シューベルト歌曲集「冬の旅」全曲ピアノ演奏プロジェクト1

イッヒ・リーベ・シューベルト!

シューベルトさん、アナタはスズキのオトモダチ!

 

通りすがりの皆さん、読者の皆さん、シューベルトはお好き?

シューベルトのピアノ独奏曲はプロ・アマ問わずピアノ弾き達にそこそこ人気がある。後期ソナタや即興曲は定番曲と言える。

それなのに、残念なことに、大多数のピアノ弾きはピアノソロ曲にしか興味ない。シューベルトさんは、あんなにたくさん歌曲を作曲したのに・・・ かわいそう。

多くのピアノ弾きにとって、歌曲や室内楽曲のピアノは頼まれたときにだけ弾く「おまけ」みたいなものなのだろう。残念すぎる。

スズキの中ではいつも複数のプロジェクトが同時進行している。音楽関係のものもあれば、そうではないものもある。

現在進行中のプロジェクトの1つは、シューベルトの歌曲集「冬の旅」全24曲を全部弾くというプロジェクトだ。1年計画なのに、半年でまだ6曲しか弾けていないという状況。ようやく4分の1まで来た。(どう考えても1年では終わらなさそうだ。)

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ふつうのピアノ教室なら、実際に歌曲の伴奏をする予定がある場合以外は、歌曲のピアノ伴奏を練習したいなどという希望は認められないだろう。できるだけ「ふつうの曲」(ピアノソロ曲)を選ぶように注意されてしまう。というのも、そもそも、ふつうのピアノの先生たちは、ピアノにしか興味がないという場合が多い。ピアノには詳しくても歌曲には関心が低く、知識も少ないのだ。

スズキの先生は、今回のわたしのプロジェクトを応援してくれているので有難い。

ピアノ学習者で、次に弾く曲、新しく挑戦する曲の選曲に悩んでいる人がいたら、シューベルトの歌曲をオススメしたい。ついでにドイツ語も覚えて、歌えるようになってしまおう。誰かにテノール歌手のお友達を紹介してもらって一緒に演奏することを目標にするのも良いだろう。これまでと確実に違う「何か」が見えてくるはず。

一生懸命ピアノを練習してきたけど、行き詰ってしまった。

ひたすら前に突き進んできたけど、もう疲れてしまった。

そんなピアノ弾きに、歌曲のピアノパートを弾いてみることをご検討いただきたい。(先生には反対されるかもしれないが、頑張って説得してみて。)

シューベルト作曲の歌曲集は「冬の旅」の他にも「美しき水車小屋の娘」や「白鳥の歌」などがある。曲集ではない単独の歌曲も魅力的。シューベルトの他に、シューマンの歌曲も良い。モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、リヒャルト・シュトラウス、マーラーなども歌曲を作曲している。ヴォルフもオススメ。以上はドイツ語圏の作曲家だが、フランス語圏やロシア語圏の歌曲も美しい曲がたくさんあると聞いている(いずれわたしも調べたい!)。

 

ピアノ弾きではないそこのアナタは「冬の旅」を弾くのではなく、歌えるように頑張ってみるのはどうだろう? よし、アナタもプロジェクトを実施しよう!「冬の旅」を歌うプロジェクトをスタートさせよう!1年計画でどうぞ!

そもそも曲を知らないという人は、まずは曲を聴いてみよう。そして鼻歌で歌おう。それから、ドイツ語の発音を覚えて少しずつ歌えるようにしよう。


Schubert: 'Winterreise' - Ian Bostridge - Live concert HD

 

歌曲を気軽に歌うために必要なドイツ語は、3ヶ月程度かけて単語の読み方や基礎を学べば十分。(趣味として歌うならそれで十分だけど、プロを目指すならもっと徹底的に言語を学ぶべき。)

(参考記事)クラシック音楽に惚れちゃったらドイツ語を学ぼう! (無料・格安・独学) - 音楽好きのスズキ 第2楽章

 

無料の楽譜はこちら

Winterreise, D.911 (Schubert, Franz) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

 

有料の楽譜はこちら(原曲・高音)

(画像クリック→Amazon)

 

そして、以下はスズキの練習記録動画。

前にも述べたが、わたしは「誰でも練習すればピアノが上手くなる」という考え方に反対している。

「コツコツ努力すれば誰でもピアノが上手くなる」を疑う - 音楽好きのスズキ 第2楽章

どんなに練習したところで、わたしのメチャクチャなリズム感やテンポ感は絶対に改善できない。テクニック不足も決して向上しない。

わたしにとって、ピアノ演奏の目的は「努力して上達すること(頑張ってる自分に酔うこと)」ではなく、ただ、音楽をより深く知るための作業なのだ。 

 

ということなのだが、それでも、歌ってくれる演奏パートナーはいないのにピアノ伴奏だけ弾くのは虚しい。

広い世界のどこかにいる誰かが、この低レベルなYouTube動画と一緒に少しだけでも歌ってくれるといいな。

聴くに耐えない演奏かもしれないが、部分的には歌えると思うのだが・・・ 動画で見ると、わたしがどこでどれぐらい「溜めて」いるか、手の動きから読み取ることができる。心優しい人なら少しだけ合わせようとしてくれるはず。。。

