あの人は今・・・元エベーヌ弦楽四重奏団のヴィオラ奏者 マテュー・ヘルツォーク

その後、消息がわからなくなってしまった人を探す、あの人気番組ですよ・・・

 

スズキ(依頼者)「あのね、好きな人がいたんです。この動画でヴィオラを弾いてる人です。右から2番目の人です。」


Quatuor Ebène : Bela Bartok String quartet Nr. 4 C-major Sz 91

スズキ「はっきり言って、スズキ、この動画でヴィオラの人だけしか見てなかったです。他のメンバーなんて全然眼中になかったです。」

司会者「それは、他のメンバーに失礼ですね。」

スズキ「えぇ!?そうなの?! でも、自分に正直であることが悪いのですかぁ!?」

司会者「ヴィオラ奏者の名前は?」

スズキ「知りません!」

司会者「ええぇ!? それも失礼ですね。」

スズキ「それでも好きだったのですよ。」

司会者「はいはい。どんなところが好きだったんですか?」

スズキ「ああ、それにしてもバルトークさん作曲の弦楽四重奏曲、カッコイイですね。シビレますね?そう思いませんか?」

司会者「はあ? はいはい。で、この名前さえ知らないヴィオラ奏者のどこがいいんですか?」

スズキ「例えばね、この人、思いっ切り歌ってるのですよ。」

司会者「つまり、歌うように美しくヴィオラを奏でるということですね?」

スズキ「ちがーう!!! 本当に歌ってるの、この人。ほら!」


Quatuor Ebène - Streets of Philadelphia (Live in Paris - Fiction at the Folies Bergère) HD 1080p

スズキ「彼はね、ジャズボーカルを勉強したことがあるらしいの。エベーヌ弦楽四重奏団の日本語ウィキペディアによると、この四重奏団はジャズ専攻の4人で結成されたとなっているけど、その情報はちょっと違うかもしれないとフランス在住の人に指摘されたことがあるのよ。

わたしも調べ直してみたけど、彼らが学んでいた音楽院にジャズ科はなさそうだし、この弦楽四重奏団のウィキペディアの他言語ページでは「ジャズ専攻」なんてどこにも書いてない。」

司会者「へえ」

スズキ「だから、このヴィオラ奏者も、おそらくジャズボーカルを勉強したことはあるのだろうけど、発言や演奏から察するに、メインで勉強してきたのはクラシック音楽だと思うの。でもね、クラシックも上手いけど、違うジャンルでもカッコよく演奏できる四重奏団だったのよ、この人たちは。」


Quatuor EBENE: Fiction, "The making of"

司会者「つまり、このヴィオラの人はジャンルを超えて歌も歌えるから、好きだったの?」

スズキ「えっとですね、天才を嗅ぎ分けるスズキの嗅覚が反応したのです。」

司会者「スズキさんは犬なんですね!」

スズキ「ちがいます。」

司会者「はあ」

スズキ「どうみても、このヴィオラの人は、四重奏団のヴィオラ奏者の枠を飛び越えて活躍する人ですよ。あのときから異様なオーラが出ていたのよ。スズキには分かるのです!」

司会者「はあ、そうですか。もちろん彼がいる四重奏団の演奏を聴きに行ったのですよね、スズキさんは」

スズキ「いいえ」(涙の洪水)

司会者「あのう、泣かないでください。。。」

スズキ「次の来日のときに行こうと思っていたら、ヴィオラの人が四重奏団を脱退してしまったの・・・」

司会者「そうだったのですか」

スズキ「あれは2014年のことでした。」

司会者「そのヴィオラ奏者が、その後どうしているか知りたいのですね。」

スズキ「はい。その後、ちゃんと音楽に集中できる環境を確保できているのか、ちゃんとご飯を食べているのか、とっても心配しています。」

司会者「スズキさん、やさしいところもあるのですね。」

スズキ「そうなんです。」

司会者(自分で言うな!)「番組の調査スタッフがちゃんと彼のその後を調べてきましたよ。彼はいま、指揮者として活動しています。こちらの動画をご覧ください。」

スズキ「まあ!!!とっても感動!!」

司会者「そして、彼の名前はマテュー・ヘルツォーク Mathieu Herzog ですよ。覚えてあげてくださいね。」

スズキ「はーい!」


Mozart, les trois dernières symphonies - M. Herzog & Appassionato - EPK (english subtitles)

