ワーグナー作品で学ぶドイツ語講座 タンホイザー

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ドイツ語学習者の皆さんへ!

もし、ここに挙げられたドイツ語の単語やフレーズにビビビと来たら、アナタはワーグナー作曲のオペラに向いているかもしれませんよ。こわくないから、こっちの世界においで!!

 

受講者の皆さんへ!

わたしがこの講座を担当するスズキ先生ですよ。

こわくないです。よろしくね。

この講座は真面目にコツコツ学習する講座ではありません。ワーグナーオペラ作品に出てくるドイツ語の単語やフレーズをスズキが適当に選んで適当にコメントするだけです。(え?そんなの「講座」ではない?)

スズキはワーグナーさんのことをヴァーグナーとドイツ語読みで呼びたいです。

ここから先はヴァーグナーさんと呼ぶことにします。

 

第1回目の作品はタンホイザーです。

最初なのでドイツ語初心者向けに基本的な単語も取り上げましょう。

一部の単語はオペラだけでなく、ドイツ語圏の作曲家によるドイツ歌曲や宗教曲でも出てきます。

意味を知っているとより気持ち良く歌えます。

カタカナの発音は参考程度にして、正確な発音は他のサイトで確認しましょう。

Google翻訳にも音声ボタンがあります。スピーカーのマークをクリック。

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ではさっそく始めましょう。

 

Geliebter

ゲリープター

「愛するアナタ・・・」と呼びかけるときの言葉です。

「わたしの」 を入れてMein Geliebter マイン ゲリープター と呼びかけることもあります。

この単語は男性に呼びかけるときに使います。

女性に呼びかける場合は少し形が変わります。

Geliebte ゲリープテ Meine Geliebte マイネ ゲリープテ となります。

 

Traum

トラウム

「夢」です。 

 

Lenz

レンツ

「春」です。ドイツ語で最初に習う「春」とは違いますね。

教科書に載っているのは Frühling フルーリング でしょう。

ヴァーグナー作品ではけっこうLenzが出てきます。

 

Herz

ヘルツ

わざわざ取り上げなくてもご存知でしょう。初学者でも想像でわかりますよね?「心」「心臓」「ハート」です。オペラでも歌曲でもMein Herz (わたしの心)は 最頻出です。 重要単語です。

 

Schmerzen

シュメルツェン

これも頻出単語です。「痛み」という意味です。心を痛めたり愛の苦しみを感じたり。

 

o Königin, Göttin! Lass mich ziehn!

オー ケーニギン、ゲッティン、ラス ミッヒ ツィーン!

ここでいきなりフレーズが入りました。

男性名詞の語尾に in が付くと女性名詞になります。

König 王様 → Königin 女王様

Gott 神 → Göttin 女神

後半の部分を英語にすると Let me go という意味です。

なんとなく似ているでしょ?

ドイツ語の動詞 ziehn は go とは少し違うのだけど。

 

Venusberg

ヴェーヌスベルク

ドイツ語の v は英語の f のように発音するのだけど、この単語は例外です。

ヴェーヌスはヴィーナス、つまりローマ神話の愛の女神のことです。

bergは「山」ですから、ヴィーナスの山という意味です。

 

この物語は女神たちが住むヴェーヌスベルクの場面から始まります。

禁欲を強いる中世の人間界に嫌気が差していた タンホイザーは、禁断の地であるヴェーヌスベルクに逃げました。そこで女神たちの愛に溺れる生活をしていました。

 

Weh!

ヴェー!

苦しみや恐怖、痛み、悲しみなど強いものを感じたときに思わず口から出てしまう感嘆詞のようなものです。

日本語に訳すとしたら、場面により様々な訳が可能でしょう。「ああ!」「ええ!」

「キャー」「ひどい・・・!」「どうしよう・・」とか?

ヴァーグナーオペラでは沢山「ヴェー」が出てきます。楽しみにしていてくださいね。

 

では家+ヴェー、Heimweh ハイムヴェーはどういう意味でしょう?

「ホームシック」です。家が恋しくて辛い人がかかる病気みたいなものです。

スズキはハイムヴェーではなく Fernweh フェルンヴェー です。

Fernは「遠い」という意味です。

フェルンヴェーは旅行中毒の人がかかる病気みたいなものです。

遠くに行きたくて仕方ないから辛い! → 旅行したい!

日常がキライで旅好きのスズキに、ドイツ人の友だちが教えてくれた単語です。

あ!アタナもフェルンヴェーですか!?

