ドイツ語で情報収集|北ドイツ放送(NDR)クラシック音楽家インタビューより 2

f:id:music-szk:20200920163531j:plain

北ドイツ放送のラジオインタビュー番組はオンラインでも聴けるので、ドイツ語を学習中のクラシック音楽ファンは下の番組ページから聴きたい放送を探してみよう。各回の個別ページには短いサマリーもあるので参考にしよう。

www.ndr.de

以下は気になった内容やドイツ語の個人的なメモである。

わたしは「知ってる単語がたくさん聴こえたわ!」というレベルから永遠に脱却できない。つまり、フレーズやセンテンスとしてドイツ語を捉える能力が低い。また、トークの論点は理解できていないのに、どうでもいい部分だけ分かるということもある。

したがって、以下の内容は主要な内容をまとめたものではなく、自分が理解できた範囲で、自分が書き残したいと思ったことを書いたものである。重要な論点をごっそり省いている場合もある。間違った理解を書いている場合もある。

皆さんは、この記事の内容をあまり信用してはいけません。軽い参考程度に読んでいただければと思う。

 

インタビューに出演した音楽家

 

【1】ファトマ・サイード(ソプラノ歌手)

放送日:2020年10月7日

エジプト出身のオペラ歌手ファトマ・サイード(ドイツ語では「ザ」イードと発音)はドイツ語で教育する学校に通っていたので、子供時代からドイツ語に慣れ親しんでいる。前回の当シリーズ記事で取り上げたメキシコ出身のオペラ歌手ロランド・フィラゾンが、子供時代にメキシコでドイツ語で教育する学校に通っていたのと同じように。

英語力は音楽界では必須だが、英語だけでなく、ドイツ語でも自身の活動や音楽について深く話すコミュニケーション能力があるから、こうしてラジオインタビューに応じて、ドイツ語圏で自分を知ってもらうことができる。ついでに、遠い日本にいるドイツ語学習者スズキにアピールすることもできる。語学力は重要であると改めて思う。

Mailand

「マイラント」はイタリアのミラノのこと。各言語ごとにヨーロッパの地名が少しずつ違うのは学習者にとっては困る。ファトマ・サイードはエジプト人として初めてミラノのスカラ座で歌った。

何か国語話せるのかと言う話題については、ドイツ語(エジプトの学校、ドイツでの音楽の勉強)、アラビア語(母語)、英語、イタリア語(スカラ座時代に住んでいた国)、フランス語(学校で7年間勉強)。

Kunstlied

ドイツ語で歌はLiedなのだが、クラシック音楽の歌曲をポップスなどと区別する場合はKunstlied(芸術の歌)という。

ファトマさんのCDではラヴェルの歌曲「シェヘラザード」2曲目「魔法の笛」のフルートのパートをアラブの笛ネイ(←ドイツ語ではこう発音している)で演奏している。ファトマさんにとってこの曲のフルートの部分はアラブを感じさせるものであるという。また、この曲ではフルートは、歌ってる女主人公の恋人、つまり「人」を表しているので、ネイと歌い手の間の会話のような曲である。また、フルートの代わりにネイで演奏することで、CDのタイトル「エル・ヌア」(アラブ語で「光」)に関連して、この曲でも何か新しい「光」を表現したかったと言っている。「でも、わたしたちの実験的なやり方にラヴェル本人が怒っていませんように・・・」みたいな心配もしている。(いや、きっと大丈夫よ!ラヴェルさんも気に入ってくれたはず!by スズキ)

CDにはスペイン語の歌曲 (Kunstlied) も含まれているのだが、スペイン語のポップス音楽について、ファトマさんには「自分に非常に近い」ものを感じるという。もちろん北アフリカからスペインに渡ったアラブ系の人々の長い歴史があるのだから、音楽にもその影響は見られる。さらに建物や人との関わり方なども含め、ファトマさんにとって南スペインはとても居心地の良い場所だそうだ。

