タイの象たちも聴いているピアノ演奏 ポール・バートン氏の演奏動画YouTubeチャンネルが長期的にわたしのお気に入りである理由


Beethoven “Emperor” on Piano for Old Bull Elephant

わたしは日本の皆さんが制作した動画やチャンネルをほとんど知らないし、日本の演奏家の最近の活動についてもほとんど知らない。だけど、インターネットで演奏を配信することを今後の活動の1つにしようと考えている演奏家はますます増えたのだろうと思う。

そこで、クラシック音楽を愛する鑑賞者で、趣味でピアノを弾いているわたしが、クラシック音楽ピアニスト個人チャンネルで唯一、長く視聴しているチャンネルをご紹介したい。

特別なケースであり、あまり参考にはならないかもしれないが、実際のところ、これぐらい充実した内容のものを提供していただかないと、継続的に視聴しようとは思わない。そんな世界である。

(ストリートピアノを華麗に弾いて通りすがりのお客さんから盛大な拍手をもらうとか、音大生などが超絶技巧を見せつけるとか、美男美女ピアニストが癒し音楽を披露するとか、そういう動画にはまったく興味ない。)

 

ポール・バートンさんはイギリス出身。ピアニスト画家という2つのライフワークに取り組んでいる。同じくアーティストであるタイ人の奥様とタイ在住

動画で弾いているピアノはFEURICH(フォイリッヒ)という、現在はウィーンに本社を置くメーカーのピアノ。わたしにとってはポールさんの動画で初めて知ったメーカー。他で見かけないので、「知る人ぞ知る」ピアノなのだろう。メーカーHPによると1851年にドイツのライプツィヒで創業。東西ドイツ時代は西に拠点を移してピアノを製造。その後中国でも製造開始。2016年にはウィーン産のピアノも誕生。

ポールさんはFEURICHの宣伝隊長?なのでしょうね。

www.feurich.com

ポールさんと言えばエミリーちゃんである。エミリーちゃんは今年5歳になった。いつも特等席でパパの演奏を聴いている。(羨ましすぎる!)


Daddy-Daughter 20 Piano Moments - Baby to 5-Years-Old

最近のエミリーちゃんは静かにお絵描きをしながら聴いているのだけど、たまにパパと連弾したりパパの伴奏で歌ったりする。

クラシック音楽を聴き始めた頃、わたしは大人顔負けの天才少年少女の演奏をスゴイと思って動画などを観まくっていたが、とっくに飽きた。もう興味ない。

かといって、子どもらしいカワイイ演奏なら何でも観たいかというと、そんなことは全然ない。エミリーちゃんの動画に限り、たまには観たいと思う。 アートに囲まれてタイで育つエミリーちゃんの成長が楽しみだ。

他の誰でもない自分自身の人生を歩んでいる人は素敵だ。ポール・バートンさんもそんな人である。

でも、ご本人の人生や、ゾウさんや、エミリーちゃんだけでは、継続的にこのチャンネルを観ようとまでは思わない。

 

わたしがポールさんの演奏動画を観ている本当の理由は他にある。

まず、ポールさんが真剣に真面目に曲の1つずつに取り組んで来たからだ。「何でもすぐ弾けます」ということをアピールするような軽い演奏ではない。YouTubeが誕生する前からずっと、作曲家や作品と丁寧に向き合ってきたからこそ、あのような演奏ができるのだ。

人と差別化するため、個性を出そうと自己主張ばかりする演奏は、わたしの好みではない。本来、クラシック音楽では作曲家が一番大事である。作曲家の存在を無視して、まるで自分が主役のように演奏するピアニストは、世界ではスターになれるかもしれないが、わたしの好みではない。

そんなわたしにとって、ポールさんの演奏は安心して聴ける演奏である。無難な演奏という意味ではない。自分で分析して理解を深めているので「自分らしい」演奏である。それでいて、作曲家・作品に寄り添っているので、自分を主役にはしていない。

 

