作曲家ヴィクトル・ウルマンが命を落としたアウシュヴィッツ収容所の解放から75年 ドイツのピアニストの新作CD

北ドイツ放送(NDR)のラジオインタビュー番組については、度々ブログ内でも触れてきた。Podcastをダウンロードしてドイツ語の勉強に利用している。(理解度10%だけど・・・恥)

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1月27日放送分に登場したドイツのピアニストのウルマンCDについてブログで紹介したい。

そう思って5回ぐらい必死にPodcastを聴いてみたのだけど、悲しいことにわたしのドイツ語力では断片的にしか分からない(涙)

1月末に発売のCDだから、他にもどこかでCDを紹介しているに違いない。音声ならお手上げだけど、テキストならGoogle翻訳(独→英)で十分読める。

調べてみたら、そのCDレーベルが英語の案内をサイトに載せているではないか!(ありがとう!)

ベルリン・クラシックス(CDレーベル)

berlin-classics-music.com

 

余談だけど、NDRのインタビュー番組のPodcastは、今年から挿入音楽も聴けるようになった。これまでは基本的にインタビュー部分のみの配信で、挿入音楽は各曲3秒ぐらいしか入っていなかった。

このインタビュー番組の雰囲気が好きだ。

インタビュアーは相手の経歴と最近の活動を十分把握している。

インタビューを受ける側のアーティストも興味深い活動を展開していて、語る内容が充実している。充実の1時間番組。(いや、きっと1時間では話し足りない人も?)

ベテランや巨匠だけでなく、若い世代のアーティストも登場する。

日本ではなかなかこうはいかないだろうなぁ。

ベテランや巨匠はともかく、若手で1時間(音楽部分を除くと約40分か?)場を持たせるだけの活動内容と会話力を持っている人は日本にはあまり・・・(以下自粛) しかもこの番組ではドイツ語が母語ではないアーティストもよく出演していて、さも当然のようにみんなドイツ語で応じている。

 

さて、本題に入ろう。

ドイツ生まれ、ドイツ育ちのピアニスト、アニカ・トロイトラー Annika Treutler は30歳。背伸びするわけでもなく、ガツガツするわけでもなく、このようなテーマを選んで音楽に取り組む姿勢に好印象を持った。


The Viktor Ullmann Project

作曲家ヴィクトル・ウルマン Viktor Ullmann(1898年~1944年)はチェコ生まれ。ウィーンで学び、プラハで活動していた。身の危険を感じてスイスに亡命したが、ビザが更新されず、1942年にテレジン収容所に送られた。

収録曲のピアノ協奏曲は1939年にプラハで作曲された。

わたしの限られた知識に基づく印象なのだが、ウルマンのピアノ作品にはショスタコーヴィチやプロコフィエフ、あるいはプーランクの雰囲気を感じる。ガツンと和音がカッコ良く鳴る。歯切れが良い。スカっと快適な感じ。展開が速く、人を飽きさせない。

ピアノ協奏曲に関して言えば、プーランクの2台ピアノのための協奏曲のような勢い、和音の連打を感じる。プーランクのほどエキゾチックではないが、やはりエキゾチックなものを一部感じるのは、打楽器や管楽器が目立って活躍するからかな? プーランクのような洒脱感もわたしは感じるのだが、わたしだけ?ショスタコーヴィチ的な皮肉っぽさを感じるけど、それもわたしだけ?(つまりは、ウルマンの作品は完全にわたし好みの音楽と一致するということ!!)

一方、レーベルのサイトで、アニカ・トロイトラーはウルマンの作品はユニークで、自身の音楽スタイルを築き上げていると述べている。他の同時代の作曲家のようにウルマンの音楽を魅力ある作品として知ってもらいたいというのがアニカさんの望みなのだ。

あなたはウルマンの音楽作品について、どう思うだろうか?

この曲、滅多に演奏されないよね? 日本ではプログラムに入っているのを見たことがない。ヨーロッパでは多少は演奏されているのかもしれない。どうだろう?

ウルマンの他の作品も滅多に演奏されていないように思う。

 

 

ふふふ。知ってる人は知っているだろうけど、わたしは以前からこの曲だけは知っていた。わたしの「三大ピアニスト」の一人であるヘルベルト・シュフもこの曲を録音しているからだ。

www.music-szk.com

 

アニカさんCDの収録曲の残り2つ、ピアノソナタ第3番第7番については、わたしは初聴きだった。

一番気に入って数回リピートして聴いたのは、第7番の最終楽章「ヘブライ民謡による変奏曲とフーガ」 だった。

この主題(テーマ)、どこかで聴いたような気がすると思って、プロコフィエフの珍しい室内楽曲(やはりヘブライ音楽が主題となっている)をiPodで探して再聴してみたのだが、似ているけど違うのかな?変形版?おおもとは同じ?そのへんはわからないが、このような音楽は、どうしてもわたしの耳に心地よく響くのだ・・・

弾けるなら弾いてみたいが、少々わたしには無理そうだ。

短調の旋律で始まるが、そのまま聴き続けて欲しい。生き生きとした壮大なフーガが展開される。終わり方も非常に潔い。「ジャン!」と、短く颯爽と鳴る。(アニカさん、カッコイイ!)

