鑑賞メモ|デザイナー 石岡瑛子(1938-2012) 企画展 |広告・映画・音楽・・・オランダ国立歌劇場『ニーベルングの指輪』の衣装も

数か月ぶりに文化的なイベントのために外出した。真っ青な空と冷たい空気の中で木場公園を歩く。ようやく東京都現代美術館に到着。

疲れない程度に軽く観る予定だったが、結局のところ徹底的に観てしまったので運動不足の身体は明日きっと筋肉痛に苦しむことになる。

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日本のデザインなど無難で一般受けの良いものばかりだと考えていたのだが、こんなデザインがあったことを知らなかった。瑛子さんが1970年代(わたしが生まれる前だ!)にデザインした渋谷パルコのポスターに圧倒された。ボーダーレスでジェンダーレスな表現。刺激的なものが溢れる現代の目で見ても刺激的だ。売上アップを目指す広告ではなく、見る人の人生や価値観へのメッセージが込められている。

日本での広告作品の後にはジャズ界の天才マイルス・デイヴィスのアルバムジャケットやフランシス・フォード・コッポラ監督の映画、さらにビョークの音楽ビデオやターセム・シン監督の映画など、活躍の場は世界のトップアート界へ。

なのだが・・・アメリカ映画にも流行の音楽にもあまり興味がないわたしにとって、石岡瑛子さんと言えばヴァーグナーの大作『ニーベルングの指輪』の衣装をデザインした人。

それも、このコロナ禍で海外の歌劇場が特別公開してくれたオペラ映像の中の1つで彼女の存在を知ったばかり。

オランダ国立歌劇場が今年5月から6月にかけて1つずつYouTubeで期間限定公開した『ニーベルングの指輪』は全四部(序夜+三夜)で演奏時間は合計15時間ぐらい。内容を簡単に説明することはできないのだが敢えて簡単に説明してしまうなら「ゲルマン神話」+「中世の伝説」+「作曲家ヴァーグナー自身の創造・想像」と言えるだろう。

1997年~1998年当時、既に世界のトップアーティスト達からオファーが殺到していたであろう瑛子さんが、沢山のオファーの中からこのオペラの仕事を選んでくれて良かった。そうでなかったら、きっとわたしは一生彼女のことを知らなかっただろう。

そのような事情なので、今回の企画展鑑賞の個人的なハイライトはもちろん『ニーベルングの指輪』コーナーだ。

入った瞬間に興奮度は最大に(笑)

まず、入口で迎えてくれたのはわたしのお気に入りのデザイン、ミーメの衣装だった。いくつか見当たらないものもあったが、四部作の主要人物の衣装のほとんどが展示されていた。オペラをオンラインで鑑賞した者としては夢のような空間だ。

撮影OKなヨーロッパの一部の美術館とは違い、ここは日本なので当たり前だが撮影は禁止。この素晴らしい空間を1枚も写真を残せないのが残念だ。撮影OKなら大喜びで撮りまくるのに。

コーナーの奥の小部屋でオランダ国立歌劇場での上演を抜粋で鑑賞できるようになっている。衣装スケッチも展示されている。

瑛子さんデザインの指輪関連ポストカードなど販売されていれば、ごっそり買い込んだのだが、そのようなものは残念ながら無かった。

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わたしは「ファッション」には興味がない。

高級ブランドも流行の服も嫌い。毎日ダサイ服を着て生きてきた。

でも、こうしてクラシック音楽からの延長で美術やアートと触れていると、日常的に着る服としての「ファッション」には興味ないのに、もっと広い意味での「デザイン」という世界には実は大いに関心があるということに自分で気づく。

ポスターやCDジャケットのデザインが気になるし、オペラやコンサート、シェイクスピア劇でも、演出だけでなく、衣装や舞台美術が気になる。

こうして年を取ってから自分の興味に気付いても何も面白くない。人がやっていることをみて「すごいすごい」言うだけさ。

でも、アホだと思われるだろうけど、趣味の遊びレベルにしかならないけど、わたしも「わたしのニーベルングの指輪」衣装&舞台デザインでも考えてみたい。誰も喜ばない、誰にも理解されない、自己満足のみの結果となるだろうけど。

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展示を観てもう1つ思ったことがある。

むかしのデザイン作業は長いプロセスだった。デザイン画に赤ペンで修正指示を書き込んだり、薄い紙を載せて修正ラインを引いたり。見る人にインパクトを与えるために徹底して作品を調整して磨き上げて仕上げていった。今日観た作品はどれも研ぎ澄まされた芸術作品だった。

それと比べると、現代は、ささっと素早く大量にアートを制作して次々と公開することばかり求められる世の中。ウケが良いかどうかで出来を判断するだけの世の中になりつつある。

デザインというアート表現が人々に与える影響の可能性の大きさを改めて感じたと同時に、デザインやアートの世界の未来が不安になった。

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2021年2月14日まで開催中

石岡瑛子 | 展覧会 | 東京都現代美術館|MUSEUM OF CONTEMPORARY ART TOKYO

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5月~6月にパソコンでオンライン鑑賞したオランダ国立歌劇場の『ニーベルングの指輪』の思い出を少しだけ紹介する。

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これがミーメだ。瑛子さんは嫌われ者のミーメをハエに例えた。演じるのは人間なのでハエとしては大き過ぎて、あまりハエには見えないのだが、少なくとも昆虫類であることは分かる。節の間から毛が出ている。あの長い中指を重ねてモジモジしていたのを思い出す。

ミーメは悪い奴かもしれないが、どこか憎めないキャラである。お兄ちゃんにボコボコにされてワンワン泣いていたり、ジークフリートに「お腹すいているんじゃないか?スープ温めておいたぞ。」などと、親のようなことを言ったり。

ジークフリートを殺すための毒汁をノリノリで作っていたとき、ミーメはシッポの先をプシュと押して怪しげな液体を出して鍋に混ぜていた。ふふふ。

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ジークフリートは自身で仕留めたと思われる動物のお頭付きの毛皮を背負っていた。衣装は展示されていたが、お頭付きの毛皮は展示されていなかった。お頭付きの毛皮が、まるでぬいぐるみに見えて、怪力で強いジークフリートがちょっぴりかわいく見えてくるのはわたしだけか?

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見ての通り、片目なのでヴォータン。これもわたしのお気に入りデザイン。トネリコの木の服。その他のヴォータンの服もステキ。

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「和」なヴォータン。隣はエルダ。縦半分が黒くて残りが白い(髪も同様)。

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こちらもヴォータン。「ラインの黄金」から。手前はたぶんフリッカ。

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これはジークフリートとグンターがブリュンヒルデのところに来たところ。

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「小鳥」を歌ったボーイソプラノの男の子。未だにその歌声が記憶に残っている。

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