歌手と一緒にこの曲を演奏するというのは、わたしには無理なのだろう。

下手な人間同士でやるとメチャクチャな気持ち悪い演奏になってしまう。お互い、全然おもしろくない。

上手い相手と一緒なら少しは格好付くかもしれないが、上手い歌い手がこんな伴奏で歌いたいと思うはずない。そしてわたしのピアノ演奏が上手くなる可能性もない。素質のない人間は努力しても無駄なのだ。努力次第で上手くなるのは素質のある人間だけ。当たり前のことだ。音楽の神を恨むしかない。アイツは悪いヤツだ。

ああ、それにしても、皆さん!

なんと「冬の旅」の旅男のネガティブ度はスズキよりはるかに上級レベルなのだ! 

作曲したシューベルトも詩を書いたミュラーもまだ30歳ぐらいだったのに、2人とも残された時間は少なかった。絶望的で、死のことばかり考え、話し相手は涙や雪・・・そんな詩だ。2人の間に交流はなかったが、同じ時代に生まれたほぼ同世代だった。ミュラーの詩を発見して共感しまくるシューベルトの様子が目に浮かぶ。

シューベルトはこの詩をもとに張り切って作曲して、自ら演奏して友人一同に聴かせたのだけど、あまりにも暗い雰囲気の音楽だったので、友人一同は絶句していたという。自信作だったのに、反応がイマイチで、ショックを受けたシューベルトさんがかわいそう。

 

ミュラーの詩は既に著作権が切れているが、日本語訳はいずれも著作権があるので、ここには転載できない。自力でドイツ語から日本語に翻訳するのは厳しそうなので、ここには原詩のみを掲載する。ドイツ語のままでは内容が分からなくて困るという方はインターネット検索で和訳や英訳を探すか、テキスト付きのCDや楽譜を購入すると良い。

 

「冬の旅」D911
フランツ・シューベルト 作曲
ヴィルヘルム・ミュラー 作詩

第1部

 

1.おやすみ 


Winterreise op. 89 - 1. Gute Nacht | Franz Schubert | Hohe Stimme / High Voice

♪フレムト ビン イッヒ アインゲツォーゲン・・・

 

この曲だけ動画に詩を表示してみた。「字幕」アイコンをクリックすると表示される。

Fremd は英語の foreign と同じ。余所者としてやって来て、余所者として去っていくという、寂しいフレーズで始まる。そこに、何か思い当たることがある人は、この曲集にはまるのだろう。

 

Gute Nacht

Fremd bin ich eingezogen,
Fremd zieh ich wieder aus.
Der Mai war mir gewogen
Mit manchem Blumenstrauß.
Das Mädchen sprach von Liebe,
Die Mutter gar von Eh’.
Nun ist die Welt so trübe,
Der Weg gehüllt in Schnee.

Ich kann zu meiner Reisen
Nicht wählen mit der Zeit,
Muss selbst den Weg mir weisen
In dieser Dunkelheit.
Es zieht ein Mondenschatten
Als mein Gefährte mit,
Und auf den weißen Matten
Such ich des Wildes Tritt.

Was soll ich länger weilen,
Dass man mich trieb hinaus?
Lass irre Hunde heulen
Vor ihres Herren Haus.
Die Liebe liebt das Wandern,
Gott hat sie so gemacht,
Von einem zu dem andern.
Fein Liebchen, gute Nacht!

Will dich im Traum nicht stören,
Wär schad’ um deine Ruh,
Sollst meinen Tritt nicht hören,
Sacht, sacht die Türe zu.
Ich schreibe im Vorübergehen
Ans Tor dir: gute Nacht,
Damit du mögest sehen,
An dich hab’ ich gedacht.

 

2.風見鶏


Winterreise op. 89 - 2. Die Wetterfahne | Franz Schubert | Hohe Stimme / High Voice

♪デア ヴィント シュピールト ミト デア ヴェッターファーネ・・・

ヨーロッパの家の屋根に付いている鶏型の飾りは、風を受けて回転して風向きを教えてくれる。一人で外をさまよう旅人男は、風見鶏に対してもイラつく。 

Die Wetterfahne

Der Wind spielt mit der Wetterfahne
Auf meines schönen Liebchens Haus:
Da dacht' ich schon in meinem Wahne,
Sie pfiff' den armen Flüchtling aus.

Er hätt es eher bemerken sollen,
Des Hauses aufgestecktes Schild,
So hätt er nimmer suchen wollen
Im Haus ein treues Frauenbild.

Der Wind spielt drinnen mit den Herzen
Wie auf dem Dach, nur nicht so laut.
Was fragen sie nach meinen Schmerzen?
Ihr Kind ist eine reiche Braut.

