ベートーヴェン作曲のオペラ「フィデリオ」で学ぶドイツ語講座

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ドイツ語学習者の皆さんへ!

もし、ここに挙げられたドイツ語の単語やフレーズにビビビと来たら、アナタはドイツ語オペラの世界に向いているかもしれませんよ。こわくないから、こっちの世界においで!!

 

受講者の皆さんへ!

この講座を担当するスズキ先生です。

こわくないですよ。ニッコリ!よろしくね。

この講座は真面目にコツコツ学習する講座ではありません。クラシック音楽作品に出てくるドイツ語の単語やフレーズをスズキが適当に選んで適当にコメントするだけです。(え?そんなの「講座」ではない?)

今回はベートーヴェン作曲のオペラ「フィデリオ」を取り上げます。原作はフランスの劇作家ジャン=ニコラ・ブイイ。ドイツ語のリブレット(台本)はゾンライトナー&トライチュケ。

 

カタカナの発音は参考程度にして、正確な発音は他のサイトで確認しましょう。

Google翻訳にも音声ボタンがあります。スピーカーのマークをクリック。

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スズキブログ カテゴリー 音楽作品で学ぶドイツ語講座

 

ところで、わたしが利用しているYouTubeのドイツ語学習者向け番組 Easy German では、ドイツ語の名詞とその性をセットで覚えることが大事だと説いています。


How to learn a word's gender in German

つまり、「本」= Buch は中性名詞なので、 das Buch と、名詞の性の冠詞(英語のthe)と一緒に覚えるべきということです。

ドイツ語の冠詞は、英語のtheとは違い、文の中で変化していきます。das Buchの場合、主語として使うならdas Buch、「~の」はdes Buches、「~に」はdem Buch、「~へ」はdas Buchというように。この変化を「格変化」といいます。

つまり、その名詞が男性名詞、女性名詞、中性名詞のどれに該当するかということが分からないと、文章を作ることができないのです。

でも、スズキブログのクラシック音楽で学ぶドイツ語講座は、オペラや歌曲を楽しむための講座なので、文章を作ることを目的としていません。この講座では引き続き、名詞の性をあまり気にしないでドイツ語を紹介していく方針です。(ただしスズキ個人はもっと頑張って名詞の性を覚えないとね・・・)

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毎度のことですが前置きが長くてゴメンなさい。

 

Ich habe zum Weib dich gewählet.

イヒ ハベ ツム ヴァイブ ディヒ ゲヴェーレト

「オレは、君を妻に選んだ。」

ich イヒ わたしは

dich ディヒ あなたを

Weib ヴァイブ  英語の wife

gewählet ゲヴェーレト は 「選ぶ」という意味の動詞wählen ヴェーレンの過去分詞(通常はgewählt)。

zum は zu demの略 (英語にすると to the) 

英語に変換して、順番を一部入れ替えて、微調整すれば、ほら、すんなり分かる。

Ich habe zum Weib dich gewählet.

I have chosen you "to the" (→ "as a" → "as my") wife. 

これは、マルツェリーネを妻にしたい門番ヤキーノのセリフ。彼は彼女からの Jaword を待っている。

Jaword

ヤーヴォルト

「"はい"という言葉」

Ja = 「はい」英語のyes

Word = 「言葉」英語のword

知らない単語ではあるが、意味は簡単に想像できる。ヤキーノはマルツェリーネに結婚の申し込みをしたから、「はい」の返事を待っている。でもマルツェリーネは「はい」と言わずにスルーする。

Das ist ja doch klar.

ダスイスト ヤー ドフ クラー

「ええ、よく分かってますよ。」

マルツェリーネは、「イェス」でも「ノー」でもなく「おっしゃることは、よく分かりますわよ」とだけ応える。どうでもいいけど、わたしはドイツ語の「クラー klar」という響きがけっこう好きだったりする。英語の「クリア clear」よりスッキリ清涼感がある(笑)。

ドイツ語でたくさん説明を受けたあとで、「大丈夫?わかった?」と言われたら、自信満々にこう返すのだ。「アレス クラァー!」Alles klar! (了解!全部OKよ!)

