ピアノを弾く世界のオペラ歌手たち YouTube動画より

クラシック音楽には「弾き語り」という分野がない!!

オペラ歌手たちがピアノを弾きながら歌っている動画を観て、なぜこんなに新鮮に感じるのだろうと思ったのだが、その理由はズバリそもそもクラシック音楽には弾き語りがないからだろう。

いや、あるのかもしれないが、わたしは1曲も知らないのだから、かなりマイナーな分野と言って良いだろう。

クラシック音楽の歌曲は、ピアノの人はピアノを弾き、歌う人は歌うという完全分業なのだ。弾き語りが定番の1つである他の音楽ジャンルとは異なる点だ。

オペラから抜粋で歌う場合も、オーケストラ伴奏でない場合はピアノ伴奏で歌う。つまりピアニストとのデュオとなる。

ということなので、歌手が自らピアノを弾きながら歌うという公演(リサイタル、コンサートなど)はクラシック音楽・オペラのジャンルではほとんどありえないのだ。

歌の練習として自分でピアノを弾きながら歌う歌手はいるのだが、弾きながら歌うことを公開演奏として披露するケースは基本的にないだろう。

それにしても、クラシック音楽のルーツの1つとして中世の吟遊詩人があるが、彼らは楽器を演奏しながら歌っていたはず。「ニュルンベルクのマイスタージンガー」に出てくるベックメッサーもリュートを爪弾きながら弾いていたなぁ。一体いつからクラシック音楽では歌う人と楽器を奏でる人を分けるようになったのだろうか。

新たな疑問は置いといて、ピアノを弾くオペラ歌手たちの動画を紹介したい。

これはなかなかキーワード検索では辿り着けない動画である。わざわざ「オペラ歌手が歌いながらピアノを弾いてます」なんて記載されていないので検索では出てこない。ふつうにオペラ・歌曲関連の情報を調べている中で見つけるしかないのだ。

今回ご紹介する動画の一部はコロナ禍だからこその特別映像とも言える。ステイホームだからこそ、いつもの演奏仲間と一緒の演奏ではなく、一人でピアノを弾きながら歌う動画を提供してくれたのだろう。貴重な映像だ。

ただし、1つだけ言っておきたい。

これらの動画を観て「おお!!」と思うのは、以前から彼ら・彼女らをオペラ歌手として知っているからなのだろう。

「〇〇で〇〇〇を歌っていた、あの歌手がピアノ弾いてる!!」からこそ、興味を持つのである。

自分が知らないオペラ歌手のピアノ演奏なら、たぶん何とも思わない。

 

ソプラノ歌手
エリン・モーリー
Erin Morley


Erin Morley: "Chacun le sait"

演奏曲はドニゼッティのオペラ「連隊の娘」からの1曲。

おっと、最後まで聴いてあげて!

1人でこんなに盛り上げてしまうとは!!

わたしは基本的に暗い人間だが、こんな風に突き抜けて明るい人が案外好きである。

ニューヨークのメトロポリタン歌劇場(MET)を始め、欧米で活躍するエリン・モーリー。記憶に新しいのは、去年のMETのプーランク「カルメル会修道女の対話」のコンスタンス役。

その他、彼女の名演の1つとしてオッフェンバック「ホフマン物語」のオランピア役を忘れてはならない。載せておくのでよろしければご覧ください。(上の動画と同じテンションだ!笑)


Les Contes d'Hoffmann: "Les oiseaux dans la charmille" (Erin Morley)

 

テノール歌手
ユリアン・プレガルディエン
Julian Prégardien


Julian Prégardien - Schubert Songs

演奏曲はシューベルトの歌曲を数曲。同じ企画の別の動画ではベッリーニの歌曲も演奏している。

ユリアン・プレガルディエンが使っている楽譜はかなり古いように見える。もしかしたら同じくテノール歌手の父クリストフ・プレガルディエンから譲り受けた楽譜かしら?

ユリアンさんはオペラより歌曲やカンタータなどの宗教曲を歌っているイメージなのだが、オペラでも活躍している。2~3年前、わたしが北ドイツ放送局(NDR)のラジオインタビューを聴いたときは、もうすぐベルリンでモーツァルト「魔笛」タミーノ役を歌うと言っていた。

ユリアンさんと言えば、わたしの憧れのピアニストの1人エリック・ル・サージュとの素晴らしいデュオリサイタルを去年東京で聴いた。思い返してみても、見事な演奏だった。とっくにドイツ歌曲が好きだったのに、ますます好きになった。もちろん全曲シューマン・プログラム。会場で2人にサインをもらったCDも超お気に入り。


SCHUMANN Dichterliebe // Julian Prégardien, Eric Le Sage, Sandrine Piau [TEASER]

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以上の2名はオペラや歌曲というクラシック音楽の歌を、ピアノを弾きながら歌った。

なるほど・・・大変そうだ。無理があるとは言わないのだが、お客さんの前で長時間続けるのは難しいのだろうと思う。

歌だけに集中していれば良い普段のリサイタルと比べると、2倍以上の神経を使って演奏しているように思う。ピアノを弾く分、歌は軽めに・・・とはいかないらしい。フルパワーで歌っていらっしゃる。

やはりクラシック音楽ではピアノを弾いてくれる仲間が必要なのだとわたしは思った。

 

ソプラノ歌手
ファトマ・サイード
Fatma Said


Fatma Said on NDR Das! Singing and playing Aatini Al Naya Wa Ghanni

オペラ歌手ファトマ・サイードについては最近知った。きっかけはやはり北ドイツ放送(NDR)のラジオインタビュー番組だった。エジプト出身の歌手として初めてイタリアのスカラ座で歌った。彼女については別の記事でもっと詳しく書きたい。ちなみにドイツ語では「サ」ではなく「ザ」と発音していたと思う。

番組でも紹介していたラヴェルなどの歌曲を歌うCDには上の動画と同じアラブ音楽作品も含まれている。この曲は、CDではバンドが演奏してファトマさんは歌を歌っている。

アラブ音楽は前から気になっているジャンル。わたしにとってエキゾチックな音楽と言えばアラブなど中近東の音楽。

 

 

(オマケ:短い動画) 

バリトン歌手
ミヒャエル・ナジ
Michael Nagy


Die Opernchallenge: #5 Beswinge das Klavier

歌ってはいないのだが、これもオペラ歌手がピアノを弾いている動画。バイエルン歌劇場が上演したグルック作「アルチェステ」の宣伝動画として作られたシリーズの1つ。

何を弾いているかはよくわからない。即興演奏かしら?「アルチェステ」からの抜粋? オペラ歌手として活躍していて、趣味は飛行機の操縦で、ピアノもこんなに弾けるとは・・・

2016年に北ドイツのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭で知った歌手。

 

 

他にも、わたしが知っている歌手がピアノを演奏している動画が存在するのだろうか?前述の通り、検索機能で探し出すのは困難なので、もしご存じの場合は教えていただけないだろうか。

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