ピアニストのニコラ・アンゲリッシュは、ここ数年ずっと気になるピアニストだった・・・

まだニコラさんの話をしていなかった。

最初にニコラさんを知ったのは7~8年前だったと思う。カピュソン兄弟たちが録音したブラームスのピアノ四重奏曲でピアノを弾いていた。録音の様子がYouTubeにある。そのとき、「ニコラ・アンゲリッシュ」(フランス人?)という名前なのに、やたらと英語が上手いなと思って調べてみたら、あれれ???

Nicholas Angelich 1970年アメリカ生まれ。

そうだったのか。英語は母語だったのか。つまり、彼は本当は「ニコラス・アンゲリッチ」なのだ。では、彼はなぜ「ニコラ・アンゲリッシュ」として知られているのか。それは、ニコラさんは早い時期にフランスに来て、それからずっとフランスをベースに活動しているからなのだろう。ピアノの勉強のためにパリに移り住んだのが13歳のとき。

人の名前をどのように発音するかという問題はなかなか難しい。ヨーロッパの多くの国ではローマ字(いわゆる「アルファベット」)が使われているのだが、読み方は言語ごとにだいぶ違う。確か、フランスではバッハは「バック」だし、モーツァルトは「モザール」と発音する。英語の名前は英語として発音することが多いように思うが、アンゲリッシュの場合は渡仏がかなり早かったので、「ニコラス」と名乗る前に周りが当然のように「ニコラ」とフランス語風の名前で彼を呼んだのかもしれない。

後ほど紹介する動画はアメリカのオーケストラと協演する前に撮影されたインタビューなのだが、「ニコラス・アンゲリッチ」と名乗っている。アメリカでは今でも「ニコラス」さんなのだ。では、イギリスだとどうなのだろう?英語圏だけどフランスの近くだし、もし共演者がフランス人なら、やはりフランス語で会話するだろうし、お客さんも「フランスから来た演奏者たち」と見るだろうし・・・

 

というわけで、ニコラ・アンゲリッシュというピアニストを知って、その演奏を気に入ったのだが、どういうわけか何年も来日がない。でも、わたしがまだ彼を知らないうちに何度か日本で演奏したことがあるらしい。

 

どのように気に入っているかというと、たとえばこちらの動画はアンゲリッシュが弾くバッハの「ゴルトベルク変奏曲」のアリア。わたしのiPodには定番中の定番とも言えるグレン・グールドが弾く同曲も入っているのだが、わたしがこの曲を聴こうと思うときは、ほとんど必ずといっていいほどアンゲリッシュの演奏を選んで聴いている。 

(画像クリック→アマゾン)


Nicholas ANGELICH, Bach: Goldberg Variations (aria)

アンゲリッシュの演奏は安心して聴ける。テクニックも抜群で安定している。重厚な響きと繊細さを楽しめる。そういう演奏が向いている作曲家と言えば、やはりブラームスでしょう!だからか、ブラームスの曲の録音は多い。前述のカピュソン兄(ヴァイオリン)弟(チェロ)たちも、ベートーヴェンやシューベルトはフランク・ブラレイのピアノと録音したがブラームスはアンゲリッシュと録音している。

ブラームスと言えば、アンゲリッシュが録音したピアノ協奏曲のCDにハンガリー舞曲のピアノ連弾が入っている。連弾パートナーはわたしの大の憧れフランク・ブラレイ。ものすごく洗練されたクリーンな連弾演奏だと思う。美しい。(粘っこい重い演奏が好みの人には向かないだろうけど・・・)

(画像クリック→アマゾン)

そんな録音はあるけど、実際にコンサートなどでアンゲリッシュ&ブラレイがハンガリー舞曲を連弾したことなどあるのだろうか。あまりなかったのでは?

下の動画はブラームスではないが、2人がバッハの2台ピアノを演奏したときの動画。たぶんわたしはこの映像を数十回再生済み(笑)。ちなみに2人は同世代。ブラレイさん(長髪の方)が2歳年上。(つまり・・・?)


"Concerto pour 2 piano en do majeur" de J.-S. Bach (extrait) par Nicholas Angelich et Frank Braley

 

下の動画をごらんください。このアメリカのシカゴ交響楽団のYouTubeチャンネルで公開されているインタビュー映像。少年時代のアンゲリッシュの写真がチラリと出ている。え?分からなかった? いやいや、もう1回見てごらんなさい。奥に作曲家のオリヴィエ・メシアン、少年アンゲリッシュの横にメシアン夫人でピアニストのイヴォンヌ・ロリオですよ!貴重なお写真。それからね、次の写真も見てください。0:58ぐらいです。この瞳です。いい目をしてます。この目線、目つきは、今も変わっていない。実はこの瞳がけっこう好き。いつもではないけど、たまにキリっとした目線を送る、そのときの目がイイ。(え?わからん?まあいいや。)


Interview with Pianist Nicholas Angelich

インタビューでも言っているとおり、アンゲリッシュの師はイタリア生まれでフランスを中心に世界各地で大活躍したピアニストのアルド・チッコリーニ。わたしも最晩年のリサイタルを東京で鑑賞した、あのチッコリーニ。

 

