我が偏愛の・・・3

シリーズ第3回

今回は詳細ページは無し。この3人を組み合わせた意味は特に無いけど、ついでにお目当ての人以外のところも読んでもらえると良いなと思う。

 

ピアニスト ピョートル・アンデルシェフスキ(1969- ポーランド)

Piotr Anderszewski

"Humans of New York" というサイトをご存知だろうか?

ニューヨーク市の街中で偶然出会った人に何かを語ってもらい、それを写真付きで紹介しているウェブサイト。様々な人生を少しずつ覗くことができる。よろこび、悲しみ、日常、夢、希望、絶望・・・

http://www.humansofnewyork.com

数年前、翻訳の仕事待ちのときに暇つぶしに読んでいたのだが、あるとき、なんと、知っている人が登場した。ええ!!アンデルさん!?!?

www.facebook.com

普通に通りすがりの人としてインタビューに応じたらしい。休暇を取ることの大切さを訴えている。もちろんわたしも同意する。わたしは詳しくは知らないのだが、彼はこれまでに何度か長期休暇を取っている。「年間200回も演奏するような演奏マシーンにはなりたくない」とのこと。

鑑賞者側としても、アーティストの皆さんには、そんな超多忙の中で演奏し続けてもらうよりは、たっぷり1人の時間を確保しながら活動をしていただきたいと思う。心身を整えるだけでなく、自由に想像を広げたり、新たなアイデアに取り組んだり、ひたすら熟考したり・・・ (そうでないと、わたしの感性や知性を刺激してくれるアーティストにはなれないから。)

クラシック音楽界では直感的に演奏する天才たちも人気なのだが、わたしは直感的というよりは、深く考えたり、可能な限り情報を集めて分析したり、時間をかけて想像したり、想像したことを表現してみようと努力した人々の演奏が好きなのだ。アンデルシェフスキはそういう演奏家の1人であると思う。

音楽家に超多忙な生活を求めているのは、鑑賞者より音楽業界の人々なのだろう。売れる演奏家には世界各地で休み無くバンバン演奏し続けてもらう・・・(やめてくれ。自由な時間がないとアーティストがアーティストではなくなってしまう・・・)

アンデルシェフスキがどういう人間なのか、わたしはまだよく分かっていない部分もある。不思議な人だと思う。インタビュー記事から感じるのは、彼は言葉で説明しにくい深くて複雑なことを延々と考え続けている人であり、それを何とか説明しようとしているような・・・ おそろしく知的好奇心の強い少年のような感じ?

KAJIMOTO | ニュース | ●インタビュー―― アンデルシェフスキと、東京の初夏の午後Vol.2 「バッハを語る(2)」

2015年2月の東京でのリサイタルのプログラムはこうだった。

J. S. バッハ
フランス風序曲ロ短調 BWV8311
イギリス組曲第3番ト短調 BWV808

シューマン
精霊の主題による変奏曲
幻想曲 ハ長調 Op. 17

なんとなく、ヒンヤリ澄んだ音でバッハを弾くのかと思ったら、この時はジャズかロックのような演奏で驚いてしまった。まったく派手ではないし、自由すぎるわけでもないのだが、リズム?ノリ? 周りの雰囲気に流されてではなく、自分の世界に浸っている感じ。

シューマンの晩年、精神病棟に入院する直前の作品である「精霊の主題による変奏曲」を先に弾いてから、若かったときの作品「幻想曲」を弾くという、人生の流れを逆行するプログラムは、わたしはけっこう好きなのだ。

もともとは「精霊の主題による変奏曲」ではなく、ヤナーチェクの作品を弾く予定だったのだが、そちらも本当は聴きたかった。(アンデルさんは発表したプログラムを後日変更することが多い。)


Piotr Anderszewski: J. S. Bach - Partita No. 2 in C minor, BWV 826

 

ヤナーチェク「草かげの小径にて」より


Piotr Anderszewski: "On An Overgrown Path" by Leos Janáček

ところで、「アンデルシェフスキ」なのか「アンデルジェフスキ」なのか、どちらが正しいのだろう?綴りはAnderszewskiなので問題の部分はszとなる。わたしはポーランド語には詳しくないが、「シェ」が正しいと思う。根拠はこちら↓

ポーランドの作曲家シマノフスキ Szymanowski

sz→濁らない

ポーランド系アメリカ人の作曲家ジェフスキRzewski

濁る場合は rz ?

