ヴァーグナー作曲 楽劇「トリスタンとイゾルデ」入門 初鑑賞に向けて勉強中の人のアタマの中 理解と疑問を整理

怖くないから、こっちにいらっしゃい!

絶望の国へようこそ!(にっこり!)

ああ!逃げないで~

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( ↑ パワポで作ったスズキオリジナルのタイトル画像デザイン!)

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あらすじ・・・段階的に

対訳リブレット(独・日)を見ながら3回CDを聴いたが、よく分からない。繰り返しても意味がなさそうだ。あきらめて関連本を手に取り、図書館でDVDを借りてきた。

ようやくある程度すんなり頭に入るようになった。

関連本の内容を自分なりの言葉に置き換えてみる。

この作品の特徴:

  • 動的(アクション等)な場面が少ない
  • 心的なものを表現した場面が長く続く

そりゃあ、分かりにくいはずだ。

演奏に4時間近くかかる割には「あらすじ」はそれほど長くない。ただし、「心的」な場面が長くアクションが少ないので、話に付いていけず、退屈してしまうかもしれないリスクがある。

読者の皆さまには、まずは大まかな骨組みを理解していただいて、それから少しずつ肉付けをしていこうと思う。

 

【骨組み】

第1幕

男女が一緒に死ぬために「死の薬」を飲む。

ところがそれは「愛の薬」だった。

第2幕

二人は愛し合った。

でも、それは禁断の愛だった。

そして、秘密がバレてしまった。

第3幕

二人は死んでしまった。

 

え?省略し過ぎ?(笑) 

「愛の薬」(愛の妙薬)に興味を持ってしまった人はさらに詳細に迫ろう!

 

【+詳細】

第1幕

女は王に嫁ぐために船に乗っていた。

でも彼女は王の甥の男を愛していた。 

その男は女の想いを知らぬふりを通した。

絶望した女は男と一緒に死のうと思った。

手渡された「死の薬」を男は受け取って飲んだ。女も飲んだ。

ところが、それは「愛の薬」だった。女の侍女が咄嗟に差し替えたのだった。

第2幕

二人は王が夜狩を楽しんでいる間、愛し合った。

夜が明けて、突然、王が二人の前にやってきた。

男の友人の裏切りによる罠だった。

王は心から信頼していた男に妃を寝取られたことに衝撃を受ける。

男は友人と決闘となり、深手を負って倒れる。

第3幕

男は部下の手で故郷の城に戻ったが、傷は回復せず瀕死状態。

部下は男が愛する女を呼んだ。彼女には不思議な力があるからだ。

ところが男はやってきた女を一目見ただけで死んでしまった。

女は絶望した。男と一緒に死ぬつもりだったのに男に先に死なれてしまった。

それから、王もやって来た。「愛の薬」のことを知り、男を許すために来た。男を女と結婚させようと思っていた。だが、男がすでに死んだことを知り、王は深く悲しんだ。

女は「愛の死」を歌って、男の亡骸の上に倒れて息絶えた。

 

【+さらに詳細+ "これまで" の話】

 "これまで" 

コーンウォールの英雄トリスタンは、貢物の取り立てに来たアイルランドの英雄モロルトを殺害し、貢物の代わりにモロルトの首をアイルランドに送り返した。

モロルトの許嫁だったアイルランドの姫イゾルデは、モロルトの首を受け取った。

トリスタンは決闘の際、モロルトから深い傷を受けていた。治療のためにこっそりアイルランドに渡り、「タントリス」と名乗って、不思議な力を持つアイルランドの姫イゾルデのところに行った。

姫イゾルデは、「タントリス」が未来の夫モロルトを殺したトリスタンであることを見破った。復讐してやろうと剣を抜いたが、弱っているトリスタンに見つめられ、そのまなざしに負けて復讐できなかった。

元気になったトリスタンはコーンウォールに帰っていった。

ところが、彼は戻ってきた。

イゾルデに自分の叔父であるコーンウォールの王マルケの妃になれと言う。つまり両国の和平のための政略結婚だ。

第1幕

イゾルデはコーンウォールに向かう船にいた。案内役のトリスタンは余所余所しい。彼女は密かにトリスタンを愛していた。

コーンウォールの英雄トリスタンがモロルトを倒した後、それまで優勢だったアイルランドの立場はコーンウォールと逆転してしまった。いまやアイルランドの姫である自分が生贄のように差し出される。しかも迎えに来たのは、あのトリスタン。