Pochen

ポヘン

「(何かがトントン鳴る音)」

オペラや歌曲でよく出てくるのは、動揺してドキドキ心臓が鳴ることをpochenという動詞で表現する。

でも、今回、この場面では「ノックの音」という名詞として使われている。門番ヤキーノはマルツェリーネに「ヤーヴォルト」を言ってもらおうと説得しているのに、お客さんが来てしまったので門を開けに行かなければならない。

というわけで、ノックする音もドキドキ感も同じ単語で表現するということを覚えておこう。

Jetzt, morgen und immer, nein, nein, nein ...

イェツト、モルゲン、ウント インマー、ナイン、ナイン、ナイン・・・

「今でも、明日でも、いつでも "No" だもんね "No! No! No!..."

しつこいヤキーノにイラっとするマルツェリーネ。返事なんか、いつだって、同じよ。「ノー」に決まってるじゃない。ふん(怒)。という感じ。

morgen はGuten morgen グーテンモルゲン(おはよう)のように「朝」という意味で使われますが、「明日」という意味でも使われます。スペイン語も「朝」と「明日」は同じだったはず。日本語でも「朝」を「あした」と読むこともできるよね。

unaussprechlich

ウンアオススプレフリヒ

「言葉にできない」「言いようのない」

 この単語、このオペラを通して何度か出てくる。表現できないような喜びだったり、どう言っていいか分からないぐらいのショックだったり・・・

sprechen 「話す」動詞(英語のspeak)

aus 英語の out

un 否定

つまり 「speak out できない」 

マルツェリーネがフィデリオを想って歌う歌に出てくる単語です。

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Mir ist so wunderbar

ミア イスト ゾー ヴンダーバー

「わたしはとってもステキな気持ちよ!」

フィデリオが本当は女であることに気づかないマルツェリーネの妄想は止まりません(笑) うっとりしながら、もうすぐ訪れる幸せをイメージして歌っています。

自分の感情を述べるとき、ich (英語の I )ではなく mir (英語の me ) を使うことも、ドイツ語ではよくあります。

「寒いです」は Mir ist kalt ミア イスト カルト です。

Ich bin kalt イヒ ビン カルト と言ってしまうと、「自分は冷たい人間です」という意味になってしまいます。

同様に Mir ist langweilich ミア イスト ラングヴァイリヒ は「つまんない」と退屈さを訴えるときに言う言葉ですが、 Ich bin langweilich は「わたしはつまらない人間です」と自分を卑下していることになってしまいますので、気をつけましょうね。

Ich habe Mut

イヒ ハベ ムート

「わたしには勇気がある」「わたしは勇敢だ」

親方ロッコに気に入ってもらって、暗く底深い牢屋に長らく閉じ込められている「あの人」のところまで行く許可をもらわなければ!フィデリオ(レオノーレ)は、自分が勇気ある信頼できる男であると主張します。

Mut 「勇気」 もオペラや歌曲でよく見る単語です。イタリア語ならcoraggio コラッジオ ですね。これも好きな単語です。カッコいいわけではない、人間の弱さが言わせるセリフですから。

Du bebst?

ドゥー ベープスト

「おまえ、震えてるのか?」

Bist du ein Mann?

ビスト ドゥー アイン マン

「それでも男か?」

このちょっと前に、刑務所長ピツァロは憤慨して Morden モルデン(殺す) を連呼して騒ぎます。囚人一同、何か起こりそうな予感に怯えています。

刑務所長は看守ロッコに殺人をもちかけます。ロッコは、カネを握らされて一瞬よろこんだのだけど、命令内容を聞いて飛び上がってしまいました。カネのためとはいえ、人様の命を奪うなんて、それはわたしの仕事ではありませんと断りました。

beben 「揺れる」動詞 「地震」は「地球の揺れ」という意味のErdbeben

 

Ketten

ケッテン

「鎖」「チェーン」

Kerker

ケルカー

「牢獄」「刑務所」

こうしてまた良からぬ単語を覚えてしまう。。。

Ein Engel, Leonoren, der Gattin, so gleich

アイン エンゲル レオノーレン デア ガーティン ゾー グライヒ 

「天使、妻のレオノーレとそっくり」

地下の暗い牢屋に繋がれたフロレスタンは、妻と瓜二つの天使に解放される幻を見ます。妻をGattinと表現するのはヴァーグナーオペラでもありましたね。

gleich グライヒ は「同じ」英語の same あるいはequal です。「男女平等」の「平等」と言うときも使われる単語です。

「お元気で」「楽しい夜を」「良い週末を」などの返事として、「あなたもね」と言うときは Gleichfalls グライヒファルズ です。英語の you too あるいは same to you と同じです。

愛する妻のような天使が、拘束されているオレを、 Freiheit フライハイト(自由)に、そして himmlische Reich ヒムリシェ ライヒ (天国のような国)に導いてくれる。そんな妄想です。(でも、それが現実に!?)

