ゾクゾクする崇高な響きがたまらない バッハ「モテット」CD

お気に入りのCDを紹介しようと思っていろいろ調べていたら、日本語解説を付けてCDを輸入販売していた株式会社マーキュリーがどうやら消えてしまったらしい?ということを知った。

ショックだ・・・

同社主催のサロン的なトークコンサートにも行ったことあるのに。。。

 

 (画像クリック→Amazon)

おそらく、Amazonで売られているCDには日本語訳はついていない。

CDを制作しているフランスのアルファ・レーベルは古楽を中心に取り扱っている。わたしが知らないかなり珍しい作品も多い。演奏のクオリティも録音品質も非常に優れていると思う。古楽にもCDレーベルにも詳しくないわたしが何故アルファを知っているのか。それは、大のお気に入りのピアニスト、エリック・ル・サージュがこのレーベルでシューマン全集などを録音しているからだ。(アルファは古楽オンリーではない。)

アルファのCDはジャケットが美しい。美術館の名作を採用。このCDではアルブレヒト・デューラー作の自画像。ミュンヘンのアルテ・ピナコテークに所蔵されているのだが、アホなわたしはミュンヘンに行った当時は何も知らず、この美術館には行かなかった。(でも、徳島の大塚国際美術館でちゃんとレプリカを観たわよ!)

数年前のある年、ラ・フォル・ジュルネでバッハのモテットを聴くことになったので、予習用のCDとして、少々高かったが迷わずこのCDを選んだ。アルファだから良いに決まってるだろうという単純な理由だった。

再生するとイキナリ歌声で始まる。

Singet!ジンゲット!(歌え!)

イキナリびびってしまう。極限まで研ぎ澄まされたクリアで強力な歌声だった。何だ!?この異様なパワーは・・・

CD帯には「各パートひとりずつの極小編成」と書かれている。研ぎ澄まされたクリアさは、その編成によるものなのかもしれない。解説にはソプラノ、アルト、テノール、バス、それぞれ2名ずつ名前があるので八重唱なのだろう。

余計な雑音がまったく聴こえない美しい崇高な響き。

のめり込むように聴き入ってしまったのは言うまでも無い。

歌っているのはポーランドの古楽声楽グループ「カペラ・クラコヴィエンシス」で指揮はイタリア出身でイタリアとオランダで学んだファビオ・ボニッツォーニ。


BACH - Motets by Capella Cracoviensis & Fabio Bonizzoni - Album Trailer

モテットは葬儀など死者を悼むときに歌う歌なのだが、聴いてみると意外なほど明るい。というのも、キリスト教において、死は現世での苦しみが終わり、神の国で永遠の命が始まる喜びのときでもあるのだから。

こちらもカペラ・クラコヴィエンシスが歌うモテット。(指揮者ボニツォーニさんの姿は見えないけど)


J.S. BACH, Komm, Jesu, Komm | Capella Cracoviensis

冒頭で述べたマーキュリーは、アルファのCDに丁寧に訳された日本語解説を付けて販売していた。

ビジネス文書の翻訳者スズキは、実は芸術関連の英文を読むのは苦手だったりする。前提知識が乏しいので途中で躓いてしまう。また、原文がフランス語やドイツ語で、それをベースにした英訳文章の場合は、翻訳ならではの読みにくさもある。

マーキュリーによる日本語解説は違和感のない日本語でありながら、複雑な内容でも可能な限り分かりやすく、読み手に伝わるように書かれていて、わたしのようなアタマが少々弱い人間にとっては有り難かった。

日本語解説の翻訳者は白沢達生さん。ヨーロッパの複数の言語に精通しているだけでなく、西洋美術史を学んだ方であり、知識や興味範囲が広い。

ontomo-mag.com

株式会社マーキュリー主催で白沢達生さんが司会のトークコンサートに行ったことがある。内容については閉鎖した旧ブログで報告したが、わたしが行ったのはリコーダーとチェロのデュオのときと五弦チェロとチェンバロのときの2回だった。いずれも少人数でサロン風の会場だった。

鑑賞のみのコースと選べるお土産CD付きのコースがあって、わたしは毎回お土産CD付きのコースにしていた。マーキュリーさんが珍しいCDをケースにいっぱい積んで用意していた。わたしは門外漢なのでよく分からなかったのだが、とにかく珍しいCDが欲しかった。休憩時間に白沢さんに質問して助言していただいてから選んだ。

白沢さんのトークを面白く感じるのは、情報源が多言語だからというのも理由の1つだろう。わたしが必死に探しても出てこない、出てきてもよく理解できない情報をピックアップして他の情報と交えて話を深めていってくれる。

また、演奏者の方々も研究熱心で物知りだった。

古楽はとにかく情報集めと分析研究と推測と想像と妄想(?)と挑戦と・・・ わたしは素人なので話には加われない。うまい質問もできない。ずっと聞き役でいなければいけないのが少々残念なのだが、将来的にもっと理解を深めていきたい分野ではある。近年、YouTubeでついつい再生してしまうのは古楽合唱ばかりだったりする。

トークコンサートは、知らないことを知りたい好奇心旺盛な人間にとっては良い企画だった。

そんな経験は10年超のクラシック音楽ファン歴の中でも滅多にない貴重なものだった。

今回、この記事を書こうとして、最近はどのようなトークコンサートをやっているのか調べようと思ったのだが、検索してもマーキュリーさんのウェブサイトが見当たらない。詳細はわからないのだが、どうやらもう営業していないのだろう。

あの丁寧な日本語訳解説付きのCDの販売も終了してしまったのだろうか。

解説は大事なのに。

雰囲気を楽しむだけとか、聴き流すだけの音楽なんて、わたしにとってはクラシック音楽じゃない・・・

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