 

ewig

エーヴィヒ

「永遠の」「永遠に」

英語で言う forever とか eternal です。

 

Lippen

リッペン

「くちびる」です。身体の部分もオペラや歌曲によく出てきます。

複数形です。

上唇と下唇を合わせて1つと考えるからです。

どちらか一方だけを指す場合は単数Lippeです。

 

Augen

アオゲン

「瞳」「目」です。

リッペンと同様にこちらも通常は複数形で言います。

どちらか一方の目を指す場合は単数でAugeと言います。

 

Ritter

リッター

「騎士」です。

ヴァーグナーオペラの定番登場人物です。勇者のようにカッコよく描かれることが多いです。

この騎士に想いを寄せる女は、騎士に向けて「 Mein Ritter(わたしの騎士さん)」と歌います。

 

Quelle

クヴェッレ

「泉」です。

・・・と、書いてみたのだけど、この作品内では「泉」はBronnenというドイツ語で表現されています。スズキはBronnenという単語は知らないのでスルーします(笑)

歌曲などでよく目にするのはQuelleの方だと思います。

Quelleは、正確に言うと水源、源泉、つまり水が湧き出ているところという意味です。

スズキはQuelleは「泉」と理解して良いと思います。

 

Freiheit

フライハイト

あ!これはスズキの好きな言葉ですよ。

「自由」です。とっても大事です。

Freiは英語で言う free です。

 

Tod

トート

 「死」です。英語にするとdeathです。

ご存知の通り、ドイツ語の単語は長いです。

この「死」という単語も後ろにいろいろな単語がくっついて新たな1つの単語になります。

このオペラには Todesstossという単語が出てきます。

死に至るほどの大きな衝撃という意味です。

 

Heil

ハイル

このオペラの中では異なる2つのHeilが出てきます。

1つは人の名前と共に用いられるときです。

その人物を称賛して名前を叫ぶときにHeilを付けます。

Thüringens Fürsten, Landgraf Hermann, Heil!

という部分があります。

「チューリンゲンを治めるヘルマン伯爵、バンザイ」

という感じでしょうか。

懐かしいアニメを思い出します。

わたしが子どもの頃に毎週日曜日の夜に放送されていた名作劇場で「ハイル ヒトラー!」という言葉が出てきました。

映画「サウンドオブミュージック」と同じトラップ一家の物語をベースにしたアニメでした。

トラップ家の子どもたちは学校で「ハイルヒトラー」と挨拶しなければいけなくなって、それを苦痛に感じていました。そこで誰かが名案を思いつきます。「ハイルヒトラー」の代わりに「アヒル、こけた!」と言うのです。クラス全員で「ハイルヒトラー」言えば、一人だけ「アヒル、こけた!」と言っていても、他の人の声に埋もれて、みんなと同じように「ハイルヒトラー」と言っているように聞こえるのです。

あのときの「ハイル」と同じ意味なのだと思うと、なんだかちょっと恐い感じがしてしまいます。ヒトラーみたいな独裁者を称賛するときにも使った語なのですね。

タンホイザーに出てくるもう1つのHeilは「救済」という意味のHeilです。

これはキリスト教的な考えに基づく「救済」です。罪を犯した者が許しを得て「救済」されたら、死後に天国に行けるという意味の「救済」です。

禁断の地で快楽にふけったタンホイザーは中世社会ではとっても悪い罪人なのです。「救済」を求めるために彼はローマに巡礼の旅に出ます。

Heilに関連する単語にheiligハイリヒ(聖なる)という単語があります。

Heiligabendは聖なる夜、つまりクリスマス・イヴのことです。

 

Zauber

ツァォバー

「魔法」なのですが、魔女が出てきて呪文を唱えてというイメージだけでなく、不思議な気分とか、魔法にかかったようにウットリすることとか、もう少し幅広いように感じます。特にヴァーグナーのオペラでは。

モーツァルトのオペラ「魔笛」Zauberflöteもこの単語ですね。

 

Lebe wohl

レーベ ヴォール

「さようなら」です。え?知らなかった?

日常生活では使いませんね。ふつうは親しい相手なら「チュス」で、親しくない相手なら「アオフ ヴィーダーゼーン」と言います。

レーベ ヴォールはもう二度と会わないときの「さようなら」なのかな?おそらく。

ヴィーナスの愛におぼれていたタンホイザーはついに自由を求め、ヴィーナスのもとを去ります。そのときに言ったセリフです。

この「さようなら」はヴァーグナーの別の作品「ヴァルキューレ」でも出てきます。罰として長い眠りに付くことになったブリュンヒルデに、父ヴォータンが告げた別れの言葉がLeb' wohl でした。

 

Ruhe

ルーエ

「憩い」です。心が満たされている静かな幸せな状態。

「Ruh' がない(心が落ち着かない、苦しみを抱えている)」と嘆く場面は歌曲でも多いです。

 

Schuld

シュルト

「罪」です。

 

