小曽根さんのガーシュインとブラレイさんのラヴェルを同時に聴くという奇想天外なプログラムはやっぱり楽しかった!

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旅人スズキは、この公演のために旅先から東京に戻ってきた。

2019年5月5日
ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2019
東京国際フォーラム ホールA

 

ガーシュイン
 ラプソディ・イン・ブルー
 ピアノ:小曽根 真

ラヴェル
 ピアノ協奏曲ト長調
 ピアノ:フランク・ブラレイ

 

管弦楽:シンフォニア・ヴァルソヴィア
指揮:ミハイル・ゲルツ

 

どこが奇想天外か?

  • わたしの好きなピアニスト2名が同じ公演で演奏!?
    ジャズピアニストの小曽根さんを知ったのは2009年のラ・フォル・ジュルネだった。野外広場で即興演奏しているのを見て激惚れした。
    ブラレイさんはスズキブログ読者はご存知のはず。わたしの音楽人生の最重要人物だ。(詳細:過去記事
    彼ら2人は別に親しい間柄というわけではないと思うので、同じ公演で演奏するという展開は想像したこともない。ファンとしては奇妙な気分だけど、行かないわけにはいかない・・・
  • ピアノ協奏曲を1つの公演で2曲も?!しかもそれぞれ別のピアニスト?!
    1人のピアニストが一気に協奏曲を2曲演奏することは、たまにはあるのだが、2人のピアニストが各自1曲ずつ弾くというのはほとんどない。だって、主役が2人いるコンサートって、なんだか・・・ どちらか一方だけが盛り上がってしまったら、微妙な空気になってしまわないだろうかと、余計な心配をしてしまう。

 

チケット早期完売で落胆していたところ、二次販売の情報を教えていただいたので(ありがとうございました!)、無事チケットを取ることができた。あの巨大過ぎる(つまりあまりクラシック音楽向きではない)ホールの10列目。スクリーン無しでも楽しめる前方の席で、久しぶりにラ・フォル・ジュルネに来た友人とともに楽しんだ。この2曲は友人の好きな曲でもある。本当に、この公演のチケットが取れて良かった。

どちらのピアニストがどちらの曲を弾くのか分からないようなプログラム表示だったが、ピアニスト2人とも知っている人間なら、小曽根さんがガーシュイン、ブラレイさんがラヴェルを弾くのだろうと想像できる。でもね、サプライズで逆だったら面白いのになと思ったけど、やっぱり有り得ないか。そうよね。。ブラレイさんはガーシュインも弾くけど、小曽根さんがラヴェルを弾くはずはない。

改めてプログラムを見て「あれ?」と思った。先にガーシュインなのね。うーん、きっと即興たくさん入れるだろうし、盛り上がり過ぎてしまわないだろうか。

その後で、即興の余地のないラヴェルで大丈夫だろうか。

ガーシュインとラヴェルが出会ったときの話は有名だが、こうして1つの公演でまとめてこの2人の作曲家のピアノとオーケストラの曲を聴いたことはない。1人のピアニストが両曲とも演奏するなら、ある程度は想像できるけど、違うピアニストが演奏するというのは、完全に未知の世界。

今回は、ガーシュインは即興が得意な人が弾いて、ラヴェルは(わたしの知る限り)即興をやらない人が弾く。ラヴェルはそもそも即興の余地はない。

ガーシュインの方が派手に盛り上がってしまうのでは・・・勝手に心配してしまった。

 

ラプソディ・イン・ブルーは思いっ切りイイ感じのクラリネットのソロで始まった。久しぶりだなぁ。このプワーン~~としたジャズ的クラリネットの音色を聴くのは。オーケストラのノリが良い。特に管楽器がノリノリ。

小曽根さん、お久しぶりです。相変わらず爽やかな雰囲気で登場。ラプソディ・イン・ブルーのスタンダードな演奏はわたしもよく知っている。むかし何度も聴いた。小曽根さんの演奏には「知らない部分」が入っている。彼のオリジナルだ。アレンジは細かく複雑で立体的だと思った。即興なのだろうけど、どこまで即興なのだろうか?この構造美を即興でできるなら、相当アタマがいいのだろうなぁと。(だから小曽根さんにわたしは惚れ込んだのだろう。)

ものすごく繊細で複雑な音色とリズムの組み合わせを聴くと、小曽根さんはラヴェルやドビュッシーも巧く弾きそうな気がしてくるのだが・・・弾かないよね?

 

おや?ホルン奏者が立ち歩いている・・・

どうしたのかしら?腹痛?大丈夫ですかー?

ホルン奏者はピアノに近づいて小曽根さんと顔を見合わせてニヤリ。

そうか!一緒にセッションするのね!(勘違い失礼)

やわらかいホルンの音はピアノと溶け合う。

「おい!ずるいぞ!オレも仲間に入れてくれ!」と言わんばかりにトランペット奏者も前に出てきた。トランペットは・・・音が大きいね。

指揮者が客席に拍手を促す。会場全体が沸く。

 

ふんわり・・・セッションの終わりはそんな感じだった。ガツガツしていないからカッコいい。

皆さん、見ました?

