シェーンベルク作曲「グレの歌」で学ぶドイツ語講座

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ドイツ語学習者の皆さんへ!

もし、ここに挙げられたドイツ語の単語やフレーズにビビビと来たら、アナタはシェーンベルクが作曲した「グレの歌」に向いているかもしれませんよ。こわくないから、こっちの世界においで!!

 

受講者の皆さんへ!

この講座を担当するスズキ先生です。

こわくないです。よろしくね。

この講座は真面目にコツコツ学習する講座ではありません。ワーグナーオペラ作品に出てくるドイツ語の単語やフレーズをスズキが適当に選んで適当にコメントするだけです。(え?そんなの「講座」ではない?)

今回は番外編としてワーグナー的な雰囲気も感じるシェーンベルク作曲「グレの歌」を取り上げます。

 

カタカナの発音は参考程度にして、正確な発音は他のサイトで確認しましょう。

Google翻訳にも音声ボタンがあります。スピーカーのマークをクリック。

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スズキブログ カテゴリー 音楽作品で学ぶドイツ語講座

 

「グレの歌」は管弦楽と独唱数名と合唱による大規模な作品です。

初鑑賞に向けて予習しました。

印象としては、

  • 自然(地形、自然現象、生き物など)に関する単語が多く出てくる
    (オペラとは違い、風景などを歌の中の詩で説明しているため。また原詩を書いたヤコブセンが自然に強い興味を抱いていたため。)

  • キリスト教世界に懐疑的? → ヴァーグナー作品を思わせる
    音楽のみでなく、テキストもどことなくヴァーグナー風?

 

原詩はデンマークの詩人イェンス・ペーター・ヤコブセン(1847~1885)作。そのドイツ語訳がベースになっています。

ヤコブセンはドイツ文学に傾倒したり宗教や哲学の文献を読みあさった末に無神論者になります。大学では植物を研究していました。そのような背景が「グレの歌」(原詩は別の題名だけど・・・)の詩の内容にも反映されているように感じます。

一方、作曲家アルノルト・シェーンベルク(1874~1951)は、ユダヤ人の両親のもとウィーンに生まれましたが、カトリック教徒として育てられます。ベルリンに移り住んでプロテスタントになり、ナチスに対抗してユダヤ教徒になったという、宗教的に非常に複雑な背景があります。アメリカに亡命して、そこで亡くなったのですが、遺骨はウィーンの中央墓地に葬られているとのこと。(ごめんなさい!ウィーン旅のときは知らなかったのでお参りしていません・・・)

 

自然に関するドイツ語を中心に、わたしの好みで適当に単語やフレーズをピックアップします。

 

Meer und Land 

メア ウント ラント

「海と陸」

 

Die fliegenden Wolken 

ディー フリーゲンデン ヴォルケン

「さまよう雲」

ヴァーグナーの「さまよえるオランダ人」の「さまよえる」も同じfliegenという単語です。

 

Wogen

ヴォーゲン「波」

上の Wolken (雲)と韻を踏んでいます。 WolkenもWogenも複数形です。単数はそれぞれWolkeとWogeとなります。

 

場面としては、王と愛人が、それぞれ別々のところで静かに夜が訪れるのを待っているところです。静かだけど、心はそわそわしているのでしょう。早く暗くなって欲しい。2人は、みんなが寝静まった暗い時間にしか会えないのですから。

そして夜になると王は愛人トーヴェが住むグレの森を目指して馬を走らせます。

 

Roß

ロス「馬」

「馬」という意味のドイツ語で通常使われるのは Pferd プフェアトという単語です。では、「ロス」はどういうニュアンスで使われているのでしょうか?

