NYのメトロポリタン歌劇場 (MET) の新シーズン全公演キャンセルに思うこと

先日、北ドイツ放送のラジオインタビュー番組について記事を公開した。

www.music-szk.com

そこで、バリトン歌手のマティアス・ゲルネと案内役が、METが年内はオペラを上演しないことについて触れていて、「さらに閉鎖期間が延長されるかもしれない」と言っていた。わたしは特に気にしなかったのだが、まさか本当にそうなったとは。。。 世間では(音楽界では?)すでにそういう憶測が出ていたのだろうか?

今朝、Instagramで2020-2021シーズンの公演が中止になったことを知った。従って劇場の再開は来年、2021-2022シーズンが始まる2021年9月からとなる。

ニューヨークに行く予定はないが、それでもショックだ。トータルで1年半も閉鎖することになる。世の中が暗黒の時代に入ったことを象徴するようなニュースだ。

わたしが溺愛するパフォーミングアート芸術がすべてこの世から消えるということはない。でも激減するのだろう。半減?あるいは7割減?

欧州や日本などで再開されたコンサートも、いつまで継続できるのだろうか。リスクを受け入れて再開すること、苦渋の選択として断念したこと、それぞれ尊重したいのだが、何だかモヤモヤ感が消えない。形式や演出などに変更を加えて何らかの形で上演を目指すことは不可能だったのかな?採算とれないとか経済的な事情もあったのか?

モチベーションを保ち、経済的に持ち堪えたアーティストや団体、劇場だけが生き残る時代。

METは確かコロナ禍で閉鎖した直後に合唱団を一時解雇したはず。シーズンキャンセルということは、1年半も失業予定ということだろうか。オーケストラやスタッフたちも同じ状況なのだろうか。詳細は知らないが、気の毒で仕方ない。オペラ界を支えているのはヨーロッパにも活躍の場があるスター歌手ばかりではない。

芸術家がみんな1~2年サバティカル休暇を取れるほど貯えがあるのではない。個人的にオンラインで演奏を披露したり生徒を募ってレッスンをしたとしても微々たる稼ぎかボランティア活動にしかならないケースが多いのでは?

生活のために、家族のために、音楽に関係のない慣れない仕事に就いて、疲れ果てて、絶望のあまりついに・・・ なんてケースも増えるだろう。

生鑑賞のオペラの感動と比べると、この薄っぺらい板(スマホやPC)で届けられるのはちっぽけなもの。結局のところ芸術家たちも我々ファンも生鑑賞を求めている。ネットの世界に心から満たされることはない。

オペラやクラシック音楽に限らず、ジャンルを問わずあらゆる生音楽と出会える機会が世界各地で激減している。

生音楽好きのわたしのような人間は心底リフレッシュすることが不可能となり、刺激もなく、追い詰められる。地球上の至る所で犯罪が増えたり自殺者が増えるのは当然考え得る未来だろう。わたしだけではない。他の鑑賞者の皆さん、舞台の上のアーティスト、それを支えるスタッフ。

こんなときは遠い海外に旅してスッキリしよう・・・なんていうことも今は非常に難しい。

身近な人々と地元で平凡に暮らすということが、すべての人間にとって幸せな人生というわけではない。短期間なら耐えられるが長期は無理という人もいる。そのような暮らしに少しも魅力を感じないワタシのような人間もいる。

 

昨日は某国内オーケストラから公演中止のメールがあった。その公演のチケットは持っていないのだが、一斉メールで送られたようだ。ギリギリまで海外アーティストの来日の可能性を模索したようだが、結局ダメだったとのこと。

ニュースなどでは外国籍の人々の入国再開について調整中のようだが、対象者は中期・長期の滞在資格を持つ者で、14日間の隔離が必要となっている。クラシック音楽の演奏家は多忙なのでビジネス出張のように非常に短期間のみ滞在する場合が多いと思う。稽古のために比較的長く滞在するオペラ歌手にしても1か月ぐらい?今回の入国再開の対象外である。

思うのだが、短期滞在の海外アーティストの入国が隔離期間なしで認められるようになるのは、ひょっとしたらMETが上演再開するのと同じぐらいの時期、つまり来年の9月ぐらいなのでは?

おそろしい。

ますます人生に絶望してしまう。

でもそれが現実的な予想。

 

ポジティブな話題?と言えるかどうかわからないが、新国立劇場ではブリテン作曲のオペラ「夏の夜の夢」(シェイクスピア原作)の上演準備が進んでいる。全キャスト海外歌手の予定だったのだが、全キャスト日本人に置き換えられた。チケット払戻無しは厳しいなと思うが、でもやむを得ない状況でも公演を実現するための措置としてキャスト変更は仕方ないし、お客さんも納得・・・なのかな?

わたしはチケットは持っていない。新宿初台まで行く気力もない。外国贔屓で「日本なんか・・・」が口癖で申し訳ないが、公演の成功を祈ってます。イギリスの演出家からリモートで指導を受けているというし、もともと出演予定だったキャストと日本で突然抜擢されたキャストとの間で交流もあるようだ。興味深いwithコロナ時代のオペラの在り方の一例。

オペラにおいて、歌手やオーケストラ、ダンサーなど、出演者は全員同じ場所に集まって上演するべきである。でも、演出はリモートでも可能かもしれない。もちろん同じ場所にいることがベストであるのに変わりはないのだが、今の状況では仕方ない。

どのような機材でリモート演出を進めているのかは分からないが、おそらくiPadなどのタブレット端末なのかな?将来的にはフルスクリーン巨大画面で稽古現場を確認できるような環境を整えると良いのでは?リモート演出の状況、結果、分析、工夫点、改善点などを世界のオペラ劇場と共有すると良いのでは?オペラ関係者ではないが、個人的に興味あるので詳細報告レポートを一般公開してくれると良いなぁ。(いろいろまた余計な提案をしてしまった。)

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