Zurück!

ツリュック

「下がれ!」

これもオペラではお馴染みです。もう覚えましたよね?

下がれ!来るな!戻れ!

悪党ピツァロは、大臣の電撃訪問の前に、不当拘束の証拠隠滅のために、フロレスタンを消したい。ついにフロレスタンに剣を向けて危機一髪のその瞬間、墓掘り作業に借り出されていたフィデリオがフロレスタンの前に立つ。

「下がれ!まずはわたしから殺せ!彼の妻だ!」と名乗る。全員びっくり仰天(夫のフロレスタンさえも)

Geteilt hast du mit ihm das Leben,
So teile nun den Tod mit ihm.

ゲタイルト ハスト ドゥ ミト イーム ダス レーベン、ゾー タイルト ヌン デン トート ミト イーム

「一緒に人生を分かち合ってきたなら、じゃあ、死も一緒に分かち合え!」

酷い男ですね。ピツァロめ。。

細かい文法説明は省略。Geteilt は 動詞 teilen タイレン の過去分詞。意味は「分ける」英語のdivide あるいはshareに当たる。この単語を見て、思い出したドイツ語のフレーズがあるので紹介したい。

Geteilte Freude ist doppelte Freude

ゲタイルテ フロイデ イスト ドッペルテ フロイデ

英単語に置き換えてみると

divided  happiness is doubled happiness

なんとなく意味が分かるでしょう?

喜びは誰かと分け合うと2倍になるということですよ。(たまには良いことを言うスズキ)

 

ピツァロがフロレスタン&レオノーレ2人まとめて殺してしまおうとしたとき、大臣到着のラッパの音が高らかに鳴った!2人は救われたのだ!

O weh mir!

オー ヴェー ミア

「ああ!なんてこと!あたしかわいそう!」

ヴァーグナーオペラで連発される「ヴェー」は、「ああ!」「悲しい!」「ひどい!」「苦しい!」「痛い!」など、あらゆる苦痛を感じたときに思わず出る言葉なのだが、この作品ではこれ1回きりしか出てこない(たぶん)。ここで「ヴェー」を言っているのは誰でしょう?

この人です。好きな男が実は女だったということを知った瞬間に出た嘆きの一声(笑)

www.music-szk.com

この場面で、マルツェリーネにショックと悲しみのアリアを歌ってもらえば良かったのにと思うのだけど、すでに場面は歓喜のフィナーレに向かって一直線なので、悲劇的なアリアも滑稽な笑えるアリアも挿入しにくいのだ・・・

マルツェリーネさんは、白馬の王子様は諦めて、門番ヤキーノと一緒になればいいのですよ。ほら、彼は最大のライバルが現れても諦めずアナタを想ってくれていたのだから。

 

オペラ「フィデリオ」冒頭部分


Beethoven Fidelio

スズキより上手く演奏する自信がある?

じゃあ、無料楽譜を探して弾いてみよう!(Vocal Scoresというタブをクリック)

Fidelio, Op.72 (Beethoven, Ludwig van) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

 


FIDELIO L. v. Beethoven (Nikolaus Harnoncourt)


Kaufmann's dark take on Beethoven at Salzburg Festival - musica

 

この作品の微妙なところ・・・

フィデリオ - Wikipedia

スズキ、初めてなのです。今月、演奏を聴きに行く予定だから、初めてこの作品について予習しているのだけど、ゴメンなさい。あまり夢中になれない。。

ベートーヴェンは好き。でも、この作品は・・・うーん。

ドンドーン、ドンドーンって、来客のノック音、単純すぎでしょ。

命がけで夫を救い出すレオノーレのような妻がベートーヴェン(生涯独身)の理想の夫婦愛だったのだろうか。いやだなぁ。スズキはそういうの。

「愛は勝つ」とか正義と平和と云々みたいなものより、どうしても「人間は残酷だ」「人生は苦しい」ということを強く訴えるオペラの方が、スズキの好みに合うのだ。ああ、どうせ性格悪いんだ、自分なんか。。 