アメリカの質問サイトで同様の質問を見つけました。回答者たちによると「ロス」は詩などで使われる古い表現とのこと。「ロス」は英語の「ホース」と同じ語源という説も投稿されていました。

誰にも気付かれないように素早く愛人の元に到着しなければなりません。王は馬を急かします。「わたしの馬よ!もっと速く走れ!」この激しい歌の中で王が物凄く声を張り上げている部分があります。印象的です。それが次の単語です。

 

widerhallen

ヴィーダーハレン 「鳴り響く」

王は声を張り上げて「ハーレン」の部分を叫ぶように歌います。

王はまだ馬に話しかけています。「葉が落ちる前に、おまえの鳴き声がトーヴェの家の庭に朗らかに鳴り響かなければならないのだ!」と。

ヒヒーン!!ヒヒーーン!!!!ヒヒヒヒヒーーーン!!!!!という感じかしら?

 

Blatt / Blätter

ブラット / ブレッター 

「葉」単数と複数

木の葉っぱだけでなく、紙など薄いヒラヒラしたもの何でもこう表現するのでしょう。この単語を見るとシューマンのピアノ作品が思い浮かびます。"Bunte Blätter" という小品集です。

日本語では「色とりどりの小品」と訳されることが多いのですが、英語では "Colored Leaves" と訳すようです。

日本語訳は、具体的に何がカラフルなのかをハッキリさせない「逃げ」の訳ですね。誤訳を逃れるための曖昧な訳です。

英語訳は、はっきり「紅葉」となっています。

シューマンが「葉」と「葉以外の薄い何か、紙など」のどちらを意味して作品名を付けたのかは分かりませんが、"Bunte Blätter" でGoogle画像検索すると黄と赤と緑のキレイな葉っぱの画像が出てきます。何となくシューマンがイメージしていたのも「紅葉」と理解するのが妥当な気がするのですが・・・ おそらく、前にBunteが付くと、ドイツ語話者はBlätterを葉っぱと連想するのでは?

シューマン作曲ピアノ小品集「紅葉」あるいは「色とりどりの葉っぱ」ではダメなのでしょうか・・・? 

 

王と愛人トーヴェは幸せな夜を共にします。

しかし、2人の会話はスズキにとっては意味不明です(笑)

特に気になって仕方ないのはこちらです。

Purpurregen

プールプールレーゲン「の雨」

パープル色の雨!!何を意味しているのでしょう。しかも、少し前の部分から抜き出してみると、こうなるのです。

glühender Küsse Purpurregen

燃えるような?接吻?紫の雨?

さあ、みなさん、妄想力を発揮する時間ですよ。。

意味不明すぎてポカンとするスズキのことなど気にせず、王とトーヴェは自分たちの世界に浸りきっているようです。でもね、幸せな時間だったはずなのに、なにやら「死」という言葉が沢山でてくるのです。2人が本当に一緒になれるのは、死後の世界だけだから、どうしても「死」が会話に出てきてしまうのでしょう。

意味不明でも良いのです。巷のテレビドラマや流行曲のように、小学六年生の男の子や女の子でも簡単に理解できてしまうようなストーリーには興味ありませんから。。

意味不明な部分があるからクラシック音楽作品はおもしろいのです。数年かけて何か想いを育んでいければ良いのです。作品と長く付き合えるのです。

トーヴェのおかげで身も心も軽くなったと、王はトーヴェに感謝して去っていきました。トーヴェには不思議な魅力があるのでしょう。ヴァーグナー作品に出てくるヒロインたちのように。(その魅力は、わたしにはよくわからないけど・・・)

 

しばらく歌のない音楽が流れます。それから、突然、何か悪いことが起こったことを示す音楽に変化します。

 

Waldtaube

ヴァルトタオベ 「森の鳩」

ヴァルトは森、タオベは鳩。森鳩さんの登場です。たいへんな事件が起きたので森鳩さんはとっても不安になってしまい、仲間たちを呼びます。

「グレの森に住む鳩さんたち!アタシのところに来て!不安で苦しいよー!アタシの話を聞いて!」

かわいそうな森鳩さん・・・

いったい何があったのでしょう?

 

Tot ist Tove!