イゾルデは、王マルケとの結婚後のことが心配だった。王の傍にはトリスタンがいる。傍にいるのに愛されないという状況に耐えられない。

トリスタンの傷を治して、看病して、復讐さえ諦めたのに、こんな屈辱を味わうことになるとは。イゾルデは怒り、苦しんだ。

船がコーンウォールに到着する前にトリスタンと一緒に死のう。そうイゾルデは考えた。トリスタンは相変わらず胸の内を語ることはなかった。最初は動揺していたが、彼は盃を受け取って死の薬を飲んだ。残り半分をイゾルデが飲んだ。

ところがそれはイゾルデの侍女が「愛の薬」と差し替えたものだった。

薬の力で、トリスタンとイゾルデは口に出せなかった愛をもう我慢できない。 感極まって二人が愛を叫ぶうちに、船はコーンウォールに到着。

第2幕

イゾルデはそわそわしていた。

トリスタンの友人が気を使ってくれたのだ。王たちが夜狩をしている間、トリスタンとイゾルデがこっそり会えるように仕組んでくれた。

早く会いたい気持ちでいっぱいのイゾルデに、侍女が「トリスタンの友人に注意せよ」と忠告するが、イゾルデには通じない。 

トリスタンとイゾルデは夢中になって愛の時間を過ごす。「昼」(生)を悪者に見立てて「夜」(死)を尊ぶ。いつまでも夜が続けばいいと願う。 

朝が来て、突然、王たちが現れた。トリスタンに嫉妬する友人の罠だった。

善い人である王は心から深く信頼していた甥トリスタンの裏切りにショックを受けた。

トリスタンと友人は決闘となり、トリスタンは重傷を負う。

第3幕

トリスタンは忠実な部下に背負われて故郷ブルターニュに戻ったが、傷が回復する様子はなく、瀕死の状態だった。

部下は、以前トリスタンの治療をしたイゾルデを呼んでいたのだが、まだイゾルデの船は到着しない。

イゾルデの船がようやく近づいてくると、トリスタンは興奮を隠しきれず、力を振り絞り、立ち上がって、包帯を剥がしてダラダラ血を流しながら喜び、絶叫した。そして、彼女と再会した瞬間に死んでしまった。

トリスタンと一緒に死ぬつもりで来たイゾルデは、先にトリスタンが死んでしまったので絶望した。

もう1隻の船がやってきた。

マルケ王、イゾルデの侍女、トリスタンを騙し討ちした友人が乗っていた。

トリスタンの死を悲しむ忠実な部下は、トリスタンの友人を刺し殺し、さらに王の臣下たちと剣を交え、トリスタンの隣で死んだ。

マルケ王はトリスタンの死を嘆き悲しんで「なぜ」とイゾルデに訴える。王は、イゾルデの侍女から「愛の薬」のことを聞き、裏切りではなく薬のせいだったとしてトリスタンの行為を許そうと思って来たのだった。トリスタンとイゾルデが結婚できるように取り計らおうと思っていたのだった。

イゾルデはもう目の前の人々の話が聞こえないようだった。

一人で「愛の死」を歌って、トリスタンの亡骸の上で息絶えた。

 

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混乱してきたら、もう一度「骨組み」から読み直そう。最初に読んだ時より頭に入りやすいはず。

 

どうかしら?おもしろい?

包帯を剥がして血を流しながら歓喜して死んでいく英雄トリスタン、強烈すぎるでしょ?!?!