この活気あふれる作品をウルマンが作曲したとき、彼は既にテレジン収容所にいたのだった。

当時、テレジン収容所では文化活動が許可されていた。

この曲がウルマン最後の作品だった。重く暗い曲ではなく、この生き生きとしたフーガで締め括る曲が。

過酷過ぎる状況でも前向きな姿勢を崩さなかったウルマンの創作意欲と、その後に起こったことを想い、この曲を演奏するたびに身震いがするとアニカ・トロイトラーは言う。

 

このブログの別の記事でシューベルトについて書いたとき、「作曲時の精神状態が作品に反映されているとは限らない」ということにも触れたのだが、ウルマンの場合はどうだろう?

状況がよくなるという確信があったとは思えない。何も根拠はないけど、希望を持っていたのかな?それとも、持っているフリをした? 希望があると信じようと自分をマインドコントロールしようとした?

いや、そんな無理している感は音楽からは聴こえてこない。

彼が遺した最後の作品であるこのピアノソナタには、絶望感的なものは感じない。特にこのフーガの部分にはギラギラしたエネルギーさえ感じる。

 

もう少し聴きこむと、感じ方も変わってくるのかもしれない。

 

 

ウルマン作曲のピアノ協奏曲とピアノソナタ第3番は、若きピアニスト、ジュリエッテ・アラーニ Juliette Arányi のために書かれたのだが、彼女もまたテレジンからアウシュヴィッツに送られて命を落とした芸術家の一人。アニカ・トロイトラーは、彼女にも想いを寄せる。   

 

アニカさんのウルマンCDは、ドイツでは1月末に発売済みで、他国では順次発売らしい。Amazon Japan にはまだ物的なCDは見当たらない。タワレコとHMVでは「お取り寄せ」となっている。

一方、音楽のデジタルダウンロードは既に日本でも可能。

CDはブルーレイ映像付きなのだが、わたしはブルーレイ再生機を持っていないので音楽のみで十分。

わたしは古い時代の人間で、今だにCDを買うことが多いのだが、今回はそういう事情なので Amazonでデジタル版を購入してダウンロードした。

ジャケット画像をクリック → Amazon 

Amazon Unlimited やナクソス・ミュージック・ライブラリーの聴き放題にも含まれているので会員の皆さんはそこで聴ける。

ウルマン:ピアノ協奏曲/ピアノ・ソナタ第3番, 第7番(トロイトラー/ベルリン放送響/フルヒト) - 885470015255 - NML ナクソス・ミュージック・ライブラリー

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(スズキのiPod Classic 80GB 12年経っても現役)
 

 

ドイツでは学校などで当時のことについて調べたり、話し合うのだろう。二度と同じ過ちを繰り返さないように。

ただし、強制収容所について、わたしのような余所の国の人間がドイツの人々に話を聞き出そうとすることはタブーだろう。センシティブな話題であることに気を付けなければならない。

でも、ドイツの人たちだけでなく、現代を生きるあらゆる人々に広くメッセージを届けることは可能であるはずだし、そうあるべきだと思う。

 

 

わたしのとても個人的な考えを述べたい。

  • 大規模な団結は危険
  • 大規模な団結が、数年以上の長い期間にわたり継続する場合は、もっと危険

言うまでもないが、日本だって同様だ。というか、日本が最も注意すべきなのかもしれない。

国家のためにみんなで一致団結することは危険である。

ノーと言いたい人がノーと言えない、統一感の強い社会は危険なのだ。みんな、もっとバラバラに生きていこうよ。

たぶん、わたしのような「変態」の意見には誰も賛成してくれないのだろうけど・・・ 

 

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www.music-szk.com

 

わたしの理想は、人々がゆるい繋がりを持つこと。

他人を尊重しつつ、他人の自由を認め、必要以上に他人の世界に踏み込まないこと。

特定の誰かにどっぷり依存した人生ではなく、困っている人を通りすがりの複数人が自分のできる範囲で少しずつ手を貸すこと。

それがわたしの理想なのだけど、世間の皆さんは大規模な団結や特定の身近な人間に重く依存するのがお好きよね。。。 ああ、わたしは永遠に世の中に溶け込めない。

 

 

わたしは、わたし好みの曲を作っていた作曲家が、非人道的な迫害を受けることなく、最大限クリエイティブに活動を行い、もっと長く生きてどんどん作品を生み出してくれたら、良かったのになと思う。

 

作曲家ヴィクトル・ウルマンがガス室に連行されてから3か月後、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所は解放された。

あれから75年が経った。 

 

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ヴィクトル・ウルマンのように収容所で命を落とした芸術家はたくさんいるのだが、その中で、今回ウルマンについて調べていて、久しぶりに思い出した作曲家がいる。

ギデオン・クライン Gideon Klein 1919年~1945年

ウルマンと同じように、まずテレジン、そしてアウシュヴィッツに行き、命を落とした。

下の動画は彼がテレジンで作曲した歌曲のアレンジ物。

この悲痛な音楽も、ウルマンのギラギラしたピアノソナタ7番のフーガも、テレジンの収容所で生まれて、どちらも同じぐらい強く訴えるものがある。そう感じてくれる人がたくさんいるといいなぁ・・・


Lullaby by Gideon Klein

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