我々ピアノ弾きが自分で弾きたいと狙っている作品が多いのも人気の1つだろう。動画には定番の名曲もあるが、それだけでは我々ピアノ弾きはつまらない。やや通好みの曲も多く取り上げられている。

もちろん譜面付きの動画も参考になる。

(譜面付き動画はYouTube上に沢山ある。でも、有名ピアニストのCD演奏等を勝手に使用した譜面付き動画などは、検索で出てきたら再生するかもしれないが、そのチャンネルに登録したいとは決して思わない。チャンネルの「ファン」になるのは、ポールさんのようにご本人が演奏している場合のみだ。)

 

ポールさんの最近の演奏はブラームスの晩年の作品


Brahms Intermezzo Op.117 No 2, P. Barton FEURICH piano

 

今回、この動画チャンネルについて記事を書こうと思ったのは、自分でも意外だがこれ↓を観たのがキッカケだった。


NEW COMPOSITION "Hachikō" by Anthony Sylvestre - P. Barton, FEURICH piano

この曲は、フランスの作曲家が作曲した新しい作品「ハチ公」である。猫が邪魔するピアノ演奏はよくあるけど、犬がドカンとピアノの蓋に寝そべって気持ち良さそうに聴く映像は初めてだ。

まあでも、ワンちゃんのことはとりあえず置いておこう。

このように、ポールさんのチャンネルでは過去の作曲家の作品だけでなく、最近の作曲家の新作も紹介している。

他のチャンネルにこのような動画があっても、きっと永遠にわたしはその動画と出会えないだろう。こうして(世界中のピアノ弾きが見ていると思われる)ポールさんのチャンネルでこの曲が演奏されるからこそ、わたしはこの曲を知ることができる。きっとこの動画がきっかけで楽譜を求める人もいるだろう。

 

そういえば、こんなこともあった。

ポールさんのチャンネルには、シューベルトの美しい連弾曲である幻想曲D940のプリモだけ、セコンドだけをそれぞれ録音した動画がある。プリモとセコンド両方が入っているcomplete動画の説明によると、アメリカで音楽の勉強をしている盲目の学生が、この曲を弾きたいのに、別々に録音した音源が無いので困っていたそうだ。この学生は楽譜ではなく耳で音を聴いて曲を覚える。CDだと2人分の演奏が同時に聴こえてしまうので、自分のパートの音を覚えられない。だから、ポールさんはプリモとセコンドを別々に録音した動画を作った。


Schubert Fantasie in F minor Piano Duet "You Play PRIMO"

上の動画はポールさんがセコンドを弾いて、アナタ(わたし?)
がプリモを弾くバージョン。この動画のお陰で、連弾パートナーがいないピアノ弾きもこの曲に挑戦できるようになった。わたしもいつか弾いてみたいと思いながら、まだ出来ていない。

ポールさんの動画をどんどん遡っていくと、一番古い動画は12年前。10年前にアップされた下↓の動画をわたしは再生したらしい。再生したのは10年前ではなく、数年前だろうけど。これがこのチャンネルを知った最初のきっかけだったのだろうか?(わたしはこの曲を聴きたかったのか?そうか?もう覚えていない。)

ポールさんは当時はヤマハのアップライトを弾いていたのね。それからフォイリッヒというピアノと出会い、ご家族も増えて、今に至るというわけだ。


Grieg 'In the Hall of the Mountain King' - piano solo - Paul Barton, piano

 

他にもいくつかご紹介する。


Marcello/Bach “Adagio” Paul Barton, FEURICH 218 piano


Beethoven Sonata 32 - FAIL!


Handel “Passacaglia” Piano Duet - Emilie & Dad

 

というわけで、このようなピアノ演奏動画チャンネルであれば、わたしはきっとチャンネル登録をして、長期的にチャンネルに関心を持ち、ファンになるということ。世界中の人々が観てくれる可能性も高いだろう。

つまり、ただピアノが上手いだけでは、ピアノ演奏動画を音楽活動の中心とするのは無理がある。それが結論。

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