ハッピーエンドでもいいのだけど、もっと皮肉たっぷりなシーンが欲しい。笑えるところとか。そういう意味では、先日観たモーツァルトの「フィガロの結婚」の方が楽しい。

「フィデリオ」はストレートで真面目すぎる内容だなと思う。

ピツァロは悪者だけど、バカっぽい。最後に失脚するのは最初からバレバレ。プッチーニ「トスカ」のスカルピアの方が徹底的に恐いキャラ。ハラハラしながら展開を見守る。

救い出されるフロレスタンの印象が薄い。地下牢に閉じ込められたキャラと言えば、リヒャルト・シュトラウス「サロメ」のヨカナーンの方がはるかに濃い印象。ヨカナーンには妖しげな魅力がある。

「フィデリオ」は、ストーリーが一部矛盾している。

大臣フェルナンドは「フロレスタンは死んだ」と思っていたのに、何故レオノーレは夫であるフロレスタンが生きていると思っていたのだろうか。

何故ピツァロみたいな人間が刑務所長で、好き放題に逮捕したり拷問したりできたのか? 大臣も国家も刑務所を完全放置?所長人選のミス?

どうでもいいが、スペイン語なら「ピツァロ」ではなく「ピサロ」と発音するはず。「ヤキーノ」(ジャキーノ?ハキーノ?)も微妙な名前。

そして、序曲が多すぎる(笑)

序曲はオペラの開始の音楽で、管弦楽で演奏される10分前後の音楽。オーケストラコンサートの第1曲目としてよく単独で演奏される。

オーケストラのコンサートに通うと、何度か「レオノーレ」という名前を目にするようになる。ところがベートーヴェンの作品一覧に「レオノーレ」というオペラ作品は見当たらない。変だなと思っていた。しかも「3番」ってなんだ? 序曲に番号など普通はついていない。

こういうことだった(まだよく分かっていないけど)。

・オペラ「フィデリオ」には序曲が4曲もある。

・オペラ「フィデリオ」はもともと「レオノーレ」という名前で作曲された。

・オペラは2度改訂された。

・コンサートでよく演奏される序曲は、「レオノーレ」序曲第3番

 

「レオノーレ」序曲第3番は、最終版であるオペラ「フィデリオ」でも第2幕の途中に挿入されることがある。このアイデアは指揮者・作曲家マーラーが始めた。賛否両論あるらしいが、すばらしい序曲であることは確か。(YouTubeにバーンスタインがノリノリで指揮する3番がある。)

他にも、このオペラ「フィデリオ」には異例なところがある。

オペラの途中で何度か寸劇が入る。その寸劇のセリフは固定ではないらしい? 物語に合うようなセリフであれば自由に劇作家が新しく創り出しても良いの?

「レオノーレ」序曲第3番(抜粋)


Beethoven: Leonore Overture No. 3 / Järvi · Berliner Philharmoniker

 

とりあえず、無事予習は完了ということにしよう。

衝撃的な何かが起こらない限り、鑑賞感想速報は書かない予定。

2019年8月29日 (木) 9月1日 (日)

オーチャードホール(東京渋谷)

パーヴォ・ヤルヴィ指揮 NHK交響楽団

チケットぴあで残席を確認 icon

 

ベートーヴェンと言えば:

  • 来年2020年はベートーヴェン生誕250周年! 
  • ベートーヴェンの出身地ドイツのボンで毎年9月に開催されている音楽祭が気になる。実は数年前からプログラムはチラリとチェックしている。
    音楽祭サイト Service - Concert Venues に演奏会場Mapあり
    遅めの夏休みにどう? ドイツ ボンのホテル Booking.com

 

衝動買いしたバロック古楽オペラDVDヴィンチ作曲「アルタセルセ」を昨日鑑賞した。すごく良かった。好きだ。古代ローマ古代ペルシャ・エジプトの悲劇。歌手6人中5人がカウンターテノール。最強の作品だ。「フィデリオ」より好き。

え?何?ベートーヴェンが泣いてるって?ごめん。だから、ベートーヴェンの他の作品は大好きだから!!!泣かないで! ルートヴィヒさん!

 

 

いかがでしたか?

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