カウンターテノール歌手こそクラシック音楽界の救世主だ! 彼らの強烈な魅力を解剖

カウンターテノール歌手は、女性のように高い声で歌う男性歌手のこと。

まずは、論より証拠。ズラリとYouTube動画を並べてみた。さあ!遠慮なく彼らの魅力を体験していただこう!

 

記事の途中ですが、後日談もどうぞ

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ヤクブ・ヨゼフ・オルリンスキ
Jakub Józef Orliński 1990年 ポーランド 生まれ


Vivaldi : il Giustino, "Vedro con mio diletto" par Jakub Józef Orliński (contre-ténor)

今、カウンターテノール界でもっとも目立っているのは、たぶん彼でしょう。この強烈な魅力にあっという間に取り憑かれる人が世界各地で続出中。誰かが動画のコメントで「ダヴィデ像が歌っているみたい」と書いていたが、確かにそう見える。古代ローマの芸術と通じる雰囲気を持つ男、オルリンスキ。

一方で、下の動画のとおり、彼はブレイクダンサーでもある。(はい、動画再生!)


Inner Voice - Jakub Józef Orliński (direction: Andiamo)

 

フィリップ・ジャルスキー
Philippe Jaroussky 1978年 フランス生まれ

スズキブログでは何度か取り上げている(過去記事リンク)。間違いなく現代を代表するカウンターテノール歌手。ああ、でも、彼を紹介する魅力的な動画がもっとあればいいのになぁ。上のオルリンスキのプロモーション風ビデオみたいな、1クリックで魅力がすべて伝わるような動画は、残念ながら無さそうだ。でも、過去に来日しているので日本にもジャルスキーファンは沢山いる。

「ジャルスキー」という苗字の裏に隠された仰天エピソードはスズキブログ過去記事で。

下の動画はオランダで上演されたフィンランドの現代作曲家サーリアホのオペラ作品。妖しげな美しさにうっとり!


Philippe Jaroussky in Kaija Saariahos Only the Sound Remains

祝!久しぶりの来日

ジャルスキー、久しぶりの来日公演のチケット販売中

2020年3月13日(金)19:00 オペラシティコンサートホール(新宿初台)

>>>このコンサートのチケットを買う(チケットぴあ) icon

 

 

カンミン・ジャスティン・キム

Kangmin Justin Kim 韓国生まれ シカゴ育ち

ちょっと前の記事でも取り上げた今後期待大の歌手。ロンドンの名門ロイヤル・オペラ・ハウスで男性歌手がケルビーノを歌ったのは初だったらしい。大抜擢だったのね。おめでとう! 再掲になるが、彼の憧れ、チェチーリア・バルトリを真似た「キムチーリア」バルトリをお楽しみいただきたい。


#Pride - How drag and opera have influenced Kangmin Justin Kim's performance

 

ヴィンツェンツォ・カペッツート
Vincenzo Capezzuto  イタリア生まれ

古楽アンサンブルのラルペッジャータの記事でも紹介したが、彼もまた独特の雰囲気を持つ魅力的なカウンターテノール歌手。彼も踊る人なのだ。そしてオフィシャルHPによると、実はダンサーの方が本業らしい。知らなかった。この動画は、ラルペッジャータの愉快な定番アンコール。いつか生演奏で聴きたい。。


L'Arpeggiata - Christina Pluhar: ZYGEL ACADEMIE Pizzica di San Vito

 

ヴァレア・サバドゥス
Valer Sabadus 1986年 ルーマニア生まれ ドイツ育ち

今年、古楽アンサンブルのコンチェルトケルンと一緒に来日したのだが、どんな演奏(歌声)だったのだろう? 気になる。やっぱりお客さんは、あっという間に惚れ込んでしまったのかな?

オーストリアの音楽祭シューベルティアーデで名前を知ったのだが、まだ生歌を聴いたことはない。 以前もちらっと触れたがルーマニア生まれでドイツ育ちという点がわたしの好きなピアニストの1人と同じ。


Pergolèse : Stabat Mater - Valer Barna Sabadus chante Hasse

 

アンドレアス・ショル
Andreas Scholl 1967年 ドイツ生まれ

この動画は、オランダではなく、スイスのバッハ協会のYouTubeチャンネルで数日前にアップされたものなのだが、凄まじく良かった! 彼もまたオーストリアの音楽祭シューベルティアーデで知った名前だが、生演奏はまだ聴けてない。


J.S. Bach - Andreas Scholl sings cantata BWV 170 "Vergnügte Ruh" (J.S. Bach Foundation)

 

海外の歌手ばかり贔屓して申し訳ないが、素敵なカウンターテノール歌手は日本にもいる。パッと名前が浮かぶ歌手は、藤木大地さん、彌勒忠史さん。コンサートの予定を調べて、ぜひ生歌をお楽しみいただきたい。それから、「もののけ姫」の歌を歌った米良美一さんもカウンターテノール歌手。

 

女性のような高い声で歌う大人の男性歌手と言えば、バロック時代は「カストラート」と呼ばれる歌手たちが大人気だった。それこそ、ピアニストのフランツ・リストの全盛期のように、女性ファンたちが失神するほどの凄まじい人気を誇ったらしい。