 

3.凍った涙 


Winterreise op. 89 - 3. Gefrorne Tränen | Franz Schubert | Hohe Stimme / High Voice

♪ゲ フロルネ トロップフェン ファレン・・・

凍った涙の粒が頬に落ちて、やっと自分が泣いていることに気が付いた・・・。そして「おい、涙、オレの涙」(アイ トレーネン、マイネ トレーネン)と涙に語りかける。低い、恐い声で自分の涙に苦言する。

涙よ、もっと熱くなれ。そうでないから凍っちまったんだろ。

ああ、なんだか救いようのない残念な旅男。

 

Gefrorne Tränen

Gefrorne Tropfen fallen
Von meinen Wangen ab:
Ob es mir denn entgangen,
Dass ich geweinet hab’?

Ei Tränen, meine Tränen,
Und seid ihr gar so lau,
Dass ihr erstarrt zu Eise
Wie kühler Morgentau?

Und dringt doch aus der Quelle
Der Brust so glühend heiß,
Als wolltet ihr zerschmelzen
Des ganzen Winters Eis!

 

4.氷結 


Winterreise op. 89 - 4. Erstarrung | Franz Schubert | Hohe Stimme / High Voice

♪イッヒ ズッフ イム シュネー ヴェアゲーベンズ・・・

ピアノ難しかった。こんな曲を滑らかにスピード感をもって弾くことは、素人には不可能だ。仕方ない。内容も引き続き暗い。連続して暗い曲が続くところが、暗い曲好きの人間にとっては嬉しい。 

冬らしいドイツ語の単語、Eis(アイス=氷)とSchnee(シュネー=雪)はもう覚えたかい?

男は、熱い涙で雪や氷が解けて土が見えるようになるまで地面に口づけすると言っている。

やめろ!やめるんだ!アナタ自身が凍って凍死してしまうわよ!

 

Erstarrung

Ich such im Schnee vergebens
Nach ihrer Tritte Spur,
Wo sie an meinem Arme
Durchstrich die grüne Flur.

Ich will den Boden küssen,
Durchdringen Eis und Schnee
Mit meinen heißen Tränen,
Bis ich die Erde seh.

Wo find ich eine Blüte,
Wo find ich grünes Gras?
Die Blumen sind erstorben
Der Rasen sieht so blaß.

Soll denn kein Angedenken
Ich nehmen mit von hier?
Wenn meine Schmerzen schweigen,
Wer sagt mir dann von ihr?

Mein Herz ist wie erfroren,
Kalt starrt ihr Bild darin:
Schmilzt je das Herz mir wieder
Fließt auch das Bild dahin.

 

5.菩提樹 


Winterreise op. 89 - 5. Der Lindenbaum | Franz Schubert | Hohe Stimme / High Voice

♪ブルネン フォア デム トーレー・・・

歌曲という世界を知らない人でも、この曲だけは知っているかもしれない。いや、知らないのかもしれない。。

これもピアノは難しかった。まともに弾けていない。どうしても三連符の感覚がわたしには分からない。子供時代も今もそうだ。永遠に分からないということだ。

 

Der Lindenbaum

Brunnen vor dem Tore,
Da steht ein Lindenbaum,
Ich träumt' in seinem Schatten
So manchen süßen Traum.

Ich schnitt in seine Rinde
So manches liebe Wort;
Es zog in Freud und Leide
Zu ihm mich immer fort.

Ich musst’ auch heute wandern
Vorbei in tiefer Nacht,
Da hab ich noch im Dunkel
Die Augen zugemacht.

Und seine Zweige rauschten,
Als riefen sie mir zu:
Komm her zu mir, Geselle,
Hier findst du deine Ruh.

Die kalten Winde bliesen
Mir grad ins Angesicht,
Der Hut flog mir vom Kopfe,
Ich wendete mich nicht.

Nun bin ich manche Stunde
Entfernt von jenem Ort,
Und immer hör ich’s rauschen:
Du fändest Ruhe dort!

 

6.溢れる涙 


Winterreise op. 89 - 6. Wasserflut | Franz Schubert | Hohe Stimme / High Voice

♪マンヒェ トレーン アオス マイネン アオゲン・・・

Wasserは 水 waterで、flut は洪水 flood だから、洪水のように涙を流して泣いてしまったのね。かわいそうに。

 

Wasserflut

Manche Trän aus meinen Augen
Ist gefallen in den Schnee;
Seine kalten Flocken saugen
Durstig ein das heiße Weh.

Wenn die Gräser sprossen wollen
Weht daher ein lauer Wind,
Und das Eis zerspringt in Schollen
Und der weiche Schnee zerrinnt.

Schnee, du weißt von meinem Sehnen:
Sag, wohin doch geht dein Lauf?
Folge nach nur meinen Tränen,
Nimmt dich bald das Bächlein auf.

Wirst mit ihm die Stadt durchziehen,
Muntre Straßen ein und aus -
Fühlst du meine Tränen glühen,
Da ist meiner Liebsten Haus.

 

次の6曲が弾けるようになったときに続きを語る。目標は秋。

関連本やドイツ語についても語りたいのだが、なかなかそこまで時間を捻出できない。

もっと自由になりたい。もっと一人になりたい。

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