アンデルシェフスキはポーランド人とハンガリー人の両親のもとポーランドのワルシャワに生まれた。子どものときからポーランド語とハンガリー語のバイリンガルで、その後アメリカやフランスに留学したので、英語やフランス語も得意。わたしが唯一持っているDVDでもフランス語で語っている。(ベートーヴェンのディアベリ変奏曲を弾きながら、歌っている。) 

(画像をクリック→Amazonへ) 

他にもドキュメンタリーDVDがあったり、近年は自身が監督として作った映像作品もあるとか。

どこかで読んだ情報によると、自由が制限されていた社会主義時代のポーランドから喜び勇んで自由の国アメリカに留学したのに、どうやら合わなかったらしい。。。

数年前の記事ではポルトガルのリスボンを気に入って、そこに移住したと言っていた。今でもリスボンにお住まいなのだろうか。旅行者からの評判はよく聞くが、住みやすい町なのだろうか。(ああ、わたしも移住したい・・・)

また、コンクールでの演奏が素晴らしくて審査員や客からは好評だったのに、本人的には納得いく演奏ではなかったため途中棄権したというのもアンデルシェフスキにまつわる有名なエピソードの1つ。

 

来日予定

よく来日している。

2019年6月4日(火)
すみだトリフォニーホール(東京)

ベートーヴェン 「ディアベリ変奏曲」他

チケット販売画面(チケットぴあ) icon

 

カウンターテノール フィリップ・ジャルスキー(1978- フランス)

Philippe Jaroussky

ジャルスキーはパリ生まれだが祖父はロシア出身。

え?名前を見れば分かるって?

いえいえ、ジャルスキーという苗字はロシアには無いらしい。

フランス入国のとき、名前を聞かれたのに、ジャルスキー祖父はフランス語が分からなかったので「ロシア人です」と答えた。その「ロシア人です」が名前として登録されてしまったという。ウソのような本当?の話がある。(本当に本当なのだろうか?)

ロシア語、はじめました。3ヶ月プロジェクト - 音楽好きのスズキ 第2楽章

 

カウンターテノールは女声の音域を歌う男性歌手のパート。つまり、アルト、メゾソプラノ、ソプラノの音域を歌う。

バロック時代には変声期前に某手術をして少年の高い声を維持した男性歌手(カストラートと言う)が活躍していたが、現代ではそのような非人道的な手術は認められない

だから、カウンターテノールは裏声(ファルセットと言う)で歌う。裏声とは言っても、カウンターテノール歌手の歌いっぷりは力強く、伸びやかで、時にギラギラしていて、とても魅力的なのだ。


Philippe Jaroussky – Ombra mai fu (Cavalli: Opera Arias)

コンサートに行くなら予習を・・・と口を酸っぱくして言いまくるスズキも、ジャルスキーのようなカウンターテノールが中心のコンサートなら予習無くても全然余裕で楽しめる。それは、やはりこの歌声に魅了されてしまうからなのだろうか?!

そろそろウットリしてばかりいないで、きちんと予習してから行きたい。きっともっと楽しめるはず。

演奏の中で見せるコミカルな表情や演技もまた彼の魅力の1つでもある。

こちらの記事でも動画を紹介済み。

クリスティーナ・プルハル率いる古楽アンサンブル「ラルペッジャータ」のYouTube動画が面白い! - 音楽好きのスズキ 第2楽章

彼はきっと、バロックの時代に生きていてもヨーロッパ中で大人気だっただろう。

こんな仮装もまたお似合いで。


Philippe Jaroussky – Francesco Cavalli Opera Arias – "Che città"

そのジャルスキーが、ついに数年ぶりに来日する。

前回の来日2014年4月のサイン会のときに撮った写真をご覧いただきたい。

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ジャルスキーは他のクラシック音楽演奏家のように幼少時代から音楽に取り組んでいたというわけではない。ウィキペディアによると11歳でヴァイオリン、15歳でピアノを学び始めた。ジャルスキー少年はクラシック音楽に深く没頭していたのだが、プロとして楽器演奏をするには少々遅いスタートだった。

彼が、声楽、カウンターテノールという天職とも言える進む道を「発見」したときは、きっと心の底から嬉しかっただろうなと想像する。そしてファンの我々も、彼がその道を見つけ出してくれて本当に良かったと思う。