この部分の音楽も死の間際とは思えないほど凄まじいパワーを感じる。ただし、とてつもなく明るいのに同時に不気味でもあるのだ。こわい、こわい。ヴァーグナーらしいと言えばヴァーグナーらしい。

 

"これまで" については第1幕の中でも過去の話として出てくるのだけど、何も知らずに鑑賞した場合は、突然過去の話をされても混乱するだけで、話についていけないだろう。(そういうことがオペラではよくある)

 

 

理解と疑問

  • 中世の詩との違い
    中世の詩も様々な「版」がある。それらとヴァーグナーの楽劇との違いを追っていくと切りがないので、あまり熱中し過ぎない方が良いのかも。中世の詩ではモロルトががイゾルデの婚約者ではなく叔父だったり、マルケ王が悪人だったり善人だったり、もう一人のイゾルデ(白い手のイゾルデ)が登場したり・・・

  • 二人の後ろめたさ
    楽劇の幕開け以前に、トリスタンとイゾルデは出会っていた。初めて見つめ合った瞬間、二人はお互いが運命の相手であることを悟ったのだろう。なぜそのときに一緒になろうとしなかったのか。

    そこにあったのは罪悪感、気まずさ、後ろめたさ・・・

    イゾルデ側:恋人の命を奪った憎き男に運命を感じてしまった。その男は我が国の敵の者でもある。

    トリスタン側:この女に運命を感じたのだが、自分は女が結婚するはずだった男を殺害した。恨まれても仕方ない立場。

  • トリスタンはなぜ沈黙?
    第一幕で、トリスタンはまるで過去に何も無かったかのように、ふるまっていた。でも、何かにビビっている様子。その煮え切らない態度に、わたしは鑑賞者として退屈していた。彼のどこがカッコイイ英雄なのだろう。(←おい!)
    CDを3度聴いて、DVDを観たときにようやく、黙り続ける彼の辛さを感じ取った。

  • なぜトリスタンは王マルケとイゾルデを結婚させようとしたのか?
    妃に先に死なれた王は、新たに妃を娶るつもりは無かった。その分、甥トリスタンをかわいがっていた。そんな王を脅してまでアイルランドの姫イゾルデと結婚させたのは、他でもないトリスタンだった。なぜ、自分の運命の女を王の妃として差し出したのか?

    トリスタンにとって、それは、海を隔てた向こうに住むイゾルデと再会するための唯一の手段だったのかもしれない。彼女がマルケ王と結婚すれば、いつも王の傍にいるトリスタンも毎日イゾルデに会える。無事迎え入れて、婚礼が済んでから、こっそりイゾルデと密会するつもりだったのだろうか?

    だとしたら、はっきり意識して、そのように企んでいたのか?無意識にそんな展開を望んでいたのか?それまでイゾルデが耐えてくれると思っていたのか?

  • トリスタンは自殺?
    友人メロートに裏切られ、秘密がバレてしまったトリスタンは、メロートと剣を交える。だが、解説などを読むと、これは決闘というより、トリスタンによる自殺行為として説明されている。つまり、トリスタンは自らメロートの剣に向かって身を投げた。

  • イゾルデは何で死んだ?
    うーん、刺されたわけでもなく、病気でもない人が死を迎えることは、ヴァーグナー作品ではよく起こることなので、あまり疑問に思わないように(笑) つまり、彼女はそういう運命だったのだ。あるいは、トリスタンが死んでしまった今、イゾルデは生きることができないのだ。二人にとって死=永遠の愛=救済なのだから。

    あるいは、本作に限って言えば、イゾルデは「死の薬」を持ってトリスタンに会いに行ったと考えることもできるのでは?上陸直前に飲んだとか、目の前でトリスタンが死んだのを見た瞬間に飲んだとか、最後に「愛の死」を歌った後に飲んだとか・・・

    それなら、イゾルデが既に死んだのかもしれないと、焦りながら追いかけてきた侍女ブランゲーネの様子も説明できる。

  • 侍女ブランゲーネは特別な力を持つ人?普通の人?
    わたしは、最初にリブレットを読んだとき、彼女は特別な人なのだと思い込んでいた。つまり、トリスタンとイゾルデが、はっきりそう認めたわけではないのに、本当はお互い想いを寄せているということに気づいたから、「死の薬」を「愛の薬」と取り換えたのだと。

    理解が深まってくると、どうも違うらしい。解説などでも彼女は普通の感覚を持った人として説明されている。

    ブランゲーネは姫イゾルデが大好きだった。トリスタンの従者クルヴェナールがトリスタンのことが大好きだったのと同じように。

    大好きなイゾルデがトリスタンと死ぬなんて、とんでもない。「愛の薬」ではなく、別の薬でも良かったのかもしれない。「死の薬」以外なら何でも。とにかく二人が死なないようにしたかった。