Seele

ゼーレ

「心」、英語ではsoul です。カンタータでもよく出てきます。

「心」や「精神」などを表す言葉はいろいろあって、使い分けはわたしにはよくわかりません。

たとえば Geist は「精神」で英語で言うspirit、Sinnもまた心の中を表す言葉で、勇気という意味のMutも「心」を表すこともあったり、さっき取り上げたHerzというのもあるし・・・

 

Allmächtiger

アルメフティガー

うーん、カタカナに違和感があります。音声確認してくださいね。

「全能の(者)」つまり「神」に呼びかけるときの表現です。

この単語はハイドンのオラトリオ「四季」に出てきたときに知りました。

All はもちろん「すべて」という意味。

machtiger はたぶん動詞のmachen(英語のdoあるいはmake)から来ていると思います。 

 

Kampf

カンプフ

とてもヴァーグナーっぽくなってきました。「戦い」「争い」「戦争」などです。

Streit ストライトも同じような意味です。

ヴァーグナーの作品は戦いの場面が多いです。苦手な人には向かないでしょう。

 

Dich, teure Halle

久し振りにフレーズが来ました。

ディッヒ トイレ ハレ

「素晴らしいホールよ!」とホールに言葉をかけている場面です。

ハレは英語のホール hall です。

ただし、コンサートホールの場合はhalle ではなくSaalザールを使うことが多いです。大ホール großer Saal 小ホール kleiner Saal のように。

タンホイザーに出てくるHalleは、歌人(うたびと)たちが戦う歌合戦の会場であるホールのことです。

このフレーズは、久し振りに歌合戦を見物する乙女エリザベートが嬉しさを隠しきれずに歌う歌です。強調するのは「ハレ」のところです。なんとなく「ハイル」に近い発音でもあるので、ここを高いキーで歌うと神々しさに満ちています。

この歌合戦ホールを讃える場面で、ヘンデルのメサイアみたいな「幸せに酔いしれるヴァイオリン」の音が聴こえるのですよ!

teure は値段が高いというときに使われる単語ですが、ここでは価値のある凄いものという感じの捉え方で良いのだと思います。

 

Friede

フリーデ

「平和」です。

 

Schwert

シュヴェァート

「剣」です。ヴァーグナーオペラでは戦いの場面が多いと言いましたよね?

だから、この単語も頻出単語です。テストに出るわよ。

 

Engel

エンゲル

「天使」です。英語のエンジェルと同じです。

 

Sieg

ジーク

「勝利」「勝ち」です。

戦いで当然出てくる単語です。

この単語が人の名前にも入っていたりします。

ヴァーグナーの「ヴァルキューレ」に出てくる兄妹はジークムントとジークリンデです。

 

Nach Rom!

ナッハ ローム

「ローマへ!」

禁断の地ヴェーヌスベルクに滞在するという罪を犯したタンホイザーはローマに出向いて罪を許してもらうことに。

「(どこか)へ」という言い方は nach の他に zu (ツー)もあります。

でも nach の後ろにくるのは地名だけです。

zu は英語の to や too とほぼ同じです。

このオペラ内ではタンホイザイーが「エリザベートの元に行こう!」という意味で言う zu ihr! ツー イア (彼女のところへ)とか、ヴェーヌスが「あたしのところに来て!」という意味で言う zu mir があります。

 

tiefes Mitleid

ティーフェス ミットライト

「深い共感」です。

ローマを目指して苦しい旅をしたのに罪を許してもらえなかった失意のタンホイザーに、友人で同僚のヴォルフラムがかけた言葉の一部です。

ドイツ語は初めてですか?

見てください。おもしろいでしょう?

英語のdeep がドイツ語では tief なのです。DがTに、PがFに変わっています。そういう例がいくつもあります。ほら、ドイツ語の感覚がわかってきたでしょう?

 

Träne

トレーネ

「涙」です。これは単数形。複数形なら Tränen トレーネンです。言うまでもなく、オペラでも歌曲でも登場人物は泣いてばかりです。

 

Blut

ブルート

「血」です。英語のbloodとも近いですね。

戦いの場面でも出てきますが、あるオペラでは「血筋」に関連してこの単語が出てきます。

 

so bist nun ewig du verdammt!

ゾー ビスト ヌン エーヴィヒ ドゥ フェアダムト!

「だから、おまえはまさにいま、永遠に地獄に落ちるのだ!!」

おそろしい。わざわざローマに来たのに、タンホイザーはローマでこんな風に言われたのです。かわいそうだ。

ゾーは英語のso ソー と同じです。

ewig は先ほど紹介しました。覚えていますか? 「永遠に」という意味です。

du bist は you are と同じです。順番が入れ替わっているのは気にしないで。

verdammt は英語のスラングdamnと似ているでしょ?