CDのAna Bent El Sultan はエジプトの作曲家が作曲したクラシック音楽の歌曲。エジプト発の "Kunstlied" は少ないものの、「一応ある」ということを、クラシック音楽界に(特にヨーロッパのクラシック音楽界に!)教えたくて収録曲に含めたそうだ。番組内でも流れたが「アナ!アナ!アナ・・・」と始まるかわいらしい曲。

この曲の伴奏はもちろんピアノ。余談だが、ピアニストはマルコム・マルティヌーで、わたしは年始のロンドン旅で初めてこのピアニストを知った。サイモン・キンリーサイド(バリトン歌手)との協演で。その見事な歌曲伴奏にわたしはどっぷり惚れ込んだ。別の機会に語りたい。

過去10年ぐらいの間、エジプトなどアラブ世界ではジャンルを問わず音楽の役割の重要度が大きくなったそうだ。

Oper ist Aida

エジプトの人々にとってオペラと言えば「アイーダ」だそうだ(笑)うん、もちろん!エジプトが舞台の作品だもの。

でも、ファトマさんが初めてオペラハウスに行ったのは「アイーダ」ではなく、バレエ鑑賞だったらしい。近所にバレエ演出家が住んでいて・・・

ファトマさんは音楽の勉強をするために18歳でベルリンに留学するのだが、それは家族にとって難しいことだった。カイロでは大家族と住んでいたファトマさん。カイロでは家族のために何をやらなければいけないか、家のお手伝いなど、日常の細々としたことを常に気にかけなければいけなかった。

女の子が一人で外国に?しかも医学やエンジニアリングではなく、音楽?クラシック音楽を勉強?・・・というのがご両親の感覚。

ファトマさんはドイツで一人で自由に勉強することを幸せに思い一生懸命勉強した。簡単ではなかったがエジプトでは出来ないことをやるために乗り越えてきた。

フィッシャー=ディースカウたちのブラームス歌曲に続くファトマさんの次のリクエスト曲は昔のイタリアンポップのSenza Fine。

ファトマさんは自身の経験についてとても感謝している。地元の両親のもとにいたら経験できなかったことを経験できた。何事もnegative Seitepositive Seiteがあるのだが、自分の経験をアラブ社会に見せたい(特に女性たち、若い女性たちに?勇気づけたい?後に続いて欲しい?応援している・・・みたいなメッセージかな)。

ミラノではまずオペラアカデミーに参加した。ミラノに行ったのは、もっとイタリアのオペラを舞台で経験したいから。それから何が何でもイタリアに住んでみたいというのが夢だった。もともと2年の予定だったが3年になった。ドイツ(ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学)でドイツ歌曲を学ぶ経験とは全く異なることだったが、新しい経験を積みたかった。「魔笛」のパミーナ役でスカラ座デビューしたのだが、とても大変だったそうだ。(と正直に言っている。)彼女はよく「何事もポジティブな面とネガティブな面がある」と言って冷静に振り返っている。

慣れ親しんだドイツを離れてイタリアでも勉強した冒険者ファトマさんの気力と、ハードワーク・・・尊敬します。

次のリクエスト曲はスーパートランプのGoodbye Stranger。クラシック音楽が流れる家庭で育ったわけではないし、普通にブリタニー・スピアーズやマライヤ・キャリーなどアメリカのポップスを聴いて育ったとファトマさんは言う。子供時代に合唱団に入っていて、合唱の先生や音楽の先生に才能を認められてクラシックの道に進んでいった。

ちなみにわたしはスーパートランプという名のアーティスト(グループ?)は知らないのだが、この曲は聴いたことがある。どこで聴いたのだろう?