「カストラート」は、「去勢手術」により、男性としての成長(性徴?)を止めることで、声変わり前の声質を保つことに成功した歌手たち。バロック時代の医療衛生は、良いとは言えない状況だったので、「手術」で命を落とした男性たちも沢山いたという。でも、手術が成功して少年のような高い声をキープできるようになったら、各地のオペラ劇場で大活躍してガッポリ稼ぐことが可能で、女性たちにもモテまくったというのだから、一攫千金を狙って挑戦してみた人々も多かったのだろう。(スズキ作成、人気カストラート歌手と撮った写真をインスタもどきにアップしたバロック時代のフルート奏者の図はこちら→リンク

 一方、現代ではそのような非人道的な「手術」を行うなんてありえない。

でも、カストラート歌手には及ばないかもしれないが、裏声で歌う男性歌手、カウンターテノールたちの人気もかなり凄いのだ。

上の動画を再生してくれたかな?

ご覧いただいたとおり、説明など何もいらない。

歌声も人間性も魅力的な彼らは、間違いなくクラシック音楽ファンの枠を超えて注目を集めている。

 

説明など不要なのだが、ここでスズキ的に彼らの魅力を簡単に分析してみたい。

 

カウンターテノール歌手の魅力の秘密1★ 男性 女性 いいとこ取り

女性的な魅力と男性的な魅力を両方持っている。

男性と女性を混ぜ合わせた「中性的」な魅力だと言う人もいるだろうけど、わたしは少し違うと思う。

男性的な部分は男性的なまま、女性的な部分も持っているのがカウンターテノール歌手。音域は女性的だが、肉体は男性的。でも、女性的なしなやかな動きもできる。また、声のボリュームや深さには男性的な部分も感じる。

 

カウンターテノール歌手の魅力の秘密2★人間的な魅力

歌の上手さだけではない、総合的な魅力に溢れている。

ほとんど例外なく、彼らは演技が上手。体の動きだけでなく、表情や目力も自由自在。効果的でインパクトのあるパフォーマンスを見せるために、彼らは非常によく作品やその時代について研究している。身体の使い方、可能性も探っている。彼らは歌曲や歌付のオーケストラ作品でも歌っているが、オペラで歌うことも多い。舞台上で自分がどう見えるかも、意識していると思う。美的なものに関心を持っている。つまり、カウンターテノール歌手は、エンタメ的であると同時に、芸術的であり、知的でもある。

研究熱心で頭が良く、人柄も優れているので、古楽アンサンブルの指揮者に転向するカウンターテノール歌手もいる。たとえば、多くの有名な古楽アンサンブルで指揮するルネ・ヤーコプス、それから、「ピグマリオン」の指揮者ラファエル・ピションは、カウンターテノール歌手でもある。

ピアニスト(チェンバロ奏者、オルガン奏者)兼指揮者、ヴァイオリンなど弦楽器奏者兼指揮者という人は結構いる。でも、歌手で指揮者というのは珍しい。カウンターテノール歌手ぐらいかも?

 

カウンターテノール歌手の魅力の秘密3★音楽の喜びが溢れている!!

子どものときから「カウンターテノール」を目指した人は、あまりいないだろう。多くのカウンターテノール歌手は、もともと楽器を演奏していたり、テノール歌手を目指して勉強していたり、別の道を歩んでいた。その過程で、何らかのキッカケで、自分が女性のような声で安定して歌えることを発見したのだろう。まさに天職を発見したような感動的な瞬間だったはず!

自分の道を発見して、夢中になってその道を突き進んできたという、大きな喜びを、彼らの歌声には感じる。

ギラギラ輝いている。あの堂々とした歌いっぷりに、コロっと恋に落ちる人も多い。 

 

 

 

さて、カウンターテノール歌手に興味を持ってしまったアナタは、今からヘンデル作曲のオペラ「アグリッピナ」を鑑賞しよう。これも最近お気に入りのOperaVisionで公開されているヨーロッパでのオペラ上演。

アグリッピーナという古代ローマの人物をご存知だろうか?

暴君ネロの母上だ! 息子ネロを皇帝にするために暗躍した女性。ほらね、おもしろそうでしょう!

この作品では、カウンターテノール歌手が何人も登場する。ヘンデルが生きていた時代には、おそらく「カストラート」歌手たちが歌ったのだろう。

バロックオペラの 意味不明な おもしろいところは、登場人物の性別に関係なく、歌手が指定されているところ。たとえば、ポッペアの夫であるオットーネは、もちろん男性なのだが、「コントラルト」と呼ばれる、最も低いの音域を歌う女性歌手が歌うように指定されている。ただし、下の動画では男性カウンターテノール歌手が歌っている。そして、男性であるネロを歌うのは、「カストラート」つまり女性のように高い声で歌う男性だ。下の動画では男性カウンターテノール歌手が歌っている。

あらすじはよく知らないが、最後まで楽しかった!

ヘンデルという作曲家を見直した!

何も知らないまま3時間近く飽きずに聴けるのは、魅力溢れるカウンターテノール歌手たちが出ているからなのではと、スズキは思ったのだった。

(動画の公開は2019年6月12日から6ヶ月)


AGRIPPINA Handel - The Grange Festival

 

 

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