    イゾルデが「傍にいながら愛されない」ことを恐れていたとき、ブランゲーネは勘違いして、イゾルデが年の離れた王様から愛されないことを心配していると思い込んだ。(王と結婚すれば、トリスタンも常に傍にいるわけで、傍にいるのにトリスタンに愛されない状況を想像して、イゾルデはそんなの耐えられないと嘆いていたのに。)

    だから、侍女ブランゲーネはやはり普通の感覚の人で、ひたすら主人であるイゾルデを大事にしていただけなのだろう。

  • 愛の薬は水でも良かった?
    ヴァーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の信奉者の一人に、ドイツの文豪トーマス・マンがいる。彼は「愛の薬」ではなく、ただの水でも同じ効果をもたらしたのでは、と言っているのだが、どうだろう?

    わたしはこう思う。対面しても想いをストレートに口にすることなく、愛を確かめ合わなかった二人なのだから、胸の奥にあるものをさらけだすためには、何か魔的な力が必要だった。

 

  

「トリスタン和音」と呼ばれる神秘的なコードを体験しよう

とても分かりやすい動画があった。ハイライト部分に注目。


The Tristan Chord

この和音に何か感じるなら、躊躇せずに「トリスタンとイゾルデ」鑑賞を目指そう。

 

【ご参考】

初めてのオペラ生鑑賞 計画&事前準備のガイド - 音楽好きのスズキ 第2楽章

 

【鑑賞の機会】

東京・春・音楽祭

演奏会形式 

東京文化会館 大ホール

2020年4月2日(木)15時

S席は残席あり(2月16日時点)

>>>チケットぴあで残席を確認 icon

 

2020年4月5日(日)15時

チケットぴあでは完売

《トリスタンとイゾルデ》(演奏会形式/字幕・映像付) | 東京・春・音楽祭

 

10月に2回に分けて演奏する公演もある。

東京交響楽団

2020年10月9日ミューザ川崎(第1幕他)

2020年10月11日サントリーホール(第1幕他)

2020年10月15日ミューザ川崎(第2幕、第3幕)

2020年10月17日サントリーホール(第2幕、第3幕)

コンサート情報 | 東京交響楽団 TOKYO SYMPHONY ORCHESTRA

 

 

バス歌手ルネ・パーペが歌うマルケ王に鳥肌・・・

ふーん、すごいね、ぐらいの感じでDVDを鑑賞していたのだが、マルケ王が登場した途端、目も耳も釘付けに。

画像クリック→Amazon

すごいわあ。

苦悩を語るマルケ王。凄味と品格の高さが同時に表現されている。ただの善い人というだけで、それほど興味なかった(←笑)マルケ王という人物にぐいぐい引き込まれた。

歌手の名前を調べたらルネ・パーペ、ドイツのドレスデン出身のバス歌手で、オペラではバリトンからバスの音域を歌っている。

こちらのCDの宣伝動画の一部にほんの少しだけマルケ王も出てくる(3:22~)。

CDのタイトルを御覧いただきたい。

"Gods, Kings and Demons"

バスという最も低い音域を歌う歌手は、オペラでは神、王、悪魔を演じることが多いのだ。薄っぺらい人間には演じることのできない役ばかり。うん、バス歌手はカッコイイ。


René Pape – Gods, Kings and Demons (Album Trailer)

 

ルネ・パーペのインスタグラムを観ていたら、やはりカッコイイ・・・お会いしたいわ。

こちらはパーペ氏と彼の相棒の「パーペダック」くん。バイロイトでマルケ王を歌ったときの写真とのこと。

スズキも「パーペダック」が欲しいな・・・

www.instagram.com

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数週間以内にスズキブログのカテゴリー「 音楽作品で学ぶドイツ語講座」でも本作について取り上げるのでお楽しみに。今回の記事で語り切れなかった部分についても触れる予定。

 

↓ 本作を取り上げた「ドイツ語講座」公開済み!

www.music-szk.com

 

 

 

 カテゴリー「 音楽作品で学ぶドイツ語講座」

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