トート イスト トーヴェ

「トーヴェが死んだ」

なんということでしょう・・・ 王の妃が嫉妬して、夫の愛人トーヴェを暗殺してしまったのです。

ist は英語で言うBe動詞です。ドイツ語では様々な語順で文章を組み立てることが可能ですが、動詞が2番目の位置に来るというルールがあります。この文章では主語の「トーヴェが」より、強調したい「死んだ」(死んでいる状態=英語で言うとdead)が文頭に来ています。「死んだ」の次に来るのは主語の「トーヴェが」ではなく、この文における動詞であるist です。

 

Weit flog ich

ヴァイト フローク イッヒ

「わたしは遠くへ飛んだ」

この文章でも、強調したい「遠くへ」が文頭に来ています。次に来るのは主語の「わたしは」ではなく、「飛んだ」という単語 flog です。

王が一番大切にしていたものが失われてしまった。王の想いは?これから世の中はどうなってしまうの?不安で押しつぶされそうな森鳩さんは、悲しみを探して遠くに遠くに飛びまくりました。ついには死を求めて遠くに飛びます。

音楽は葬送行進曲風です。ズン、ズン、ズン、と棺をゆっくり運んでいくスピードで進みます。

第一部の最後で森鳩さんは王妃の鷹に殺されてしまったのか?切り裂かれた?心をズタズタにされた?比喩的な表現?よく分かりませんが、「鷹」を意味するドイツ語の単語に「あ!」と思いました。

 

Falke

ファルケ 「鷹」(タカ)

オペレッタ「こうもり」で、ドッキリを仕掛けた首謀者の名前がファルケ博士でした。なるほど、本当は鷹というカッコイイ鳥の名前の苗字なのに、仮装パーティー後にコウモリの衣装のまま酔いつぶれて公園に放置されて「コウモリ博士」と近所の子どもたちにバカにされて、自分を置き去りにした友人に仕返しをしようとして・・・

 

第2部です。

トーヴェを失った王は神を強く非難します。トーヴェを死に追いやった妻や、トーヴェを守ってあげられなかった自分ではなく、神を責めます。

そして、第3部です。(はい、第2部は短いのです。) 

 

Erwacht

エアヴァフト 「起きろ」

何があったのか明確には書かれていませんが、どうやら王も死んでしまったようです。自分の元部下だった死者たち起き上がらせて、一緒に暴れまくります。 

 

王のせいで外が大嵐になってしまったのでしょうか?敬虔なキリスト教徒である農夫が家や家族を守るため、教えに従って十字架を用意します。真面目すぎるほど大真面目です。

王は必死になってトーヴェを探しているようです。トーヴェ、トーヴェと愛する女の名前を二度続けて叫びます。

突然ここで道化師が登場。彼の名はKlaus-Narrです。直訳すると「おバカのクラウス」です。Narrは「バカ」という意味です。作品の最初のほうでトーヴェも王との会話で、「王様はおバカさん(Narr)ですわ。ふふふ」などと言っています。

道化のクラウスのスピーチを解説したいところですが、やはりわたしにはよくわからないです。キリスト教世界を皮肉っているのだと思うけど、自信ないのでノーコメントとしておきます。

王は死後の世界ですぐにトーヴェに会えると思っていたのでしょう。ところが探しても探してもトーヴェに会えないのです。天国に行くか、地獄に行くか、最後の審判を行う者に訴えます。

Ich und Tove, wir sind eins

イッヒ ウント トーヴェ ヴィア ズイント アインツ

「わたしとトーヴェは2人で1つなのだ。」

Zur Hölle mich, zum Himmel sie

ツア ヘッレ ミッヒ ツム ヒメル ジー

「わたしを地獄へ、彼女を天国へ」と引き裂くつもりなら、どんな手を使ってでも絶対天国の彼女のもとへ行ってやる、と王は凄んでいます。

 

結局どうなったのでしょう。王はトーヴェと会えたのでしょうか。よく分からないです。でも、荒れ狂っていた世の中には豊かな自然が溢れる平和な時間が戻ってきたようです。

「語り手」が様子を語ります。生き物たちが沢山出てきます。

Johanniswurm

ヨハニスヴルム 「蛍」

語り手は何故か蛍にSanktを付けて「聖なるホタル」と言っています。まるでホタルさんが聖人になったみたいですね!?聖ヨハネ?

