鑑賞メモ2020年|ベルリンフィル初登場のフランチェスコ・ピエモンテージ(ピアノ)の生演奏を聴きたい

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良い子の皆さんは、コロナ問題が解決したら、以前のように次々と海外から演奏家が来てくれると思っているのだろう。

それはきっと幻想だ。演奏家の来日頻度は確実に減る。オンラインで出来ることはオンラインでこなし、長距離の移動は必要最低限に抑える。これからは地域の人々のために地域の演奏家が演奏する。それが地球の未来なのだ。(ああ、死んだ方がましだ・・・)

これまでほぼ毎年来日していた演奏家は、コロナ問題解決後は2~3年に1度ぐらいの頻度で来日するだろう。これまで2~3年に1度ぐらい来日していた演奏家は、5~10年に1度ぐらい来日するようになるだろう。あるいはもうほとんど来日しないだろう。

だから「生演奏で聴きたい」という想いは忘れるべきなのだ。生き甲斐ゼロのまま生きていく。それがわたしの人生。(ああ、本当に死んだ方がましだ。)

今さら何を言っても無駄なのだが、来日していたときに聴きに行くべきだった。

まあ、でも、そういう状況は、実はコロナ以前からよくあることだった。「あら!このピアニストいい!」と思った途端に来日しなくなるケースが度々あった。例えばヘルベルト・シュフがそのパターンだった。そして、わたしはわざわざヨーロッパまで聴きに行った。ちゃっかりサインまでもらって達成感に浸りまくっていた。そういうことが、もうほとんど無理なのだと思うと虚しくてね。

ところで、そのヘルベルト・シュフと、この記事で取り上げるフランチェスコ・ピエモンテージには共通点がある。

2人とも「アルフレート・ブレンデルに影響を受けた」と言っている。他にも彼らの世代(=わたしの世代でもある)の何人かのピアニストたちがブレンデルに教えを請い、指導を受け、影響を受けたということをプロフィールに載せたがる。世代はもっと若いけどキット・アームストロングもそうだ。

わたしはブレンデルをそれほどよくは知らないし、どのようなきっかけで彼らがブレンデルと関係を結ぶことができたのかも知らない。どのように指導してくれたのかも知らない。ただ、わたしはフィッシャー=ディースカウとシューベルトの連作歌曲集「冬の旅」を演奏するブレンデルがすごく好きだ。何度も再生した。

 

さて、その「ブレンデルに影響を受けた」というフランチェスコ・ピエモンテージは先月(2020年9月)、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団との演奏デビューを果たした。指揮のラハフ・シャニも同じくベルリンフィル・デビューだった。2人ともおめでとうございます!!(指揮者については別の記事で取り上げる予定)

www.digitalconcerthall.com

ピエモンテージの演奏曲はモーツァルトのピアノ協奏曲第27番。生き生きとした力強いタッチの演奏だったように思う。カチっと硬派でブレることなく前に進んでいく。他のモーツァルト弾きたちとは違う印象で、これはこれでカッコイイと思った。

演奏後はダブルデビューの指揮者と(ソーシャルディスタンスなしの)ハグでした。2人ともベルリン在住だし、おそらく友達なのだろうと思う。揃ってベルリンフィル・デビューとは、実に実におめでたい!

本当は満席のホールで演奏するはずだったのだろう。市内外から友達が沢山応援に駆け付けただろうに。少し前の客数からは若干増えたが、それでも前後左右に空間のある客席。(確か客を増やした分、マスク着用となったはずだが、実際に鑑賞中にマスク着用している客は一部のみ。)

ピエモンテージのアンコールはモーツァルトKV332の第2楽章だった。これはわたしも想い入れの強い曲である。特にこの第2楽章。上手いピアニストが弾くと非常に美しい楽章だ。期待通りの澄んだ響きでピエモンテージは演奏した。

ただし、わたしが知ってるKV332の第2楽章と少し違うのだった。そういえば、わたしのウィーン原典版に別バージョンがあったはず。そうそう「自筆譜によるアダージョの表現」だ。楽譜のそのページを開いてもう1度アンコールを再生してみたのだが、これではなかった。むしろ、第2楽章そのものに近い。

第2楽章にアレンジを加えた演奏というわけだ。それがよく演奏される定番アレンジなのか、ピエモンテージのオリジナルのアレンジなのかは、わたしには分からない。具体的に言えば、部分的に音の数を増やしている。