マテュー・ヘルツォーク(彼はフランス人なのだが、その苗字はドイツ語だね・・・)は、四重奏団のヴィオラ奏者だったときから、演奏活動や後進の指導の傍ら、指揮者になるための勉強を本格的に進めていたのだ。

人間、時間を捻出しようとすれば、どうにか捻出できるのだ。彼はおそらくわたしと同世代(あるいは少し上の世代?)。ああ、人間って。。。 どうしてわたしはこんなにダメ人間なんだ。(才能ある音楽家と自分を比べることは間違っている。そこはよく承知しているのだが・・・)

上の動画は全編フランス語なのだが、ありがたいことに英語字幕が付いている。ヘルツォークが指揮を務める「アパッショナータ」という名のアンサンブル演奏団について、だいぶ理解できた。

(画像クリック→Amazon)

去年リリースされた初CDに関する動画。演奏曲はモーツァルトの最後の交響曲3曲。明るく新鮮な響きを感じるでしょう? ヘルツォークの口からいきなりアーノンクールの名前が出るとは思わなかった。(アーノンクールは指揮者・チェロ奏者で、バロック時代など昔の作品を、できるだけ当時と同じ楽器・奏法での演奏を目指した人。そのような音楽演奏を古楽という。2016年没)

ヘルツォークたちのモーツァルト演奏は、古楽的な解釈やテクニックを反映しながら、現代楽器で現代楽器奏者が演奏するというスタイル。古楽 vs 現代 というような、対立する関係であってはいけないと、彼は言う。

また、4人編成という少人数の室内楽で演奏してきた彼が、いまこうしてオーケストラで演奏しているのだが、室内楽 vs オーケストラ というのも、対立する必要はないと説いている。というのも、このアパッショナータで演奏している弦楽器奏者は四重奏団に所属する人たちばかりなのだ。

四重奏団から成るオーケストラなど、聞いたことがない。ありそうで無かった、意外な設定だ。演奏者たちがお互い刺激を受けながら演奏している様子が目に浮かぶ。そんなメンバーたちを、まとめあげるのが、元四重奏団のヴィオラ奏者だったマテューさんというわけだ。なるほど。彼ほどそのポジションにぴったりな人物はいないだろう。

弦楽四重奏団のメンバーたちは、四重奏団で活動しているので、アンサンブルは得意だ。でも、オーケストラで演奏することなど基本的にほとんどない。四重奏や室内楽より大きな規模、オーケストラ(室内オーケストラ)で演奏する経験は、彼らにとって大きなプラスの経験になるだろう。作曲家の理解も深まる。他の四重奏団、他の楽器の演奏者との交流からも刺激を受ける。交響曲やオペラなど、室内楽では演奏しない曲を経験できる。だから、彼らの演奏はこんなに生き生きとしているのか・・・ メンバーは比較的若い。真剣だし楽しそう。いい感じだ。

マテュー・ヘルツォークの古巣、エベーヌ弦楽四重奏団のヴァイオリン奏者もこのアンサンブルの一員として上の動画で語っている。相変わらず仲良しなのね。良かった。

そして、動画の後半で、ヘルツォークたちは、具体的な言及は避けているが、芸術に携わる人間として、現代の政治や社会などを懸念している。アート界にとっては厳しい時代だ。こんな時代にクラシック音楽は必要なのか。もちろん必要なのだと。

感動した。よし、スズキもがんばろう。

 

ヘルツォークは、ジャズもポップスも何でもできる人間だし、いまもその方面でもアレンジや演奏などで活躍している。それでも、どっぷりクラシック音楽の世界に浸っている。クラシック音楽の指揮者としての活動が主軸のようだ。

話を聞けば聞くほど、彼が歴史や文学や社会など幅広く興味関心を持っている人間であることがわかる。哲学のある人物。調べて分析して表現することに情熱を持っている。だからこそわたしが惚れ込んでしまうのだ。

そんな彼のような人間を夢中にさせるクラシック音楽という世界はやっぱり素晴らしいね、と改めて思う。

 

なになに?しかも、作曲家ビゼーの生涯に関するオペラの台本を執筆中ですって?!?!(オフィシャルサイトのプロフィールより)

スズキもオペラ大好きですよ!

すばらしい!!

ああ、アナタは、どこまでもわたし好みのアーティストなのね!!

www.mathieuherzog.net

 

わたしの世界をどんどん広げてくれるアーティストとして、今後もマテュー・ヘルツォークに注目していきたい。

 

(コンサート企画ご担当の皆さん、ヘルツォーク&アパッショナートを日本に呼んでください!)

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