作品の背景を知るといい。当時のパリでヴィオレッタのような女性がどう扱われていたか、また、作曲家ヴェルディが何故この作品をオペラにしたいと思ったのか、彼が置かれていた状況について。人が誰かを幸せにすること、人間の弱さ、短い幸せ、世間の冷たさ・・・・(涙)

ヒロインを歌うマリア・カラスについてもいずれ興味を持つだろう。1923年にアメリカのギリシャ系の家庭に生まれて、ギリシャに渡り・・・

 

シューベルト歌曲集

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シューベルトはわたしの好きな作曲家。わたしが最初に惚れ込んだのは数百曲もある歌曲のうちの定番の3曲。このCDに含まれているので聴いてみていただければ幸い。

Ganymed「ガニュメート」(詩:ゲーテ、ギリシャ神話のガニュメデス)

Auf dem Wasser zu singen「水の上で歌う」

Gretchen am Spinnrade「糸を紡ぐグレートヒェン」(詩:ゲーテ、戯曲「ファウスト第一部」より)

 

 

小さな希望

現代のお子さまたちに、わたしのような人間になって欲しくない。

大人になってからクラシック音楽に目覚めたスズキは中途半端なヨーロッパかぶれになってしまった。いまさら一生懸命勉強してもヨーロッパの歴史が断片的にしか頭に入らない。哲学に影響を受けた作曲家が多いのでもっと哲学を知りたいのに、頭が悪くて哲学書を読めない。ドイツ歌曲を堪能するためにもドイツ語学習を継続しているが、成長なし。おまけに日本が居心地悪くてヨーロッパに逃げたいが、食べていく手段もないから日本で悶々と生きている。(どっからどう見てもダメな人ではないか・・・)

諸事情でいまチェコの歴史を調べ直しているのだが、思った以上に複雑で、ドイツとの微妙な関係などに何を言っていいやら。ヨーロッパでは今でも隣国同士が過去のしがらみを抱えている。思うのだが、遠く離れた日本の我々だからこそ、偏りなくヨーロッパ全体の歴史や文化を見ることが可能なのかもしれない。

 

現代のお子さまたちが、早いうちに難しくて複雑なヨーロッパという異文化を知り、続いて他の国地域についても知り、客観的に日本の良さも知り、バランスの取れた未来の地球人として生きていけますように。

未来が過去や現在より平和でありますように。

 

 

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