モーツァルトの曲なら可能だろう。作曲家=演奏者だったモーツァルトの頃は、即興で沢山飾りを付けて弾いたようだし。

この日に演奏した協奏曲の方にもアレンジがあったのかどうかは知らない。原曲を自分で弾いてみれば、アレンジにも気付けるのだろうけど。カデンツァの出所も知らない。カデンツァは、まだまだわたしには分からない分野だ。その作曲家が作ったものか、別の作曲家やピアニストが作ったものか、ピアニスト本人がオリジナルで作ったものか、そこまで把握できない。 

 

フランチェスコ・ピエモンテージは、わたしの中で人気急上昇中のピアニストである。3年ぐらい前だろうか?旧Aブロ時代に愛読していたブログで取り上げられていた動画を観て、良いピアニストだと思った。去年、ウィグモアホールのYouTube動画に登場したときに当ブログでも取り上げた。

今年5月初旬、ナクソスのベルリン支店がベルリン在住の音楽家支援として、無観客のサロンコンサートを開催してYouTubeで公開した。その動画をもう一度探してみたのだが、既に公開期間が終了しているようで見つからなかった。ここで紹介できないのが残念だ。無観客でのミニコンサートとは言え、ヨーロッパでの演奏がほとんど不可能だった時期だったので、わたしは涙目で動画を眺めていたのだった。

第1回の演奏者はフランチェスコ・ピエモンテージとヴァイオリニストのクリスチャン・テツラフだった。北欧かどこかの音楽祭では毎回協演するらしいが、それ以外では同じベルリンに住んでいるのに、ほとんど一緒に演奏することはないと言っていた。特別編成の演奏をみなさんにも聴いていただこうと思ったのに、残念だな。継続して公開して欲しかった。テツラフの力を込めて込めて込めまくった熱演のフランクのヴァイオリン・ソナタに、余裕で対応できるピエモンテージにわたしは感動した。また別の回ではバリトン歌手のローマン・トレーケル(ブラームスのマガローネのCDを思い出す・・・)の伴奏も務めていた。

ソロはもちろん、室内楽や歌曲でイイ感じの演奏ができるピアニストをわたしは高く評価するのだ。そして、ピエモンテージがその枠にピタっとはまるようになったのだ。これからピアニストとしてますます活躍するだろう。成熟していくだろう。人々を魅了するだろう。ああ、生演奏で聴きたい。

来週、ピエモンテージは、ウィグモアホールで演奏すると思われる。ヨーロッパ各地で状況が悪化している。アムステルダムのコンセルトヘボウも再び閉館だし、パリは21時以降外出禁止だし。ウィグモアホールでも渡航制限か自主隔離か何らかの事情で予定通りのコンサートを開催できていない日もあるようだ。演奏者がイギリス国内の若手に変更になっていたりする日もある。来週どのような状況になるのか分からないが、ピエモンテージがウィグモアホールで演奏するなら、わたしはもちろんその動画を観るだろう。

追記:やはり「移動規制」で公演は中止。。

 

最近アップされた動画をいくつかご紹介する。 


Francesco Piemontesi – magical pianist | Swiss Music Prize 2020

イタリア語で喋るピエモンテージが新鮮だ(笑)

スイスのイタリア語圏ご出身のピエモンテージなのだが、今までドイツ語を喋っているところと、英語を喋っているところしか見たことがなかった。母語なのにこの「新鮮感」とは・・・

北ドイツ放送のラジオインタビュー番組で、「母語はイタリア語で、第2言語はフランス語だから、ドイツ語は自分にとっては3番目の言語」と言っていた。羨ましすぎる。ちなみに上の動画は音声はイタリア語で字幕はフランス語とドイツ語である。それがスイスだ。

あのう、すごく気になるのですが、そこはベルリンのご自宅ですか?!

広い壁一面の本棚が輝いている。あまりに素敵なので貸しスタジオだと思いたいのだが、無造作にソファに置かれたオーディオのリモコンが、自宅らしさを醸し出している?別のチャンネルの動画もこの場所で撮影されているので、やはり自宅か?あるいは練習スタジオ?こんな家でロックダウンならわたしは幸せかもしれない。(そのグランドピアノ+上手い奏者も一緒なら?・・・笑)

ちなみに演奏しているのはドビュッシー。

 

去年2019年の音楽祭(スイス)の様子。わたしは石造りの教会で聴くピアノの音色が好きだ!こんな場所でこんな演奏を聴きたい。もう二度と無理なのかもしれないけど。


Francesco Piemontesi | Johann Sebastian Bach: Siciliano in G Minor

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