LFJ公開マスタークラス ピアノ 講師エマニュエル・シュトロッセ(2014年5月の旧スズキブログより)

(これは閉鎖した旧スズキブログに掲載していた記事の抜粋です。)

2014年5月

■マスタークラス
講師:エマニュエル・シュトロッセ(ピアノ)
曲:ラヴェル「鏡」より「道化師の朝の歌」

シュトロッセ先生のマスタークラスを見学するのは2回目です。相変わらず姿も立ち居振る舞いもスマートで素敵ですね。ますますフランス人贔屓になってしまいます。

前回同様、シュトロッセ先生は話が長い他の先生方と比べると、テンポ良くレッスンを進めます。話は多いものの、簡潔にお洒落に話されます。何度か他のレッスンでもお見かけするフランス語通訳の方も非常にプロフェッショナルで上手いので見学者としては満足度が高いのです。

何より受講生が本当に頑張っていて私は感動したのです。

今回の生徒はなんと、私よりずいぶん年配の女性でした。

ここでは毎年お上手な音大生ばかりがレッスンを受けていました。指導に対して無言で表情さえかえずに講師の指示に従っていた音大生達より、素直な反応が見える今日の受講生は素敵に見えました。どんな人間なのか、知りたくなりました。これまでどうやってピアノを学んできたのか、どんな演奏を目指しているのか、ピアノに対する想いなど、聞いてみたかったです。(音大生のレッスンを見ていても不思議と人間には興味持たないのです。)

音楽専門教育を受けた方なのか、趣味なのかも分かりません。

「道化師の朝の歌」という難曲を、公開レッスンの場でパリ国立高等音楽院の先生に指導してもらうなんて、勇気の入ることだと思います。たいへん緊張されていたと思います。うまく弾けずに残念そうな顔をされたり、指導を受けて「これ難しい」という顔をしたり、驚いた顔をしたり、この曲をうまく弾けるようになりたいという情熱を感じました。

この曲を一通り弾けるというだけで、私よりケタ違いに巧いです。とはいっても、プロ並ではなく、アマチュアトップという感じでもありません。でも、褒められるほどカッコよく弾けている部分もありました。勢いもあります。

対するシュトロッセ先生も、この曲はこんなに面白いと言わんばかりに曲の魅力をとことん分析しまくります。そして参考に弾くときの弾き方がカッコよく洒落ているのです。オーケストラの楽器をピアノで再現します。

ピアノって、やっぱり素晴らしいじゃないか。ピアノを弾きたくなりました。無駄とは分かっていても弾かずにはいられないのですね。スズキもがんばらなければいけません。(誰ですかね。ピアノ嫌いとかつぶやいたのは。)

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ラ・フォル・ジュルネでのシュトロッセ先生の公開レッスンについて、もう少し語らせてください。ちょっと閃いたのです。ちょっとだけ前に進めそうです。

曲はラヴェルの「鏡」より「道化師の朝の歌」です。シュトロッセさんがこの曲に特別の想いを抱いているのかどうかは分かりませんが、曲に対する異様なほどの「愛」を感じました。シュトロッセさんと曲との関係はまるで恋人同士のようでした。

物語が浮かびました!

せっかくなので(?)曲を擬人化して女性に例えてみましょう。「彼女」と呼んでみましょう。

美しい彼女は、出会った頃は冷たかったのです。

「あなたがどんなに私を好きでも、私はあなたには興味ないの」と言います。

ところがフランスのムッシュー、シュトロッセ氏は少しも動じません。むしろ楽しそうです。大好きな彼女に喜んでもらえるようにがんばります。笑顔が見たいですものね。彼女のことを理解しようと努力します。繊細な心を傷つけないように細心の注意を払います。

彼女の魅力的なところを見つけたら、それをきちんと伝えます。

「君のこんなところが素敵だよ」「ほらね」とニッコリ笑いながら。(つまり、その曲を美しくピアノで弾くのです。)

シュトロッセさんの分析は止まりません。もともと美しい彼女はますます輝きを増します。(つまり、曲がいい感じに仕上がっていきます。)

「私って、こんなに綺麗だったの?なんだか自分じゃないみたい。これが本当の私なのね!」

自分の魅力を引き出してくれた彼のことが気になってしまうに決まってます。

興味ないとか言ったくせに、彼女は徐々に心を開きます。

一歩ずつ近付いて、彼に微笑むようになるでしょう。

この人にもっと素敵に「私」を演奏して欲しいと思うでしょう。

こうして曲を味方につけるのです。

曲を自分のものにするのです。(こうなれば曲の完成も間近!)
(口説くのですよ!やっぱり!笑)

(ああ、スズキさんはやっぱり変だ。なんだこの物語は。)

マスタークラスの受講生の女性は、きっと誰にも負けないぐらいこの曲が大好きだったはずです。私も「道化師の朝の歌」は大好きです。カッコいい憧れの曲です。しかし、シュトロッセ先生の曲に対する「愛」の方がもっと大きかったのです。受講生は圧倒されて驚いてしまったのではないかしら?きっと悔しさをバネにさらにがんばることでしょう。

 

シュトロッセさん&クレール・デゼールさんのデュオはLFJ名物の1つ


Schubert par Claire Désert et Emmanuel Strosser I Le live de la matinale

 

 

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