感想コメントなど プーランク作曲オペラ「カルメル会修道女の対話」 METライブビューイング

感想は書かないつもりだったが、どうしてもこれだけは書き留めておきたい。

正確な言葉は少し違うかもしれないが、案内役のオペラ歌手ルネ・フレミングが冒頭で「勇敢な女性たちの物語」と作品を紹介していた。

わたしの感覚では「勇敢」という表現は違うと思う。彼女たちは、死を恐れるふつうの女性たちだったとわたしは思っている。

リブレット上は、死んでいった修道女たちを「勇敢な女性」として描くことも可能なのかもしれない。でも演出家は、彼女たちを死の恐怖と戦いながらギロチンに向かう女性として描くことが多いのでは?今回のMET上演でも、予習で利用したDVDでもそうだった。DVDで観た死刑を言い渡されたときの彼女たちの怯え方を忘れることはできない。METでは彼女たちは不安な気持ちに心が折れそうになりながら、お互い支え合いながら一人ひとりギロチンに向かっていった。

あんなに恐がっているんだから、だれか助けてあげろよ!(恐怖政治下では無理だったのだろうけど)

神の前で殉教を誓ったことも、でたらめな裁判で決めた死刑も、なかったことにしてあげろよ!

みんなのために犠牲になったというより、どう考えても無駄に死んだとしか思えない。

無意味に次々命を落としていく彼女たちの姿に涙が止まらない。

あれれ?

泣いてるのスズキだけかい?(笑)

芸術鑑賞は一人でするのが良いと改めて思う。あれのどこが泣けるんだという感性の鈍い同行者とご一緒したくはないし、一緒に泣いてしまうのもバカバカしい。無言で見守ってくれるなら害はないが、それならわざわざ一緒に行く意味もない。

思いっきり宗教を前面に出した作品なのに、わたしが頭の中で考えたのは宗教そのもののことより生死のことだった。(生死も宗教と関連のあるものなのだが。)

生きるも死ぬも無意味だとわたしは思う。生きることの素晴らしさを語る人には怒られるかもしれないが、わたしは生きることも死ぬことも両方ともひたすら苦痛だと思う。

それでも、あんなに不安を抱えたまま死を受け入れようとしている人たちは、生かしてあげたかった。不安から解放してあげたかった。

一方で、最初から最後までほとんど常に苦痛の表情で叫びながら生きていたブランシュは、晴れやかな表情でギロチン台に向かったから、彼女にとっては、この結末が、あの時代のあの状況の中では最善の結末だったのだろう。

 

DVD予習では英語・フランス語のみだった。METライブビューイングの日本語字幕のお陰で、曖昧だった部分がクリアになってきた。(ちなみに英語で「子羊ちゃん」だったところは、日本語はフランス語に合わせて「ウサギちゃん」となっていた)

ブランシュは神経質すぎる自分を心配してくれる兄や父にうんざりしていたのね・・・

人間は不器用だから、助けを求めている人と放っておいて欲しい人を見分けることができない。助けを求めているのに助けてもらえない人は、孤独に死んでいく。放っておいて欲しいのに、放っておいてくれない人は、ひたすら逃げるしかない。逃げられないなら、死を選んでしまう。

ブランシュの場合は、放っておいて欲しいのに、あまりにも精神的に不安定なので助けも必要としているという難しいパターン。あの恐怖政治の中で生きるには苦しすぎた。不謹慎かもしれないが、やはり、あの結末が彼女にとっては良かったとわたしは考えてしまう。

 

やれやれ、一晩たっても身体が重い。

やたらとギロチンの音が大きかったせいもあるかもしれない。何なのだろうあの目立ちすぎる衝撃音は。ただでさえショッキングな場面なのに衝撃倍増ではないか。METでの上演のときに大きな音で上演されたのか、映画館上演用に編集したのか。DVDでは「サルヴェ・レジナ」の一部のような控えめなギロチン音だった。

 

前記事で紹介したDVDの映像の方がより丁寧に一人ひとりの表情を映していると感じた。そのDVD映像の監督がフランソワ=ルネ・マルタンとなっているので、ラ・フォル・ジュルネ音楽祭でお馴染みのルネ・マルタン氏だと思われる。

MET版では一人ひとりの表情より全体を捉えた映像。 

さあ、おもしろそうだと思ったら映画館でオペラを観てみましょう。プーランクが作った音楽も大好きだし、宗教合唱も美しい。

「カルメル会修道女の対話」は6月13日(木)まで。

https://www.shochiku.co.jp/met/program/861/


Dialogues des Carmélites: “Salve Regina”

www.music-szk.com

 

「カルメル会修道女の対話」の上演が終わってしまったら、別の作品の鑑賞を検討してみては?

世界各地(日本含む)の映画館でニューヨークやロンドンのオペラを鑑賞しよう!

METライブビューイング
(米国ニューヨーク メトロポリタン歌劇場)

https://www.shochiku.co.jp/met/

ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン
(英国ロンドン ロイヤル・オペラ・ハウス)

http://tohotowa.co.jp/roh/

 

ああ、重い・・・

重いけどオペラが好き。お子ちゃまには作れない真の芸術だから。 

 

ああ、旅に出たい・・・

旅プランが決まらない。どうしてもやはりヨーロッパがいい。(ゴメンよMET・・・)今度はヨーロッパのどこに逃げたら良いのだろうか。コンサート情報や飛行機の検索ばかりしているが、実行を決断できるほど魅力的な企画は今のところ作れていない。旅が確定すれば少しは気分が落ち着くのだが・・・ ああ、ヨーロッパに遊びに行きたい。そしてそこで行方不明になりたい(笑) この先、貧乏地獄に陥るまで、あと何回、旅できるのだろうか。とほほ。 

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