わたしの密かな期待。アンゲリッシュはきっと、これから少しずつイイ具合に、ますます渋くなっていくはず。ふふふふ。

動画で見る彼の立ち居振る舞いは、弾いているときの堂々さと比べると、やや恥ずかしそうな、まるで注目されることに慣れていない人のような感じ。でも、丁寧で礼儀正しい雰囲気を感じる。

 

次の動画は今回、この記事を書くための調査で初めて知った。なんとプーランクの2台ピアノのための協奏曲をマルタ・アルゲリッチと一緒に弾いていたとは。しかも指揮者のチョン・ミョンフンと一緒にアンコールで6手連弾を披露している。非常に珍しい映像。

アンゲリッシュがプーランクを弾くというイメージはなかったのだが、良い感じだ!ピアノ界の女王アルゲリッチ様(フランス語風に読むならアルゲリッシュ?笑)も楽しそう。


Live at the Théâtre Antique d'Orange | Chung, Argerich & Angelich (DVD trailer)

 

ニコラ・アンゲリッシュは実力の割りに目立たないピアニストなのかもしれない。ここ数年来日していないので、来日の宣伝情報ばかり飛び交う日本ではどんどん影が薄くなってしまいそう。でも、彼は引き続きフランスを拠点にそれなりに活躍している。ソロはもちろん室内楽でも。ネットで追いかけたこの数年の活動の中でわたしが気に留めたのは、南仏のピアノ音楽祭で弾いたリストの「巡礼の年」の全曲マラソンコンサート。カピュソン兄弟たちのフォーレ室内楽CDボックスでも参加ピアニスト2人のうちの1人がアンゲリッシュだった(もう1人はミシェル・ダルベルト)。それから、ちょっと「へぇ!」と思ったのは、彼はジャズピアニストのバティスト・トロティニオンが作曲した協奏曲やピアノソロ曲も演奏している。トロティニオンというジャズピアニストは以前、王子ホールでアレクサンドル・タローとデュオリサイタルをしていたので知っている。

 

そんなニコラさんの最新CDはプレイエルで弾いたベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番&5番。このCDのソリストとしてフランスで賞を獲ったようで、授賞式の映像がYouTubeにある。ちょっと意外だった。というのも、ニコラさんはいつもキラキラピカピカ現代ピアノを弾いているイメージだったので、年代物のプレイエルでの演奏に取り組んでいるのは知らなかった。良かったら聴いてみてくださいね。19世紀後半のプレイエルだそうだ。


Nicholas Angelich and Laurence Equilbey - Piano Concerto No. 4 - Beethoven

 

それでも、わたしはまだアンゲリッシュという人物をよく知らないのだ。深い内容のインタビューなど読んだことない。どういう考えの持ち主で、何に特別に力を注いでいるかなど、知る機会がない。でも、惹かれるところがあるから、こうして「気になるピアニスト」としてずっと忘れずにいるのだ。音楽家たちに共演者として選ばれるピアニストなのだから、何かわたし好みの要素が彼にはあるに違いない。

 

さて、どうですかね?

そろそろ皆さんもニコラ・アンゲリッシュが気になって仕方なくなってきたでしょ?

 

ふふふ。 

そうなのです。

実は、ニコラさん、もうすぐ東京に来ます!!!

2019年10月18日(金)19時 NHKホール
2019年10月19日(土)15時 NHKホール

バラキレフ作曲(リャプノーフ編)
 東洋風の幻想曲「イスラメイ」
ラフマニノフ作曲
 パガニーニの主題による狂詩曲 作品43*
チャイコフスキー作曲
 交響曲 第4番 ヘ短調 作品36
指揮:トゥガン・ソヒエフ
ピアノ:ニコラ・アンゲリッシュ

>>>このコンサートのチケットを買う(チケットぴあ) icon

NHKホールはオーケストラコンサートに不向きな広すぎるホール。ラフマニノフのパガニーニか・・・うーん。というわけで、自由席1500円でNHKホールで鑑賞するつもりでいたのだが、つい最近になって、実は別途ソロリサイタルがあることを知った。

2019年10月15日(火)19時 紀尾井ホール

ニコラ・アンゲリッシュ ピアノ・リサイタル

J.S.バッハ作曲(ブゾーニ編)
 コラール「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」BWV659

ブラームス作曲
 7つの幻想曲集Op.116

ベートーヴェン作曲
 ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調Op.27-2「月光」

シューマン作曲
 クライスレリアーナOp.16 

>>>このコンサートのチケットを買う(チケットぴあ) icon

7000円は高いなぁ。でも、憂鬱な暗い曲が並ぶプログラムには、個人的にすごく惹かれる。ものすごい誘惑だ。さては、スズキを狙い打ちに・・・(←違う) ああ、どうしよう。行こうかな。うん、行かなきゃね。

 

さらには来年2月はヴァイオリニストの諏訪内晶子さんと東京の他、大阪、愛知、福岡で演奏。ベートーヴェンの250歳を祝う。

>>>コンサートの日程と場所を確認(チケットぴあ) icon

 

この流れで、今年から来年にかけてニコラさんの日本での人気が高まることは間違いないだろう。ふふふふ。

 

↓やっぱり行ったよ・・・! 

www.music-szk.com

 

Copyright © Ongakuzukino Suzuki 2019. All rights reserved.