健康、身体の調子、人生経験、気分などが声に影響するということを語っている。

やはり思い悩むこともあるようだし、ポジティブだけど、ネガティブな面もあるようだし、あれこれ過剰に感じ取ってしまうのをやめたいと思うこともあるみたいで・・・ 

ファトマさんは、一見、エジプトから出てきて大成功した歌姫スターのようだけど、非常に努力家だし繊細なのだなぁと思う。(がんばり過ぎに気を付けてね。by スズキお姉さん)

そして1時間のインタビューの最後に流れたのがこちら↓の記事で取り上げた曲だった。

先日のウィグモアホールでの歌曲リサイタルLive(下の記事にリンクあり)も期間限定公開中。

www.music-szk.com

 

ファトマさんのインタビューでは興味深い話をたくさん聴き取れたので自分のドイツ語力がアップしたように感じたのだが、それはただの思い込みだった・・・ 【2】と【3】はわたしの理解度が低いということを断っておく。 

 

【2】ユリア・フィッシャー(ヴァイオリン奏者)&ダニエル・ミュラー=ショット(チェロ奏者)

放送日:2020年10月30日

75. Jubiläum

75周年 (Jubiläum = anniversary)

ハンブルクのオーケストラの75周年コンサートは、ドイツの2回目のロックダウン直前の観客あり公演の予定だったのだが、陽性者が出たので急遽無観客で演奏する。朝のゲネプロもキャンセルとなったが、それでも演奏はする。(というのがわたしの理解なのだが、それでいいのよね?ちょっと自信ない。感染者判明より前に無観客での演奏が決まっていたが、感染者が出たため演奏するかどうか判断待ちだったようにも聴き取れる・・・)

インタビューはコンサート当日、演奏前に行われた。

2人はNDRエルプフィルハーモニー管弦楽団(旧名:北ドイツ放送交響楽団)と何度も協演してきた。ユリアさんは2002年のエッシェンバッハ指揮が最初で、その後は南アメリカへの演奏ツアーにも同行した。ダニエルさんは団員に学生時代の友人もいるしドヴォルザークのチェロ協奏曲もこのオケと一緒に録音したという。

今回のコンサートで指揮するのはアラン・ギルバートなのだが、ドイツ人が発音すると、わたしの耳にはどうしても「アラン」が「エレン」に聴こえる。(同様にドイツ人に言わせるとハッピーバースデーはヘッピーバースデー、アップ(アプリのこと)はエップに聴こえる。)

ダニエルはアラン・ギルバートとも20代の頃から協演していて、ベルリンフィルでのデビューもアラン・ギルバート指揮だったという。

ブラームスの二重協奏曲(ヴァイオリン&チェロ)は、ブラームスが長年の友人でヴァイオリニストのヨアヒムとけんかをしていて、仲直りを目指して作曲されたというのはよく知られた話だが、さらにダニエルが言うには、ブラームスはチェロはソロ楽器に向いてないと思っていたが、ドヴォルザークのチェロ協奏曲を聴いて考えを変えてチェロ協奏曲を作曲しようとしたとか?バロック以降、ヴァイオリンとチェロの二重協奏曲は存在しないから、とても特別な作品だとヨアヒムも作品を高評価?

ユリアとダニエルは協演する機会も多く、お互い20年ぐらい前から知っているのだが、どうやらインタビューの内容をわたしなりに解釈すると、2人は音楽へのアプローチが違うので、ユリアはダニエルから色々学び、影響を受けているという。異なる方向から同じゴールを目指すという感じらしい。いい関係だ。

インタビュアーのフレデリッケさんは2人が以前一緒に録音したブラームスの二重協奏曲のオーケストラの名前を間違えてアナウンスしてしまった。演奏が流れているうちに間違いを指摘されたらしい。

ダニエルは今年2月には東京で演奏してたと言う。調べてみると確かに2月下旬のサントリーホールでのアンネ・ゾフィー・ムターが主役のオーケストラ公演に名前がある。渡航制限やコンサート自粛の前に開催されたコンサートか。。さらにはトッパンホールで今年11月にダニエル&ユリアでデュオリサイタルが予定されていたのか・・・(もちろん来日できず中止)

コロナ禍については、ダニエルは「クラシック音楽コンサートは感染を劇的に拡大させるイベントではない。この2回目のロックダウンが終わったら、観客ありのコンサートが再開されることを望む」と言っている。(詳細は把握しきれていないのだが、残念なことにヨーロッパ各地で無観客ショーが続いているホールが多いように思う。)