気遣いの人、小曽根さんは演奏後にさりげなくそっとピアノの蓋を閉めて前方客席(舞台より低い)に舞台奥の管楽器奏者たちが見えるようにしてあげたところを。

 

案の定、ガーシュインは大きく盛り上がってしまったではないか!このままラヴェルで大丈夫だろうか!?何度も言うけど、ラヴェルは即興は組み込めないのに!

盛り上がるかどうかはともかく、わたしはとても楽しみにしていた。ブラレイさんを知ったのは2011年だった。それより前に彼は既に日本でラヴェルのピアノ協奏曲ト長調を演奏していたので、この曲を彼の演奏で生演奏で聴く機会はもう無いのかもしれないと思っていたのだった。

今回なぜブラレイさんが来日することになったのかは分からない。多忙なはずなのに。また、せっかく来日したのに出演公演はこの公演と前日の複数人でピアノを弾く公演の2つだけ。

おっと、ピアノ交換するのね。よく見えなかったけど、小曽根さんが弾いたのはヤマハだったのかな?ブラレイさんが弾いたのはスタインウェイ?

何はともあれ、ブラレイさんのラヴェル協奏曲を聴けるなんて、嬉しいではないか!そして、期待に見事に応じる演奏だった!

大盛り上がりのガーシュインの後で大丈夫だろうかなどという心配はすぐに吹き飛んだ。こうして連続して聴くとハッキリ分かる。ラヴェルの曲は極めて「即興的」な音楽だ。まるで即興のような遊び心が満載で、まるで即興しているように聴こえてしまう。でも、あれはすべてきちんと楽譜に書かれている音楽を再現した演奏なのだ。

ラヴェルの音楽をどう弾くべきかということは、作曲家自身が丁寧に楽譜に書き込んでいると、あるピアニストがマスタークラスで言っていたのを思い出す。

普段は、ジャズをメインに聴いている人で、この日、初めてラヴェルの協奏曲を聴いたという人が客席にいたのだろうか?そういう人に聴いてみたい。即興も入っていると思いましたか?(即興は入っていないのですよ~)

即興的なのはピアノだけでなく管楽器も。さっきガーシュインで聴いたのと似た雰囲気の音楽がラヴェルの曲にも出てくる。いかにフランス人ラヴェルが訪問先のアメリカでジャズに影響を受けたかということが分かる。

ポーランドのオーケストラ、LFJ常連のシンフォニア・ヴァルソヴィアのノリが良いのが嬉しい。(いつもショパン等を演奏しているイメージなのだけど。)

ブラレイさんのピアノの歯切れの良さが好きでたまらない。刻まれた音がザクザク心地良い。スカっと爽快。ブラレイさんは即興演奏はしないのだろうけど、そういえば「即興しているように、音楽がいま生まれているように」みたいなことを、以前マスタークラスで言っていた。まさにその言葉の通りの新鮮な音楽だった。きっともう飽きるほど弾いている曲なのだろうけど、まったく飽きていないという感覚で弾いている。

スクリーン無しでも楽しめる席だが、ついついスクリーンも見てしまう。左手で弾きながら、空いている右手をピアノの上の縁に乗っける。(ほかのピアニストなら空いている手は膝の上か空中か・・・) 縁に乗せた右手が鍵盤に降りたとき、右手は左手とはまったく違う音色で音を奏でた。それがブラレイさんだ。(縁に乗せている間に手に細工でもしていたのだろうか?そんなはずないけど。。)

高い位置から手を振り落として鳴らす音も効果抜群。割れずにスッキリしたイイ音が鳴る。あれ、素人が真似しようとしても無理なのだ。(←真似してみた人の感想)

わたしの心配など無駄だった。ガーシュインと同じぐらい盛り上がってラヴェルの演奏は終了した。ああ、聴き応えある贅沢な公演だったなぁ。

 

どちらのピアニストもアンコール無し。

サプライズで2人で連弾1曲とか、やっていただけたなら、会場大興奮だっただろう。でも、2人とも知っていると、この2人のコラボは難しいだろうなと思う。強いて言えば、ガーシュイン曲の連弾アレンジ(たとえばタローさんのCD「屋根の上の牛」に入っている曲とか)を演奏しながら、短い小曽根さんソロ即興を差し込むとか・・・ それなら出来なくもないのではと思ったけど、これ以上、求めるのは申し訳ない。

もう、これでいいではないか。十分すばらしい公演だったのだから。

 

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金沢の音楽祭の旅については後日レポートを書きます。音楽は素晴らしかったけど、観光客が多過ぎてストレス&疲労まみれの3日間でした。無理してでもヨーロッパまで行ってしまえば良かったかな。ヨーロッパ、5月なのに雪が降っていたらしいけど。

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