ではnunは?

ヌン! は結構気に入っているドイツ語です。「今」とか「いざ」とか訳されます。jezt イェツト も「今」という意味ですが、ヌンには意気込みや掛け声のような雰囲気があります。なので「いざ」は合うと思います。でも、このフレーズの場面ではちょっと合いませんけどね。

 

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いかがでしたか?

疲れてしまいました?

ドイツ語の勉強をもっとやりたい人はこちらをどうぞ。

www.music-szk.com

 

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オペラを観てみたいと思った人はこちらをどうぞ

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東京の新国立劇場で上演される「タンホイザー」は1月27日から2月9日です。 もうすぐ始まります。もう値段が高い席しか残っていないし、予習時間も限られています。また次の機会を狙うと良いでしょう。それでもいいからすぐに観たいなら、残席を確認してみてください。

チケットぴあで残席を確認 icon

 

ハインリッヒ・タンホイザーは閉鎖的で禁欲な社会に苦しんでいたのです。 そして禁じられた場所、ヴェーヌスベルクに行って、女神たちと戯れていたのです。

タンホイザーにとってヴェーヌスベルクとは女神たちと快楽三昧する場所です。それなら、スズキにとってのヴェーヌスベルクは一人でヨーロッパで音楽三昧することだと言えます。

荒んだ社会で、ほんの一時現実から逃げるのは、どう考えても正しいことです。

それなのに、禁断の地から戻ってきたタンホイザーはみんなに非難されて殺されそうになります。

みんなはタンホイザーを気の狂った人のように扱いました。でも、彼は狂人ではないと思います。なぜなら、彼はヴェーヌスベルクでの幸せな日々に次第に疑問を感じて逃げてきたのです。とても真っ当な人です。

ムラのルールを破っただけで命さえ奪いかねない、そんな社会こそ野蛮です。

ダメと言われても、スズキだってヴェーヌスベルクを目指します。

わたしにとってのヴェーヌスベルク、ヨーロッパ音楽三昧の旅へ。

タンホイザーの不自然なまでの厳しく激しいローマへの旅も、命まで捨ててタンホイザーの救済を求めたエリザベートの苦しみも、本当に必要な犠牲だったのでしょうか?

いや、不要だった。

もっと自由のある社会なら、「あなたがヴェーヌスベルクに滞在していたことはショックだけど、それでもわたし、あなたが好き」とエリザベートが言って、「なんという幸せだ!一緒にこの閉鎖的な国から逃げて、遠いところで2人で暮らそう!」とタンホイザーが応えれば、幸せな話になったことでしょう。(スズキの妄想)

スズキはヴォルフラムさんとお茶してみたいです。

バリトン歌手の役割はとってもこわい悪役または心強い友人のどちらかということが多いです。ヴォルフラムさんは後者です。今度のオペラ上演でもカッコよく歌っていただきたいです。

ヴォルフラムは興味深いキャラクターです。彼を主人公にしたスピンアウト企画もできそうです。

彼は閉鎖的な社会に疑問を持たずに真面目に生きています。ヴェーヌスベルクという女神の愛の地に激しい嫌悪感を抱いています。それでも、タンホイザーを友人と呼び、ローマで何があったのか、語るように説得したのです。

ヴォルフラムは密かにエリザベートに想いを寄せていました。行方不明だったタンホイザーが戻ってきたので、ヴォルフラムは黙って引き下がりました。

ずっとエリザベートを遠くから見守り、エリザベートが地上を離れて「天使になる」(←つまり死を選んだ)ときにも、「一緒に行かせてもらえませんか?」と声をかけていました。

悲しみを抱えたまま、本心は語らず、一人で竪琴を弾いて歌う男ヴォルフラム・・・

その彼がタンホイザーに「共感」を抱く理由はなんだろう。

彼自身がまだ気付いていない潜在意識の奥底で何かが起こっているのかもしれない。

 

変な妄想かもしれないけど、あのあと、愛の女神ヴェーヌスはヴォルフラムを狙うのでは?

なかなか厳しい相手だろうけど、自分のものにできたらヴェーヌスは達成感と征服感でよろこびの頂点に昇るでしょう(笑)

気をつけて!ヴォルフラムさん!

 

また妄想が過ぎてしまいました。

ごめんなさい。

 

 

バイエルン歌劇場のタンホイザー(抜粋)


TANNHÄUSER - Trailer | Conductor: Kirill Petrenko

 

最後のところ


TANNHÄUSER: Finale | Conductor: Kirill Petrenko

 

 

ドイツ語のインタビュー映像に英語字幕が付いているのでドイツ語の勉強にどうぞ。


TANNHÄUSER: Video magazine | Conductor: Kirill Petrenko

 

 

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