最後のリクエスト曲はユリア&ダニエルが録音したラヴェルのヴァイオリンとチェロのためのソナタ。久し振りに聴いたが民族音楽的(バルトーク風)で好き。グイグイ進んでいい感じの演奏。

Ritual

本番前に行う「儀式」みたいなものを持っているかという質問に対して、ユリアは(昔はあったけど)「今はもう特にない」と言う。演奏前は、ちょっと寝たりするけど、食べない。一方、ダニエルは逆に本番前はガッツリ食べる(笑)しかも腹持ちのいいパスタやバナナを!(パスタはともかく、ダニエルさんがバナナを食べるところはあまり想像できないぞ!)

笑いの絶えない楽しいインタビューだった。(でもわたしが理解できて一緒に笑えるのはごく一部のみ)

今後の録音などの予定として、去年2人はヴィオラ奏者のニルス・メンケマイヤー(わたしの好きなヴィオラ奏者!)とトリオを組んだので、ベートーヴェンやマルティヌーを・・・などとダニエルが言う。(それは楽しみだ!というか生演奏で聴きたい!)

www.music-szk.com

 

 

【3】クリスチャン・テツラフ(ヴァイオリン奏者)

放送日:2020年11月16日

コロナ禍の状況、想い、ベートーヴェンなどについて、どうやらテツラフは哲学的な話をしているように思う。そういう話こそ聴きたいのに、ドイツ語力が低すぎてわたしには理解できない。やれやれ。日本語など何の役にも立たない。

ハンブルク出身のテツラフにとって、北ドイツ放送があるハンブルクは当然、思い出深い場所であり、子供時代に初めて演奏したハンブルクのライスハレLaeiszhalleも好きな場所(音響が良い?)と言う。

11月末までドイツではコンサートホールが観客ありのコンサートが中止されているが、どう思うかと聞かれると、「それでも Orchestra ist Teil der Gesellschaft ドイツではオーケストラは社会の一部であるが、イングランドとアメリカでは違う」とテツラフは言う。アメリカではコロナ以降、お客さんを入れた室内コンサートが(わたしの知る限り)全く行われていないので、それを言っているのだろうと思うが、イングランドもテツラフの考えでは同じ状況ということか?ウィグモアホールでは少ないが観客を入れて演奏しているのに?オーケストラは無観客演奏のみだったかしら?その辺、わたしはあまり把握できていないのだが・・・

2019年録音のベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲の第2楽章がリクエスト曲として流れた。ドイツ交響楽団とロビン・ティチアーティの指揮で。過去に録音していたのに、また録音したのは何故かということについて、テツラフは前の録音からはかなり時間が経っているし、ロビン・ティチアーティとのコンビは理想的だし・・・ 年を重ねるとベートーヴェンのあらゆる曲が再び新しいものに思えてくる・・・みたいなことを言っている。

ティチアーティは最近名前をよく見る指揮者。この前オンライン鑑賞したグラインドボーンの「ルサルカ」でも指揮してた。

テツラフ弦楽四重奏団(妹でチェロ奏者のターニャも一緒)でCD録音したベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番の第2楽章プレストが流れる。「スパニッシュダンス」みたいな・・・と言っていたような?

冒頭で聴いたラルス・フォークト、テツラフ兄妹の三人組によるドヴォルザーク、それからベートーヴェンの協奏曲と四重奏曲、その後にテツラフは思いがけない作曲家の作品をリクエスト。それはヨセフ・スク作曲の「ヴァイオリンとオーケストラのための幻想曲」。テツラフはこの曲は「ヴァイオリニストにとって魅力的な曲」と言っている。

 

 

|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||

 

【おまけ】♪ 関連動画 ♪

 


Fatma Said records Ravel: Shéhérazade, M. 17: II. La flûte enchantée


Sonata for Violin & Cello, M. 73: II. Tres vif


Stage@Seven: Beethoven: Violin Concerto – Christian Tetzlaff / Andrés Orozco-Estrada

Copyright © Ongakuzukino Suzuki 2020. All rights reserved.