Spinne

スピネ 「蜘蛛」

長い脚 (langen Beinen) をもさもさ動かしているらしい。

Frösche

フレシェ 「蛙」

カエルがピョンと跳ねるところで、音楽もカエルのようにピョンと跳ねます。ところで、これは複数形のカエル。単数形を調べてみたらFroschフロッシュでした。ん?どこかで聞いた名前ですよ。あ!「こうもり」に出てくる看守さん(役者など、歌手ではない人が演じることが多い)の名前ではありませんか!

Marienkäferlein

マーリーンケーファーライン 「てんとう虫(ちゃん)」

てんとう虫はMarienkäferで、それに小さいかわいいものを意味するleinを付けています。「小さなてんとう虫」あるいは「てんとう虫ちゃん?」という感じでしょうか。

Schnecke

シュネッケ 「カタツムリ」

bunte Schneckeという形で出てきます。え?カラフルなカタツムリですか?Google画像検索すると、殻や胴体が虹のようにカラフルなカタツムリの写真やイラストが出てきました。。

語り手は自然界のあらゆるものに「起きなさい!」と呼びかけます。死んだ王が死んだ部下たちに「目覚めよ!武器を持ってこい!」と呼びかけたときと同じErwacht エアヴァフト という言葉で呼びかけます。

 

直前まではヴァーグナー風の内容&音楽という感じですが、最後の自然が生き生きと溢れる平和な世界はヴァーグナーオペラの結末としては絶対にありえないですね・・・

ヤナーチェクの「利口な女狐の物語」の最後の場面のような終わり方です。 

まあ!!

自然界の用語、特に生き物の名前を沢山おぼえることができましたね!ラッキーでしたね!

 

大規模で滅多に演奏されないはずの作品「グレの歌」が、今年はなぜか首都圏で3回も演奏されます。1回目は先日、読売日本交響楽団が演奏しました。2回目は東京都交響楽団による東京・春・音楽祭での演奏です。わたしも聴きに行きます。

2019年4月14日(日)15:00

東京文化会館(上野)

チケットぴあで残席を確認 icon

3回目は2019年10月5日~6日に東京交響楽団が川崎ミューザで演奏します。

 

では、宿題です。

(えー!)

ホールでの鑑賞までに、語り手のセリフを、すらすらドイツ語で読めるようになりましょう!

語り手のセリフは「歌」ではなく「語り」です。つまり、歌うことが苦手なあなたでも挑戦できるのです。

語学の学習はインプット(読む、聴く)とアウトプット(書く、話す)のバランスが大事です。

できるだけCD等に合わせて同じリズムとスピードで読めるようにしましょう。細かい発音にも気を配りましょう。

わたしも練習中です。最初の部分は早口で難しいですが、後半は少し得意ですよ。ふふふ。

 

参考映像

最後の合唱(すごい人数だ・・・)


BBC Proms: Arnold Schoenberg: Gurrelieder – excerpt

第一部、王と愛人トーヴェが幸せな夜を過ごした直後のところかな?


Schoenberg: Gurrelieder / Abbado · Berliner Philharmoniker

 

中国での初演が全編公開されています。(中国語字幕付き!)


Arnold Schönberg: Gurre-Lieder, Part I (Chinese Premiere)


Arnold Schönberg: Gurre-Lieder, Part II & Part III (Chinese Premiere)

 

「グレの歌」はオペラではないので通常はホールで演奏されるのですが、アムステルダムでオペラ形式で演奏されたことがあります。

なるほど、まったく音楽的には違和感ないです。オペラです。ヴァーグナー作品を鑑賞しているような感覚になります。。 これ、良さそうですね。内容的にも様々な演出が可能だと思います。


Gurre-Lieder: Trailer - De Nationale Opera | Dutch National Opera

 

4月は忙しくなりそうです。「グレの歌」初生鑑賞の感想は書きません。

ああ、それにしても紫の雨は何を意味しているのだろう・・・

ぷるぷるれーげん・・・謎

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いかがでしたか?

疲れてしまいました?

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