ジャルスキーは演奏旅行だけでなく、プライベートでも旅行がお好きらしい。いつだったか、インスタグラムに江ノ島にいる写真を載せていて「おお!」と思った。(スズキの故郷に近いので。)

www.instagram.com

インタビュー動画もどうぞ。主催する音楽アカデミーの話など。


Classic Talk: Philippe Jaroussky Part 2

来日情報

2020年3月13日(金)
オペラシティコンサートホール(東京)

 

ソプラノ アンナ・ネトレプコ(1971- ロシア)

Anna Netrebko

現在、世界各地のメジャーな歌劇場で活躍しているオペラ界の女王 。スズキブログでは滅多に取り上げない大スター的な演奏家。

「我が偏愛の・・・2」でご紹介したロランド・ヴィラゾンが近年は本格的なオペラよりオリジナル企画コンサート中心に活動しているのと比べると、ネトレプコは今もオペラ界で激走している人。

オペラの大スターなど、さすがに生鑑賞する機会などないだろうと思っていたし、大スターより他の演奏家に注目したいスズキは、それほどネトレプコには興味なかった。

そんな無防備な状態で出会ってしまったのがチャイコフスキーのオペラ「エフゲニー・オネーギン」だった。

(画像クリック→Amazonへ)

 

2015年、ANAで成田からシアトルに向かう飛行機の機内エンターテイメントで鑑賞した。ニューヨークのメトロポリタン劇場での上演だった。

プーシキン原作の「エフゲニー・オネーギン」のヒロイン、タチアナ役だった。タチアナは作品の中で大きく変化していく。

最初は根暗でオロオロしてばかりの読書好き少女。その少女が恋に燃え一気にオネーギン宛の手紙を書き上げる。手紙を受け取ったオネーギンに冷たく突き放されて黙って泣く。数年後に身も心もボロボロになったオネーギンがタチアナを求めてきたときは、大人の魅力を感じさせる気品ある人妻となっていて、心を動かされつつもオネーギンを跳ね除けてオペラは幕を閉じる。

いずれの場面でも、ネトレプコは圧倒的な演技力でわたしを物語に引き込んだ。「大人の魅力を感じさせる気品ある人妻」というのは何となくイメージ的に合うように思うが、オロオロとかメソメソした、まだ自分の魅力を出すことができない、どこか悶々とした少女を、あれほど上手く演じられるとは。その少女が突然何かに目覚めたかのように手紙を書き始める様子なども印象的。

 

「エフゲニー・オネーギン」の手紙の場面


Eugene Onegin: Letter Scene -- Anna Netrebko

旅から戻ってすぐにDVDを購入した。

彼女のような大物が来日すると、チケット代は非常に高くなる。きっとわたしは生演奏で聴くことはないのだと思っていたのだが、2017年にミラノに行ったとき、スカラ座でネトレプコがヒロインを歌う「アンドレア・シェニエ」が上演されていた。最初で最後かもしれないネトレプコ様オペラの鑑賞が実現した。

「アンドレア・シェニエ」で題名役を歌っていたのはネトレプコの夫でもあるテノール歌手のユシフ・エイヴァゾフだった。

ネトレプコは10年前に男の子を出産したのだが、当時のパートナーとはその後に別離し、2015年にエイヴァゾフと結婚。家族仲良しの様子はインスタグラムでも。

www.instagram.com

なんというか・・・

彼女は私服のための専属スタイリストでもいるのだろうか。常に同行してくれるカメラマンでもいるのだろうか。何もかも自分でこなしているとしたら、スゴイとしかいいようがない。オペラの衣装よりカラフルで個性的でインパクトのある格好。しかもそれが似合っている。ホームパーティーなど友達との交流もさかん。別の日には子どもを連れて子ども向けの公演に行ったり、博物館や美術館に通いまくる。お料理もお好きで、わざわざロシア語でレシピを付けて投稿。英語でレシピ書けなくてゴメンねと謝罪までしている!クラシック音楽界一のインスタグラマーだ。

こんなに遊んでいて大丈夫なのだろうか?少々やり過ぎでは?と思うこともあるのだが、ネトレプコ様に限りOKということにしよう!

たまに、あどけない表情で写っている。憎めない人だ。見てるわたしの方がクスっと笑ってしまう。ステキな人だ。

 

少々前の(2005年)伝説的な「椿姫」映像 ネトレプコ様 最強


Anna Netrebko & Rolando Villazón - La Traviata - Verdi, Salzburger Festspiele (Trailer)

 

来日情報

 

我が偏愛の・・・1 - 音楽好きのスズキ 第2楽章

我が偏愛の・・・2 - 音楽好きのスズキ 第2楽章

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